和食『銀座しのはら』は半年先まで予約待ち!? 全国の美食家が集まる日本料理の真髄を体験せよ

銀座の日本料理(和食)の中で、全国の食通たちが注目しているお店が『銀座しのはら』です。店内のカウンターは11席。店主の篠原武将さんは縁があって、滋賀県から銀座に『銀座しのはら』を移転してきました。メニューは13品のおまかせコースのみ。胃を温め口の中をさっぱりさせてくれる香煎茶から始まり、デザートで締めくくるという内容。予約困難店としても有名ですが、どんなに待っても訪れたくなる一軒です。

高橋綾子

Summary
1. 日本料理(和食)と器で創られる『銀座しのはら』の芸術にうっとり
2. 数多の食通たちを虜にする「疲れない料理」
3. 誰もが羨む『銀座しのはら』は半年待ちでも絶対行くべき

いま話題の日本料理といえば『銀座しのはら』

「滋賀の名店が銀座に来る!」と食通達の間で話題となり、昨年10月オープンのわずか1カ月後には、すでに予約は3カ月待ち、そして滋賀に通ってくれていた常連やリピーターによって現在はとうとう半年以上待たなければ入れない、今でも話題の日本料理店が『銀座しのはら』である。

ほんのりと香の匂いが心地よい店内のカウンター席(11席)に座るお客をもてなすのは、店主の篠原武将さん。ありのままの自分を見せながら、「カウンターなのでごまかしはききません」と話す篠原さんが創る料理は、今や日本の食通たちの舌を虜にしている。

大きなからだつきと優しい笑顔の篠原さんの話が楽しくて訪れる人も多いというが、確かに、いつも笑いが絶えない。『銀座しのはら』の魅力はどうやら料理だけではなさそうだ。

滋賀県から銀座に移転してきた『銀座しのはら』。滋賀では常に満席状態で安泰の域に入っており、「ありがたい」と思いながらもこのままでいいのか篠原さんは悩んでいたそうだ。料理人として次のステップに進むことを考えていたタイミングで、現ビルのオーナーの知人が来店。しばらくしてビルが完成したとの連絡があり上京し、直感で移転を決断。その3ヵ月後に『銀座しのはら』をオープンしたという。

一枚の絵のように美しい「八寸」に感動

メニューは13品のおまかせコースのみ。胃を温め口の中をさっぱりさせてくれる香煎茶から始まり、デザートで締めくくるという内容だ。今回は、「お腹いっぱいになって欲しいんです」と、用意されたコースの中から3品を紹介しよう。

まずは先付けから。鮑、車海老、雲丹、白魚、水前寺菜、花山葵を美しく盛り付け、加減酢(砂糖、塩、醤油などを加えて酸味を加減した酢)の煮こごりを添える。このひな祭りの時期にしかお目見えしない器を使い春の訪れを感じさせてくれる。“名刺代り”とでも言わんばかりのビジュアルと素材のおいしさに初っ端から「篠原ワールド」に引き込まれてしまう。

本日の八寸は「田舎のひな祭り」をイメージ。手前から時計回りに「天然のもろこ」、「酢レンコン」、「明石の穴子」、「小柱とセリのお浸し」、陶器の家の屋根を開けると「あん肝」、「てっぴのぬた」、「鮒寿司」、「のし梅と卵のしんじょう」、「子持ち昆布」、「佐島のタコ」、そして「庄内麩のチーズはかた」が添えられている。「はかた」とは料理用語で、博多帯の縞目のように彩りの違う素材を重ねたり挟んだりすること。「皿には自身が体験したことだけを表現しているので本も写真もあえて見ることはしていません。自分が盛りたい景色を描いています」と篠原さん。他人が作ったイメージを自分の感覚にしたくないそうだ。だからこそ篠原さんの創る“嘘のない情景”に感動を覚えるのだろう。

お造りは「明石のハリイカ」、「キャビアを巻いた粟津の鯛 このこ添え」、「菜の花」、「花穂紫蘇」、「昆布の煮こごり」。昆布を醤油で漬けて2cm角にした煮こごりがたまらなくおいしい。ハリイカはねっとりと甘くてやわらかい。鯛は今まで泳いでいたかと思うほど弾力がある一品だ。

「八寸」で使われる大きな皿をはじめ、こちらの器も評判を呼んでいる。若い頃から美術館を巡り、本を読み、勉強をし続け、信楽焼を中心とした自身の料理に合う器だけを地道にコツコツと集めてきた。目の前に供されると「料理があってこその器、器があってこその料理」ということを心底理解できる。料理と器が創る芸術も必見である。

お腹いっぱい食べても「疲れない料理」の秘密

味の要はだしと重ね方だという。滋賀では天候次第で良い食材が入ってこないことが多々あった。それでも“おいしい”と思ってもらうために味の組み立てに工夫を凝らしていた。どこまで味を重ねるか、やり過ぎてもやらなさ過ぎても“おいしい”と思ってもらえない。もちろん醤油や塩で味を整えるのは最小限にとどめている。お客はその巧みな味に魅了されてきたのである。ここ銀座の地でも考え方に変わりはない。

朝は築地に行き、8時には仕込みを始め、17時から23時過ぎまでは営業、それから片付けと翌日の仕込みをする。休憩時間はたったの15〜30分。帰路につくのは夜中の2時か3時。そしてまた築地に行く。何がいちばん辛いのかを訊くと「寝られないこと」だと答える。それでもお客が“おいしい”と言ってくれるが嬉しいと、この笑顔だ。

銀座に移転して4カ月が過ぎ、いまの気持ちを訊いてみた。「毎日ハリはあるが油断すると飲み込まれてしまう街で勝負しているので常に気を張っている」と言う。さらに、「いまは話題先行なので早く実力で認めてもらわなければ」と、どこまでも自分に厳しい。

食事が終わると次の予約をせずにいられなくなる。これからますます予約困難になるだろうが、どんなに待っても訪れたくなってしまう。それが『銀座しのはら』なのだ。

【メニュー】
おまかせコース 23,000円〜
価格は税別

銀座 しのはら

住所
東京都中央区銀座2-8-17 ハビウル銀座2 B1
電話番号
050-5487-7638
営業時間
月~土・祝前日・祝日
17:00~23:00
定休日:日曜日
ぐるなび
ぐるなびページhttps://r.gnavi.co.jp/efw1vsu60000/

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
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