関西にしかない丼ものと北九州独特の肉うどん。
【連載】FPM田中知之の「最後のひと皿~LAST DISH~」 DJ界随一の食いしん坊=FPM田中知之さんの食の日々を語っていただく連載企画。編集長・松尾が以前「宝島AGES」で田中さんと連載していた企画『最後の晩餐~LAST SUPPER~』を受け継ぐ形で登場。死ぬ前に食べたいもの、そして昨日食べたもの=「最後のひと皿~LAST DISH~」を紹介する。
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- ・関西のダシ文化が詰まった食堂
・北九州・小倉のご当地肉うどん
田中さん(以下、田):「ユーゴ・デノワイエ」オープンしたね。
編集長松尾(以下、編):まさに昨日でした(※収録日=11月5日)。
田:おすすめ、いろいろあるんだろうけど、何を食べるべき?
松:そりゃ、なにはさておきタルタルですね。パリで一番と言われたタルタルの味ですから。いま、ほとんどの店が生肉を提供することができない中、こちらは保健所から許可が下りたのというのは大きなトピックです。厨房設備とかすごいみたいです。
FPM田中氏感動の丼とは?
田:そりゃ食べないといけないね。
松:あとは、ステーキも。この店の齊田武シェフはパリのステーキの名店「セヴェロ」仕込なので、外せませんよ。
田:ところで、あの店の場所って僕の事務所とスタジオがあったビルを潰して新しく建てたビルだからね。
松:わかってますよ。僕、事務所の天井のペンキとか塗りましたから。
田:ああそうだったね。あそこでは僕は毎日曲を作っていて、そこで篠山紀信さんに写真を撮ってもらったなあとかいろいろ思い出がある。
松:近々一緒に行きましょ。あともう一軒、白金にビステッカをメインに据えた大注目なイタリアンが7日にオープンなんですが、こちらは当分取材も出来ないし、「お世話になった方のみの予約」ってことでご紹介できないんです。ちなみにシェフは、「メゼババ」の高山シェフも一目置いている人物です。
田:マジで?それは連れて行ってもらわねばw ところで、ぜんぜん話は変わるんだけど、大阪のなんばグランド花月劇場近くの「信濃そば」ってわかる?この前大阪行った時、最初は「丈六」でラーメンにしようと思ったんだけど、長蛇の列で、一時間以上かかると思ったので、こちらにしたのよ。ところが、ここで注文したきつね丼の旨いこと。
松:きつね丼とか好きって京都人まる出しですね。
田:油揚げを使ったものというと、きつねうどんもいなり寿司も全国区のものなのに、これだけはティピカリー・リージョナル・フードだね。東京では絶対食べられないかも。実は昔、『Relax』というマガジンハウスの雑誌で「オレ丼」という誌面で料理を披露する企画があったんだけど、あまりにも好き過ぎて、その時のメニューをきつね丼にしたくらい好きな食べ物なのよ。
ダウンタウンの二人も通い詰めた
松:そんな田中さんが旨いというほどのきつね丼ってよっぽどなんでしょうね?
田:素晴らしかった。理想的!聞くところによるとダウンタウンのお二人も通い詰めたらしいよ。東京に進出してからも、どうしてもここに行きたいがために関西ローカルの番組を企画したという逸話があるくらい。松本さんなんて「信濃そばのダシが蛇口から出たら飲むわ」と言ってたらしい。
松:どうしてもダシが違うんですよね。あの甘さに好き嫌いもあるけど、決定的に育った土地の問題やと思いますよ。僕も東京に出てきた時に昆布でダシがなかなか出なかったから、結局京都と和歌山から水を送ってもらってますからね。
田:そうやね。「グルメ」とか呼ばれる人が、こういったうどんをわざわざ食べに来てダシが甘すぎるとかうどんにコシがないとか評論するのを見るけど、じゃあ来るなよって言いたい。昔は茹で上げたうどんの玉が近所で売っていてそれをさっと湯をくぐらせて温めるだけだったし、それは店で食べても同じような感じやった。ぶちぶちと切れてね。文化が違うんだから。酷評する輩もいるけど、それが理解できないっていうのは、逆にハードルが高いということを理解してないんだよね。
松:文化の無いところで育ったんじゃないですか?チェーン店ばかりの街とかw
田:だから、この「信濃そば」は味とか雰囲気100点の店だと思うよ。とは言っても、関西の昔ながらの食堂ではどこでも似たり寄ったりな濃厚なダシの甘さの丼や麺が食えるわけなんだけど。
小倉名物、どきどきうどんとは?
松:“dressing”もある種グルメ的な情報を出しているのですけど、表層的な意味でのグルメとかだと、こういう身体的な感覚はわからないですね。奇しくも、先日江さんが「『コナもん』と言う言葉遣いのなさけなさについて。」というコラムを書いてくださったんですけど、同じことでしょうね。
田:例えば、音楽にジャンルがあるのと同じで、ボサノバを聴いて音が小さいなどと文句を言わないし、ジョアン・ジルベルトに向かって声が小さいという人はいないでしょ。それぞれに違いがあって当然なんですよ。それを自分の指標だけで汁が甘いとか、うどんにコシがないとか、本当にわかっていないなと。
松:福岡のうどんも特徴的ですよね。僕は博多の駅前にある「平」といううどん屋さんがベストな一軒なんですが、あちらのうどんも基本柔い。でも、関西とはまた違ったダシとのバランスがありますね。
田:うどんにコシを求めず、ダシに命かけてるというのは関西もそうだからね。だから、グルメサイトとかを見ただけで、あの奥深さがわかるわけがないし、甘さも理解できるわけがない。
松:そういう話でいうと、博多から新幹線で20分程度しか離れていない小倉はまた違って面白いです。いわゆる「どきどきうどん」って知ってます?
田:いや、聞いたことないと思う。
松:小倉でも南区、競馬場の近くで親しまれたうどんなんですけど、博多あたりとはぜんぜんちがうんです。うどんそのものは博多と同じか少し太いくらいで、柔らかいんですが、ダシと具がぜんぜん違う。ダシは濃口醤油の黒い色なんだけど、甘いんです。具は、牛ホホ肉を甘辛く炊いたものの角切りが乗ってる。
田:それはなかなか美味しそうだね。
松:何軒も回ったことがあるわけではないですが、おそらくいちばんスタンダードな味は、モノレール北方駅近くの「今浪うどん」ですね。住宅地の入口の比較的見つけやすい場所にあります。肉もあまり筋っぽい部分、軟骨部分は入っておらず、臭みもあまりないのでおろし生姜を入れなくても美味しく食べられます。
田:「肉肉うどん」って聞いたことがあるんだけど、それかな?
松:そうですね。ただ、その名前を使ってチェーン展開しているところは後発なんで、今回の話にはいらないかなと。で、もう一軒足を運びたいのが、小倉競馬場の裏、市営住宅の近くにある「いわさき」ですね。
こんなところに店があるのかっていう住宅地です。Meets Regional編集部時代は、そういう場所の店を探したりしてましたけど、まさにそんなところ。ここは、緑色の麺=よもぎうどんがデフォルトです。肉はアキレス腱とかも入っていて、やや臭みもありますが、好きな人はクセになる味だと思います。
田:機会があったら行ってみるよ。小倉のその店や「信濃そば」や、さっき言った、昔は町内に一軒ずつあった昔ながらの食堂なんかはどんどんなくなってるね。こういった「普通」が永遠にあると思っていたのに。コンビニが出来てタバコ屋がなくなっていったのと同じで、チェーン店ばかりになってる。僕もエラそうにミシュラン三ツ星とか予約が取れない店、紹介でないと入れない店など行くのもいいけど、消えかけている「普通」の店にももっと行かなきゃいけないと再認識したよ。
Hugo Desnoyer(ユーゴ・デノワイエ)
- 電話番号
- 03-6303-0429
- 営業時間
-
1F:11:30~15:00(L.O.14:00)、ティータイム14:00~18:00(~15:30ハンバーガーなどの軽食や冷製小皿料理など、15:30~冷製小皿料理など)、18:00~23:30(L.O.22:30) 2F:11:30~15:00(L.O.14:00)、18:00~23:30(L.O.22:30)
定休日:定休日 月曜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
信濃そば(シナノソバ)
- 電話番号
- 06-6631-3217
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今浪うどん
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よもぎうどんいわさき
- 電話番号
- 093-962-8206
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