皮のうまさは格別! 注文ごとに包んで焼き上げる餃子がたまらない、自由が丘の貴重な文化遺産『大連』
【連載】幸食のすゝめ #023 食べることは大好きだが、美食家とは呼ばれたくない。僕らは街に食に幸せの居場所を探す。身体の一つひとつは、あの時のひと皿、忘れられない友と交わした、大切な一杯でできている。そんな幸食をお薦めしたい。
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- 餃子
- 中華料理
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- 自由が丘
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- Summary
- 1.昭和30年代の自由が丘が残る店
2.一晩寝かせて自然発酵し甘みが出てき生地は、注文ごとに麺棒で伸ばし、餃子に仕上げる
3.メニューは焼餃子と水餃子、焼きそばに、ドリンクとご飯だけ
幸食のすゝめ#023、熟成した粉には幸いが住む、自由が丘。
「モチモチした皮がたまらない」、「いやぁ、皮は徹底的にパリパリじゃなきゃイヤだね」、「とんでもない、皮の問題じゃないんだ、とにかく具だよ、具!俺はキャベツじゃなくて、白菜じゃないとダメ」、「ニンニクがばっちりきいた奴で、ギンギンに冷えたビールでしょ」、「蒲田辺りで出てくる、羽根が付いてるのが好きなんだ」。
とにかく、餃子の話になると誰もが自分流のこだわりを持っている。焼餃子は、ナポリタンやカレーライス、豚カツなどと一緒に、今や堂々たる日本食、誰もが大好きな国民食になった。
そもそも餃子の祖国、中国では、焼餃子は主流ではない。みんなが食べるているのは、茹でた水餃子か蒸したもの。「鍋貼(コーテル)」と呼ばれる焼餃子は、ほとんど食べない。でも、最近は本家中国やアジア圏でも焼餃子の人気が高く、その名称も鍋貼ではなく、日式餃子と呼ばれている。大陸から日本列島に渡って来た餃子は、再び新しい食として逆輸入されヒット。パリで長い行列を作っている『GYOZA BAR』の餃子も、やっぱり日本流の焼餃子だ。焼餃子はいつのまにか、日本が世界に誇る食のひとつになった。
戦後そのままの面影を残している自由が丘デパートの入口前を右折し、『ほさかや』と『金田』が並ぶ一角から、さらに右に歩くと『大連』の赤い看板が見える。『大連』は、名前の通り、旧満州の大連から引き揚げた初代が、戦後、自由が丘に開店。昭和30年代の餃子ブームには、カウンター内にたくさんの職人が並んでいたと言う。初代の甥にあたる現在の店主も、その頃ピンチヒッターとして店に呼ばれ、そのまま現在まで餃子屋を続けることになった。『ほさかや』と『金田』、この餃子の
『大連』、そして1番街の「夢のパラダイス」ビルは、昔日の自由が丘の姿を偲ばせる貴重な文化遺産だ。
メニューも開店当時と変わらず、焼餃子と水餃子、客が好みでソースをかける焼きそばだけのシンプルなもの、あとはドリンクとご飯だけだ。
餃子とご飯を注文すると、小皿のお新香と熱い味噌汁が添えられ、立派な餃子ライスになる。餃子のベストパートナー、ビールや老酒を注文すると、オニオンスライスに肉味噌を添えたお通しがサービスされる。
この自家製肉味噌がめっぽううまく、餃子が焼き上がる前にどんどん酒が進んでしまう。いつの日にも、自由が丘の変遷を見つめて来た大連の餃子。初めて訪れた客は昔ながらの味に喜び、久しぶりに訪れた昔の客たちは変わらない味と雰囲気に酔う。
変わらない味を作るための限りない小さな変革
しかし、変わりゆく街と時代を呼吸しながら、実は少しずつ変化を加えている。油は開店当時のラードから、胡麻油と白絞油のブレンドに代わった。餃子の皮自体も、その日の気温に合わせて、少しずつ練り加減を調節し、一晩寝かせて自然発酵を待つ。そして、小麦粉自体が持っている甘みが出てきた翌日。客のオーダー毎に、手打の皮を麺棒で伸ばし、餃子に仕上げる。
出来立ての皮だから、接着する水も襞もいらない。変わらない味を実現しているのは、絶えまない変化と毎日の努力の積み重ねだ。もちろん、皮の作り置きはしない。作り置きすると餡が皮に浸透してしまい、皮の食感が失われてしまうからだ。
幸せな家族たちが作る自由が丘のスタンダード
混雑時には娘さんとお母さんが皮を伸ばして餡を包み、父である店主が特製の厚い鉄鍋で丁寧に餃子を焼き上げて行く。
伸ばしたての皮ならではのサクっとした質感と、焼き目がない部分のモチモチした食感が、野菜多めの餡と一体化したうまみに誰もが夢中で完食する。
少し厚めの巾着型に整形された水餃子は、薄味のスープと共に供され、ツルッとした食感と優しい味わいが「焼」とはまた違う餃子の奥深さを教えてくれる。
餃子ライスに追加で「焼」か「水」を頼む若者たち、老酒で「焼」を楽しみ、焼きそばで〆る古くからのご常連、自由が丘デートのカップルたち…。ピッツアの命が生地であるのと同様に、餃子のうまさは皮。中国で生まれ、日本で独自の進化を遂げた小麦粉のマジック。熟成した粉には、幸いが住んでいる。
<メニュー>
焼餃子700円、水餃子750円、焼きそば550円、ご飯200円
ビール600円、老酒550円
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税込です。
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大連
- 電話番号
- 03-3717-6072
- 営業時間
-
12:00~14:00、17:00~21:00
定休日:定休日 月曜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
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