世界一のポテサラ【クレイジーケンバンド小野瀬雅生の想う店・想う味】

【連載】クレイジーケンバンド小野瀬雅生の想う店・想う味
クレイジーケンバンドのギターにして、その食情報の確かさで多くのグルメなファンも持つ、小野瀬雅生さん。彼の愛する店、どうしても食べたくなる料理を教えていただく。

Summary
・なぜか懐かしいと感じる味
・マスタードが絶妙な効き具合
・夜中にふと起きて食べたくなる店

卵嫌いだった50年

懐かしいなと思った味が、実は子供の頃の経験とかではなく、最近の嗜好とイメージをミックスして編み出された擬似的なものだったりします。私は子供の頃、卵が大嫌いでした。特に茹で卵。これはつい最近まで私の好き嫌いのラスボスでした。50歳を過ぎてそのラスボスを倒すとは思いませんでしたが、その話はまたいずれ。とにかく卵が嫌いでしたのでマヨネーズも嫌い。マヨネーズを受け入れられるようになったのは20歳を過ぎてからですから、自分的にマヨネーズが懐かしいわけがない。それでも30年前だから懐かしく思うのか。どうなのか。

最初にマヨネーズを受け入れたのは、スルメに醤油と七味唐辛子とマヨネーズを混ぜたのを付けて食べるってヤツです。私が20歳の頃はまだチェーンの居酒屋とかが数少なく、自宅から近くのスナックやパブ(英国でいうところのパブではない)で友人達と集まって飲んでいましたね。飲むのは大体ウイスキー。ホワイトとか角とかオールドとかで水割り。おつまみもスルメか柿ピーかそんな乾き物中心。今みたいに美味しいつまみと一緒にゆっくりお酒も味わうなんて事はなかったなぁ。そんな中でその醤油と七味とマヨって云うのはお店の心遣いや工夫を感じられる数少ないファクターでした。それは懐かしいとは思うけれどまた別の話か。

懐かしいはずがないのに懐かしい

そしてようやく本題のポテトサラダに到達するのですが、子供の頃にポテトサラダが食卓にあった記憶がまずありません。私も好き嫌いが多かったですが、それに輪を掛けて私の父親の好き嫌いが非常に多い。野菜は一切食べない。親が食べないものを子供はなかなか食べません。まず食卓に野菜が出ないので野菜嫌いを克服する機会もない。小学校の給食は苦行の時間。食べずにただじっと時が過ぎるのを待つだけ。意志が強く信念を曲げない子供でした。今は信念だの何だのぐにゃぐにゃに曲がりまくりです。大人ってそんなものか。

それはともかくポテトサラダ。まずマヨネーズがダメな上に、たまに茹で卵の刻んだのが入っている事がありますでしょポテトサラダ。ダブルパンチです。30代になってあちこちで飲んだり食ったりするようになって初めて、うーんポテトサラダかー食べてみようかなどうしようかなー茹で卵さえ入ってなければまあ食べてみてもいいかなー、ってくらい。ポテトサラダが私に懐かしさを喚起するわけがない。ところがあるポテトサラダを食べてなぜか懐かしいとか色々感じる事がありました。人生ってそんなものか。

広島の繁華街、八丁堀に『肉のますゐ』と云うお店があります。最初に私がこのお店に興味を持ったのはサービストンカツと云うメニューの存在。ライス付きで350円。安い。350円のトンカツとはいかがなものかと食べに参りましたのが最初。ウマイ。とってもウマイ。ウマウマウー。

カツはとっても薄いのですが、それにかかっている唯一無二の独特なソースのトリコになってしまいました。夜中にがばっと飛び起きて『ますゐ』のサービストンカツが食べたいと思うくらい。

サービス以外にも上トンカツと特上トンカツがあり値段も厚みも違うのを全部食べてみて検証してみた事もあります。メニュー豊富で、お一人様すき焼きやステーキも戴けます。

そんな中で大半のメニューの付け合わせに存在するポテトサラダ。これがとっても幸せな味がする。マスタードが効いていて味わい深い。ウマウマウー。懐かしいはずがないのに懐かしいと思う。トンカツの下に隠れていたりしますが、それが潰れずに丸いままそこにあると感動します。ああ、丸くてカワイイ。

私はこのポテトサラダが世界で一番好き。主役じゃないけれどいないと困る。仮面ライダーの滝和也。キカイダーの服部半平。そのあたり。いつまでもお皿の上で丸く存在してください。美味しかったです! 御馳走様でした!

肉のますゐ

住所
〒730-0000 広島県広島市中区八丁堀14-13
電話番号
082-227-2983
営業時間
11:00~L.O.20:30
定休日:水曜、第2火曜(盆時期休、1月1~3日休)
ぐるなび
ぐるなびページhttps://r.gnavi.co.jp/bban155t0000/

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。