極上黒毛和牛が味わえるフルコースに昇天寸前! 「おにく会席料理」の店がリニューアル

高橋綾子

Summary
1.「おにく会席料理」の店が10年の節目を迎え全面改装
2.素材と器が創る滋味深く端正な料理に絶賛の声
3.法学科から音楽家へ。 異色の経歴を持つ店主が選んだのは料理人

10年という節目を迎えリニューアルしたその理由とは?

牛肉料理で有名な『和牛銘菜 然』が10年という節目を迎え、リニューアル。店主、片柳 遥氏がずっと胸に刻んでいる言葉「柳緑花紅真面目」という、「自然のままであること」を意味する宋の詩人・蘇東坡の詩から2つの文字をいただき店名を『おにく 花柳』と改め、新たな船出となった。

独立した時は焼肉店からのスタートだったが、和牛の魅力を知れば知るほど自分で選んだ肉を最大限に生かす“料理”がしたくなった。天然のうまみを使った四季を感じる皿・・・しかしそれは自分が作った焼肉店ではできない領域である。それならば肉のフルコースで勝負してみようと「おにく会席料理」として生まれ変わったのが10年前のこと。

いつか理想とする店ができたら使おうと唐津や備前を中心に長い年月をかけて少しずつ集めた器や皿もやっとお披露目することができた。この皿に何の料理をのせるか、この料理を何の器に盛ろうか、考えると楽しくて仕方がないそうだ。本当に片柳氏の「料理と器で創られる世界観」には惚れ惚れしてしまう。では端正で美しいその世界をご紹介しよう。

さらにパワーアップ! 四季を感じる肉料理にひたすら感動

先付けには、さほど珍しくなくなった雲丹と牛肉のコンビ。まず肉質がハンパなく良く、おいしい。美しいサシが入り、育ちの良さがわかるなめらかな舌触り。その肉で巻いた雲丹はトロンととろける。仕上げに九州の「ヒガシマル醤油」をひと刷毛。牛肉と雲丹にこの甘めの醤油があう!

前菜として出されるこの「生雲丹巻き」はひょんな事から誕生した。焼肉店時代にはどうしても化学調味料を使ってしまうのがイヤでナムルとキムチは提供していなかった。その代わりになる前菜としてユッケに卵という料理を出していたがたまたま卵が切れてしまい、代用にウニを使ってみたら大好評。これがヒントになりユッケの代わりに薄切り肉を使い、いまではこちらのスペシャリテとなった。

「蛤とホルモンの吸い物」の材料は新鮮なホルモン「シマチョウ」と昆布と蛤でひいただしと酒のみ。それぞれのうまみが融合した上品な吸い地は滋味溢れ体中に沁み入る。これで塩を一切入れていないとは驚きだ。蛤はパワフルで噛むごとに地のものの底力を感じ、ホルモンの食感とともに味の奥深さを堪能できるひと品である。

揚物の「カツ」に使った佐賀牛は、刺身でも食べられるほどの新鮮さ。そのおいしさをいちばん感じられるレアな火入れで提供する。パン粉職人が2分でこの色に揚がるようにパン粉の糖分も粗さも調整した。いつまでもサクサクとしたパン粉とどこまでもやわらかい肉質の佐賀牛。その素晴らしい食材を最大限に引き出したプロフェッショナルな料理人とプロフェッショナルな食材の作り手によって生まれた完璧な皿だ。ソースも出してくれるが、肉のもつ味わいと脂の甘さ、そしてパン粉の食感をストレートに感じさせてくれる山葵と塩で楽しむのが良いだろう。

なぜ肉にこだわるのか。片柳氏の小さい頃のご馳走といえば、父が焼いてくれたステーキ。「ステーキを食べられる日はどんなに嬉しかったことか。料理人としての僕の原点です」と語る。よってコースのクライマックスには肉のうまみと香りを楽しむ「炭火焼」を。じっくり丁寧に炭で焼き上げたヒレ肉はポン酢をつけてひと口でいただく。じゅわんと脂が口の中で滲む。目を閉じてその余韻にいつまでも浸りたくなる、そんなうまさだ。添えたのは走りの筍。日本にいるという感覚を大切にした“四季を感じる肉料理”、これこそが『おにく 花柳』の代名詞なのである。

法学科から音楽家を目指し、そして料理人に転身した店主の歩んだ道

片柳氏は大学で法学を専攻していたがクラシック音楽に傾倒し音楽大学を目指すといった料理界においては稀有な経歴だ。音楽大学を受験するにあたりホテルの厨房にアルバイトで入ったことが彼の運命を変えることとなる。そこで教わった伝統的な洋食のレシピは、氏の料理への興味を掻き立て本格的に勉強を始めるきっかけとなった。

結局音大には行かず、ホテルを退職後、和食、ステーキ店で修業し開業する。最初の5年は本当に大変だったと言う。それならなぜなんのツテも顧客もない場所に店を作ったのかという問いに「外食は非日常の出来事なので、店に来るのに迷ったり、料理について語りながら帰ったり、そんな時間を作りたかったんです。だからわざと遠くに開店したら誰も来てくれませんでした」と笑う。ではどうやって一つ星を獲得するまでになれたのかと訊くと「信念を曲げなかったからでしょうか。ひとつは鮮度を大事にすること。もうひとつは自信のないものは出さないこと。どんなに辛くてもこの2つを自分に言い聞かせて頑張って続けていたら少しずつお客さまが来てくれるようになりました」と語る。

だから食材も仕入先との信頼と自分の目で選ぶ。今日はどこの肉を使っているのかと訊くと、ちょっと待ってくださいとラベルを確認した。「長い間お付き合いいただいているのでクオリティーには絶対の信頼がありますから、次は自分の見たものだけを信じられる。どこの牛とか等級とかまったく気にせずに買います。肉の色と使う部位だけを見ていますがあまり偏りはなく北海道から沖縄まで満遍なく仕入れています」と言う。さぞかし肉の目利きも培われているのだろうと訊ねると「奥が深いのでまだまだです。見た目が悪くてもものすごくおいしかったりするので日々発見です」と片柳氏。

肉だけではない、魚も野菜も引き寄せられた縁でつながっている。星を獲った時、生産者や仕入先の方々が自分のことのように喜んでもらえたのが嬉しかったそうだ。はじめはアラカルトもあったが味の緩急や流れを楽しんでもらえたらとコース料理のみにした。何もかもが自然体、まるで運命に導かれるかのように道が開かれていったのである。

焼きの極意は「肉になりきる!」 こだわりの肉の焼き方について訊いてみた

今回、リニューアルにあたり焼き台を特注で新調したそうだ。炭の高さを考えて2段にし、さらに弱火から強火まで火をコントロールできるように設計してもらった。最高の焼き台があるので次はいかに“肉になりきる”か。「ここ焼いてほしいなぁとか、あったかくなってきたぁとか、肉の気持ちになることですね」と話す。「(肉が)気づいたら焼き上がっていたというのが理想の焼き方です。だから焼きあがるまでにじっくり時間をかける。良い炭を使うのも香りが全然違うからです。お客さまに和牛の魅力を味わっていただくためにいかなる努力もする」と。片柳氏が言った「肉を火傷させない」という言葉が記憶に残る。

まさか自分が料理人になるとは思っていなかったと語る片柳氏。ただ幼少の頃から父親が良く有名なレストランに連れていってくれたので舌が肥えていた。調理師学校にも行かず実践だけでここまでになれたのは死ぬほどの努力と常に勉強しているからだ。独立してから12年、良くも悪くもうまくまとめられるテクニックを持ってしまった。だからこそいつも緊張感を持ち、気を入れ直さなければいけないのだと。料理の世界に入ってから店の花も生けられ、茶も嗜めるようになった。今は英語の勉強をしているそうだ。料理も料理にまつわることも学ぶべきことに終わりはないと考える店主は留まる所を知らない。訪れたものはその世界に酔いしれ口福な時を過ごすことができるのである。

(メニュー)
季節のおまかせコース/12,000円〜
爛漫/時価(15,000〜30,000円くらい)

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おにく 花柳

住所
〒103-0024 東京都中央区日本橋小舟町11-11 Kビル1F
電話番号
050-3461-2525
営業時間
月~木 17:30~最終入店23:00 金・土 17:00~最終入店23:00 定休日 日祝
ぐるなび
ぐるなびページhttps://r.gnavi.co.jp/2d9v49wx0000/
公式サイト
公式ページhttp://www.karyu-tokyo.com

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