岩手産直のおいしいものがずらり! 『イワテバル。』が東京にいる岩手人に話題沸騰中らしい
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- Summary
- 1.岩手出身者だから仕入れできる! 最高の産直食材を使ったメニューがたくさん
2.名物料理「佐々木家のみそおでん」はぜひ食べてほしい一品
3.岩手人の憩いの場! 楽しい地元話で夜毎盛り上がる
東京にいながら岩手の産直食材を堪能できる店『イワテバル。』
渋谷区道玄坂、百軒店(ひゃっけんだな)を入ると目指す店はある。うっかり見落としてしまいそうな間口が半間くらいの入り口。「上ノ酒場に居リマス タツマ」と書かれた木板を見ながら階段を上ると店主の佐々木達磨さんが笑顔で待っていてくれる。
岩手県出身の佐々木さんは震災時、東京に居た。1週間家族と連絡が取れない日々が続いたそうだ。故郷の復興のために何かできることはないかと、はじめは岩手での飲食店オープンを考えた。しかし当時はとてもそんな状況ではなく3年くらい何もできずにいた。ある日、岩手日報の特集「東京にいる岩手出身者が震災で想うこと」でインタビューされた。掲載紙を読んでみて、「何かをやりたいと言っているだけでは駄目だ、行動を起こさなければ」と出した結論が“東京で岩手の食材を使った店を出す”ことだった。そしてついに2016年11月、『イワテバル。』をオープンした。
まだまだ知られていない岩手の食材の素晴らしさ
メニューに特大サイズと書いてあるので、どれほどなのかと興味津々でお願いした岩手県大槌のホタテ。殻を開けると思わず「でかい!」と言ってしまったほど。貝柱だけでも直径5cmはゆうに超え、厚みも申し分なし。貝ひもを入れると8〜9cmくらいになる。佐々木さんの同級生のご実家が選りすぐりのホタテを送ってくれるのだそう。
はじめに蒸してから炭で焼くと、時間をかけずにふっくら焼きあがるそうだ。そこに釜石「藤勇(ふじゆう)」の醤油を香りづけに。地元民にとって醤油といえばこの「藤勇」なんだそう。三陸特有の“甘塩っぱい”味でこれが驚くほどホタテに合うのだ。「九州の影響を受けたので少し甘いんです。違いはさらっとしているところでしょうか」と佐々木さん。明治35年の『藤勇』創業当時、九州の八幡製鉄所と行き来があり九州地方の甘口醤油が手に入った。三陸の魚介との相性が良かったために甘口醤油の文化が釜石に根付いたそうだ。この醤油がホタテをのうまみをさらに引き上げている。
こちらは田之畑(たのはた)産の「岩手がも」を使った「鴨砂肝のヨダレソース」。「岩手がも」は肉厚で程よい脂とコクはあるが鴨特有のクセがなく南部地鶏とともに岩手自慢の食材だ。「岩手がも」のメニューが6つもあるので悩んでいると、この「鴨砂肝のヨダレソース」を勧めてくれた。
佐々木さんは東京の大学を卒業後いくつかの職業に携わり、赤坂の『黒猫夜』にて料理の道へ。その時にお世話になった松島由隆料理長(現在は代々木上原『Matsushima』のオーナーシェフ)のレシピがベースになっている。パンチが効いたスパイシーな味はやみつきになりそうだ。中国料理しか経験がないのでメニューの根源は中国料理と言うが、佐々木さん独自の“岩手の味”がアレンジされている。
この店の名物のひとつ、鉄分が水に溶けまろやかになると言われる岩手の南部鉄器を使ったアヒージョがある。メインの食材を変えていろいろなアヒージョがメニューにある。今回は牡蠣にしてみた。ぷっくりと大きい岩手産の牡蠣にぶつ切りにしたトマトとマッシュルームを並べ、ニンニクと鷹の爪を入れたオリーヴオイルでゆっくり煮る。グツグツしたらパセリをふりかけて完成だ。濃厚で豊潤な三陸の牡蠣はやわらかくプリッとして磯の香りも華やか。火を通して甘みが増した熱々のトマトもうまい。
地元民ならではの仕入れ。岩手の最高に質の良いものが送られてくる。それをこれだけリーズナブルに楽しめる店を探すのは難しい。ありがたい話と言うが佐々木さんの人柄に触れ、応援したいと思うからこそだろう。
岩手の食材、母の味、想いを受け継いだ岩手の料理は必食
メニューのイチオシは母、玲子さん直伝の「佐々木家のみそおでん」。おでんといえば味噌をつけて食べるものだと思っていたので東京に出てきて驚いたそうだ。この店のスペシャリテにしたいと母の味を受け継ぐために実家に帰った。味噌、酒、みりん、三温糖、ザラメで作るのだが「ザラメを多く入れるのがポイントです。問題は分量が適当なんですよ。家庭料理ってそういうものだと思うのですが、母はなんでも『だいたいこのくらい』ですから」と笑う。
おでんダネはこんにゃく、焼き豆腐、ちくわ、さつま揚げの4品のみ。これを鰹だしで煮る。「おでんの作り方も母から教わってきたのですが、毎日作っていてもまだ母の味を超えられませんね」と佐々木さん。
岩手のアンテナショップにも置いていないシードルも!
オープンしてまだ数ヵ月だが岩手の酒蔵とFacebookで繋がった縁で仕入れることができた。それが「亀ヶ森醸造所シードル」(右)だ。まだできたばかりの小さな醸造所で、この「初号」はまさに初のシードル。アルコールが弱い人にもすっと入っていける優しい味わいだ。こちらに使われているリンゴは「つがる」だが、これから「ジョナゴールド」、「王林」と品種も変わり通年で楽しめる。東京ではまだこの店でしか扱っていないのも魅力。このままでも楽しめるが、バーテンダーの経験を持つ佐々木さんが作るこのシードルを使った「たっぷり桃のシードルサングリア」もおすすめだ。
「小さい店だけにどうしても仕入れが多くできません。でも亀ヶ森さんのように1ケースに何種類か入れて発注させてくれるところに助けていただきながら食材の幅を増やしています」と佐々木さん。生ビール以外のワイン、シードル、クラフトビール、日本酒はすべて岩手の酒蔵から。盛岡のベアレン醸造所のビールとシードルもそのひとつ。ドイツから移設した100年前の設備を駆使し、ヨーロッパの伝統的な製法でクラシックビールを造るブルワリー。料理に合い、飽きのこない味わいだ。
日本酒はセルフサービス。「日本酒いきま〜す」と声をかけてもらい空き瓶で精算する。ちなみに佐々木さんのお気に入りは地元釜石の「浜千鳥」だ。
毎夜繰り広げられる地元自慢話が酒の肴
渋谷を選んだのは岩手出身者が集まりやすかったから。岩手日報の記事や、Facebookを読んだ岩手の人でカウンターが満席になることもある。隣席になった者同士が親しくなったり仕事に繋がったり年代の枠を超えて楽しそうにしているのを見ているとこの店を作って本当によかったと話す。
「田舎から出てきているというだけで心細くなるときがあると思うんです。だから初対面でお互い岩手出身とわかった時の安堵の仕方がものすごいんですよ。岩手に帰りたくても、時間がなかったり距離の問題で躊躇する人もいる。だからこの店がそんな人たちの憩いの場になってくれたらと思います」。
岩手は広いため沿岸北部、沿岸南部、内陸では文化も懐かく思う料理も異なる。例えば冷麵。盛岡の人たちにとっては故郷の料理だが釜石の人にとっては“盛岡のもの”と言う感覚なのだそう。おでんもお雑煮も言葉すら違っている。共通するのはクルミをよく使うこと。だからこの店ではいろいろな“論争”がされている。そんな会話を横で聞いていると面白くて仕方がない。岩手以外の人も便乗して地元の話をすればさらに拍車がかかり笑いが絶えることがない。「僕を介さず名刺交換して勝手に仲良くなっています。この店に来ることで縁がどんどん繋がっていくことが嬉しい」と語る佐々木さん。
こんな楽しい店を岩手県の人だけのものにしておくのはもったいない! 通いつめて岩手の人よりも“岩手通”になりたいものだ。
(メニュー)
特大サイズのホタテ浜焼き/780円
佐々木家のみそおでん/680円
鴨砂肝のヨダレソース/880円
牡蠣のアツアツアヒージョ/1,200円
ベアレンクラシック/800円
ベアレンサイダー/800円
亀ヶ森醸造所シードル/580円(グラス)、3,800円(ボトル)
イワテバル。
- 電話番号
- 03-6427-0516
- 営業時間
- 18:00〜23:00(L.O.22:00) 定休日 日祝
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
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