サクッ、ぷりっ！ 数量限定の絶品カキフライに大行列がとまらない、人形町の『三友』

冬が旬のおいしい食材の一つがカキ。ぷっくりとしたクリーミーなカキは、生でもよし、鍋にしてもよし、フライにしてもよし、と万能な食材だ。そんなカキを使った大行列の定食屋が東京・人形町にある。カキフライ定食のみを50食限定で供する『三友』だ。大行列をなす一番の要因は、もちろんこの限定50食のカキフライ。何と、カキをいくつも重ねて握りこぶしほどの大きさに仕立てたボリューム満点のカキフライを目当てに、近隣の人はもとより、遠方からはるばるやってくる人も多いのだ。

こちらの店で使用するカキは厳選した広島産のものだけ。そのためカキフライを提供できる時期は10月1日～3月末までと限られている。

カキフライに使用するカキの個数は4～15個。カキのサイズに合わせてフライに使用する個数を変えている。ちなみに、1月～2月の時期はカキがぷっくりしているので4～5個を使用してひとつのカキフライとなる。カキフライの販売がスタートする10月頃は、まだまだ小ぶりのカキなので、ひとつのフライに15個ほどのカキが入るという。そのため10月から毎月訪れて、その味わいの違いを楽しむ常連客もいるのだという。確かに、小ぶりのカキ15個と大ぶりのカキ4個では、食感も味わいも異なるだろう。

では、簡単に作り方を紹介しよう。まず新鮮なカキをきれいに真水で洗い、小麦粉を丁寧にまぶす。そのカキをサイズに応じて数個、手のひらでまとめていく。

そして、まとめたカキを卵液にくぐらせ、粗目のパン粉をたっぷりとまとわせる。

このパン粉がこだわりのひとつで、毎日食パンを焼きあげて粗目に挽いて、ふわふわのパン粉に仕上げている。揚げた後の、このパン粉の食感がフライの肝となるそうだ。

油にも秘密がある。一般の定食屋ではとんかつがメインとなるため揚げ油にラードを入れてコクを出すのが通常だが、こちらではさっぱりと食べてほしいとサラダ油のみを使用する。大きなカキをじっくりと揚げたら、出来上がり。カキをいくつも重ねているにもかかわらず、バラバラにならずに、ひとつのカキフライとして仕上げるのは職人技の見せどころだ。

サクサクの衣に箸を入れると、サクッフワッとした食感が箸を通じて伝わってくる。ひと口ほおばると、カキの濃厚なうまみと衣の軽やかさに驚くこと請合いだ。また、通常、カキは揚げると身がぎゅっと縮まってしまうが、いくつも重ねて揚げることで、カキ本来のふんわりとした食感が壊されることなく、衣でうまくまとめられている。食べ進めていくごとに、カキのうまみが口の中で広がり虜になってしまう。

実は、昨年亡くなった先代は、カキが苦手だったという。「お客様から牡蠣フライのリクエストはあったのですが先代はカキがあまり好きではなくて。でも、自分で揚げたカキフライはおいしいなぁとよく言っていました。ちなみに私はこのカキフライが大好きで自分でもよく食べますよ」と先代の奥さま、伊藤洋子さん。揚げ物ながら、食べた後の胃もたれ感はゼロ。その証拠にお店には、ご年配の方も多く訪れ、皆この大きなカキフライをペロリと残すことなく平らげていく。

カキフライのおいしさもさることながら、それを受け止めるご飯もまたおいしい。その秘密は新潟県産のコシヒカリを明治生まれの先代の母が使っていた羽釜で炊いているから。羽釜で炊いたご飯は、一粒一粒ムラがなく、ふっくらと炊き上がるのだ。ちなみに、『三友』は2015年～2017年で3年連続ミシュランのビブグルマンに選ばれている。“こぶしサイズの大きさのカキフライ”と聞くと、その大きさの話題性だけで有名になったのかと思いがちだが、『三友』のカキフライ定食はすべてにおいてこだわり抜いた定食なのだ。

なお、11時の開店と同時に満席になり、常に6～10人ほどの行列ができ、13時を回る頃には売り切れてしまうので、開店11時の少し前に店を訪れるのが確実。このカキフライが食べられるのは3月まで。今が1年で一番おいしい季節だという『三友』のカキフライは、マイベストの一品になること間違いなし！

【メニュー】
牡蠣フライ2個　1,080円
牡蠣フライ3個　1,280円
牡蠣フライ1個追加　540円
※価格は税込