初台でツウなオトナが足繁く通うナチュラルワインバーには、ゆる~い極上のリラックスがある
【連載】幸食のすゝめ #041 食べることは大好きだが、美食家とは呼ばれたくない。僕らは街に食に幸せの居場所を探す。身体の一つひとつは、あの時のひと皿、忘れられない友と交わした、大切な一杯でできている。そんな幸食をお薦めしたい。
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- Summary
- 1.ナチュラルワインとおつまみとお菓子を愉しむ、初台のオトナのためのワインバー
2.店主はレコード会社を経て洋菓子店を開いた女性。ゆえに、音も菓子類も楽しめる
3.ケーキ屋に就職して出たアレルギー反応から食品に対しての色々な疑問や想いが浮かんではじめた仕事
幸食のすゝめ#041、見上げる瞳には幸いが住む、初台。
「ねぇ、富田ラボって、たしか亡くなったよね?」、「えーっ、生きてるよ」、隣りのカウンターの3人が話している。
やめれば良かったのに、つい横から口を挟んだ。「確か、何年か前に矢野顕子さんとかが追悼やってましたよね」。
今度はカウンター内のマッチー(店主・町田洋子)さんが応える、「えーっ、ショック! でも、確か今度の畠山美由紀さんのライブに名前があった気がする」。
不安になって検索する、「生きてますね」と、僕。
だったら、亡くなったのは誰だろう?
その時、全員の声がユニゾンになった、「レイ・ハラカミ!」。
店内の音楽は、ハナレグミと富田ラボの「眠りの森」から、山下達郎のライヴへ。そして今は、ビーチボーイズの「Wouldn’t It Be Nice」に変わっている。マッチーさんのコンピレーションだろうか、次から次へとチャーミングで素敵な曲ばかりが流れる。
それはこの店のカウンターに並んでいるヴァンナチュールの瓶や、黒板に書かれた食べ物のメニューにも通じている。
自分が楽しめて、気持ちよく感じるものしか置かない。それは「自分で何から何までやってみたかった」という彼女の美意識で紡がれた「すてきなメロディー」だ。
参宮橋で小さな自分の洋菓子店を開いた後、初台に移る時に大好きなヴァンナチュールの店にしようと決意。身体に優しいつまみや食事と、余裕ができたら得意のお菓子を焼いてもいい。ワンオペレーションにぴったりのコンパクトな店内は彼女の好きなもので埋め尽くされている。
カウンターにずらりと並ぶジャン・マルコ・アントヌツィのリトロッツォは、がぶ飲みしているエチケットみたいにヴァンナチュールを気軽に楽しんで欲しいという思いが溢れている。チャーミングな果実感と舌先に感じるピチピチした刺激は店内に流れている音楽みたいだ。
マリアージュよりハーモニーを
いつも何か用意されている柑橘系のマリネは、自然派の白と絶妙にマリアージュする。ジャガイモや、4種のキノコのブルーチーズグラタンなど、グラタン類も黒板の定番だ。
「これに白とか、これには赤とか、あんまり、そんな風に考えないんです。好きなワインを、好きな料理と一緒に自由に楽しんで欲しい。それがヴァンナチュールの魅力だと思うんです」。
柔らかいのに芯があるマッチーさんの絶妙な声のトーンと、開放感あるホスピタリティ。心地いい時間が、あっという間に過ぎていく。
しなやかな大人のためのワインバー
バーだから、ソフトドリンクは置かないし、未成年者は入店できない。だからこそ、中の大人たちは心ゆくままリラックスすることができる。白3赤3泡1で開けられているワインの他はビールが数種類。ワインにはマッチーさんの短く的確なナビがつく。運が良ければ黒板にガトーショコラという名前を発見することもある。
楽しさと正しさを繫いだヴァンナチュールは、一つひとつの美味しさに個性があって、いつまでも飲み飽きない。
「だから、ワインを提供する自分自身もいつも楽しめるんです」。カウンターの中から、上目遣いにマッチーさんが微笑む。見上げる瞳には、幸いが住んでいる。
※「すてきなメロディー」は山下達郎(シュガーベイブ)のデビューアルバム「songs」収録曲。取材のこの日はちょうど「songs」発売42周年だった。
<メニュー>
グラスワイン 900円~1,200円、ワインボトル5,000円~、おつまみ4種盛り600円、しらすとチーズのオムレツ600円、かんきつのマリネ550円、じゃがいものグラタン650円
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税込です。
マチルダ
- 電話番号
- 03-5351-8160
- 営業時間
-
18:00~24:00、土曜15:00~21:00
定休日:日曜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
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