フランスでナチュラルワインの造り手の多くが普段飲みする一本
【連載】東京・最先端のワインのはなし verre13 ヴァンナチュール。自然派ワインとも訳されるこのワインは、これまでのスノッブな価値観にとらわれない、体が美味しいと喜ぶワイン。そんなワインを最先端の11人が紹介する。
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- 1.常に完全にナチュラルな造り
2.ブームに便乗せずリーズナブルであり続ける
3.アラビア語で「星」と付けたわけは?
VDF Le Raisin et I'Ange Blanc - NEdjMA / Mas de la Begude<Gilles Azzoni>(ル・レザン・エ・ランジュ・ブラン・ネジュマ/マ・ド・ラ・ベギュード<ジル・アゾーニ>)
紺野さんが選んだのは、フランス・ローヌ地方の生産者、マ・ド・ラ・ベギュード(生産者の名前はジル・アゾーニ)からの一本。ヴィオニエ、ルーサンヌを主体に少しソーヴィニョン・ブランを混ぜた爽やかな白ワインだ。「ネジュマ」と名付けられた気軽に飲めるスタイルのこのワイン。数多ある中から紺野さんがこの1本をを選んだ理由とは?
<紺野さん>
今回のワインは、とても大事だと思っている造り手の物です。
三軒茶屋で「uguisu」を立ち上げた10年前から欠かさず使っているワイン。
いま、世界中でナチュラルワインはムーブメントを巻き起こしています。
そうなるに至るには、様々な理由があったと思うのですが、そのうちの一つはガストロノミーの世界に対してのアンチテーゼ的なものだったと思います。
ヒエラルキーの上位に立つ、いわゆる格付けワインばかりが高価な値段で取引きされ、また生産者達はしばしばその格付けを守るためのワイン作りをする必要があった。
そんな風潮に逆らい、格付けとは無縁の立ち位置で、もっと自由で飾らないワインを作ろうとした生産者達が現れたというのが、ナチュラルワインムーブメントが起きた理由の一つだと考えます。
そしてサロンと呼ばれる試飲会。
ここで同じ様な考えを持つ生産者達が集い、縦方向ではない横のつながりを広げていき、それを消費者も支持したのではないかと思います。
そういったムーヴメントがここ数年で次の段階に突入したと感じています。いわば「ナチュラルなら売れる」というような状況が出てきている。
そして、格付けなどされないナチュラルワインなのに値段が高い「プレミアムワイン」と呼べるようなものまで最近出ているように感じます。
そんななかでジル・アゾーニは、昔ながらのナチュラルワインの精神を貫いている生産者。
価格を抑えているけど、造りは常に完全なナチュラルです。
つまり醸造中に化学的な添加物を一切使用していないという事です。
僕は今まで40以上のワイン生産者の蔵を訪問しているますが、彼らに「自分のワイン以外なら誰のワインを飲む?」という質問をすると、多くの造り手から「ジル・アゾーニ」という返事が聞かれます。
またジル・アゾーニさんは人望も厚く、彼を悪くいう生産者には一人もあった事がありません。
そんな人が造るワインです。
以前は還元が強かったり、「マメ」のニュアンスもあったけど、近年は品質も安定しています。
まあ、ただ時間とともに変化していく「動くワイン」ではあります。
でも、変化しないワインってどうなんだろう?
むしろ抜栓した後も変化しないワインというのは、何か動きを止める物が入っていると思うべきではないでしょうか?
今回紹介するこの白は「Nedjma(ネジュマ)」という名前で、アラビア語で「星」を意味します。
2年前に彼の蔵を訪れた時に説明してくれたのですが、
「いま、パリあたりではアラブ系の人が犯罪に関係している事件が多いという理由で、彼らが人種差別の対象になっている。けれど、アラブ系すべてが犯罪者ではではない。そのことで、アラブ系全体が人種差別されるのは間違えている。むしろ、アラブ系の人は星なんだ」と。
そういうのを名前につけるところが、ナチュラルワインの鑑だなと思うんです。
社会に対して、何かメッセージを投げかけるというのでしょうか?
ナチュラルワインには本来、反体制的な面があったと思いますが、それを貫いているのがジル・アゾーニです。
だから、これからも非常に大事にして行きたいワインです。
<テイスティングコメント>
外観は軽く白濁していて、いかにもナチュラルだなという雰囲気です。
香りは、まず最初にレモンの皮のフレッシュさ、そこに白い花のフローラルな明るいトーンの香りがあります。
でも、それだけではなくて、明らかに植物的な、例えばジャスミン茶とか、微かに白檀のような、すっとする香りがあります。
口に含むと、マールに漬け込んだ軽いアルコール感を伴った洋梨のような風味、それと同時に程よいボリュームを感じます。
ただ、それは圧倒されるようなボリューム感ではなくて、さらっと飲める心地良いバランスのものです。
レモンの皮を連想させる軽い苦味と、かすかな発泡はこのワインにフレッシュさとキレを残しています。
この価格帯のワインにしては十分なミネラル感が口内を引き締め、余韻もしっかりと感じられます。
そして数分経っただけで、このワインは表情を変えてきます。
それだけナチュラルで動きやすい生きたワインという事の証しだと思います。
10分もすると、このワインはもっと重心が低くなり、ボリューム感が増すと同時にエキゾチックなフルーツ、
例えばパイナップルやドリアンのようなニュアンスが出てきます。
同時にパンのような酵母を思わせる香ばしい香りも微かに感じます。
明日になると、いわゆるマメのニュアンスが出て来るのが予想出来ます。
でも、今この瞬間は、とても複雑で素晴らしいバランスが保たれていると思います。
おかしな例えかもしれませんが、台湾の茶屋で、上質なジャスミン茶を砂糖漬けのドライマンゴーやドリアン、ナッツ等のお茶請けと一緒にいただいているような風景が頭に思い浮かびます。
<organでの価格>
グラス800円、ボトル4,500円
organ (オルガン)
- 電話番号
- 03-5941-5388
- 営業時間
-
17:00~23:00
定休日:定休日 月曜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
uguisu (ウグイス)
- 電話番号
- 050-8013-0708
- 営業時間
-
18:00~翌2:00 (翌1:00L.O.) 日曜日18:00~翌1:00(0:00L.O.)
定休日:定休日 月・第4火曜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
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