夜な夜なグルメな美女が集まる『サーモンアンドトラウト』に未知の食材と出逢いに!

植木祐梨子

Summary
1.クリエイティブな料理を生み出す、若き新鋭・森枝幹シェフ
2.おいしくて楽しい! ガストロノミーを駆使したコース料理はサプライズがたくさん
3.美女も興奮! 『サーモンアンドトラウト』の魅力

10月11日~24日の期間に開催される「Tokyo Restaurant Week東京レストランウィーク」。10年連続で世界で最も『ミシュランガイド』掲載レストランが多い都市になった東京は、まさに「食の都」。この素晴らしい街の食をより多くの人に体験してもらいたいとしてはじまるこのイベントでもっとも大切なのはお店選び。

そこで、今の東京の食トレンドに詳しく、実際にフィールドワークを続けている、著名人の皆さんにレコメンダーとなっていただき、店をセレクトしていただいた。

そんな皆さんを集めての食事会、第一弾はサブカルチャーの聖地・下北沢と、世田谷の下町・三軒茶屋のちょうど中間あたり、人通りの少ない夜の住宅地にぼんやりと明かりが灯る。『サーモンアンドトラウト』。

今回集まっていただいたのは、真藤舞衣子さん(料理家)、片山結花さん(Uca Co.,Ltd 代表 フラワーデザイナー)、高山都さん(モデル)、斉藤アリスさん(モデル)という見目麗しい女性ばかり。ただお綺麗なだけでなく、彼女たちは「今の東京の食」を知るグルメでありインフルエンサー。食のトレンドには敏感で、いろんなレストランを知る人たちだ。

彼女たちが味わった『サーモンアンドトラウト』の料理。シェフの森枝幹さんは、お父様(森枝卓士さん)の影響で、幼い頃から珍しいハーブや調味料、あらゆる国の食材に囲まれた環境で育った人。

オーストラリアの『Tetsuya’s(テツヤズ)』で修業後、『湖月』で日本料理を経験し、マンダリンオリエンタル東京『タパスモラキュラーバー』では新しい調理技術を学ぶ。

その後、表参道『246COMMON』にて屋台を経営し、27歳の夏に3人の仲間で『サーモンアンドトラウト』を立ち上げた。森枝シェフの型にはまらない料理を体験しようと今宵集まった、グルマンな美女4人の乾杯から食事会がスタートした。

一品目:「鮨」

「鮨です!」と森枝シェフ。マグロの赤身に見えるものが酢飯らしき食材をしなやかに包む姿は、確かに鮨である。手にとって口に含めば、サクッとした食感とともに甘い汁が溢れ、繊細にゆっくりと溶けていく。色鮮やかな鮨の正体は、干したスイカと渋谷『チーズスタンド』のリコッタチーズ。タネが明かされた瞬間、驚きの歓声が厨房に響く。この反応に、森枝シェフはほくそ笑む。

「見た目はお寿司だけど、香りはスイカ! このスイカの水分量がちょうどいいんです。多すぎると口の中でチーズが分離しちゃう。どこのマグロかと思って食べてみたけど、まんまと騙されちゃいましたね」(真藤舞衣子さん)

二品目:「フッコ(スズキの子供)とトマトとタイバジルを合わせたもの」

同店のソムリエ兼バンドマンである山﨑さんが“エスニックカプレーゼ”とこっそり名付ける理由は、食べるとよくわかる。タイバジルのスパイシーな香りを纏ったフッコは、ライムの甘酸っぱいソースとよく絡めてから口に入れてほしい。噛むほどにエキゾチックな香りと魚醤でコク深さを感じ、最後に清涼感とともに消えていく。

「初めて食べたタイバジルは、ミントのようにスーッとした印象。甘酸っぱいソースと一緒に食べると、香りがより際立ちます。あっさりとした白身魚と相性がいい!」(片山結花さん)

三品目:「4種のウリに、セロリとヨーグルト、発酵パイナップルのソース、キュウリのジュレを添えたもの」

透き通るほど美しくスライスされたキュウリ、レモンウリ、コリンキー、マクワウリが、涼しげに夏を彩る。下に隠れているのは生のホタテ。ジュレの輪に浮かぶソースをたっぷりつけると、ウリやセロリの青みが、ミルキーなホタテとヨーグルトに優しく包み込まれていく。

「クリーミーなホタテとソースの間に、爽やかなウリを挟んで食べる…この3つのハーモニーがすごくおもしろい。力強い味わいの日本酒がウリによく合います。ウリだけだとさっぱりしすぎていてパンチが欲しくなるけれど、ソースと日本酒のおかげで満足感のあるひと皿です。このお料理を食べるのは、実は2回めなんです(笑)。初めて食べたときは、森枝シェフの組み合わせの妙に興奮が止まらなかった! 今回はそのときの記憶と答え合わせしながら、五味のハーモニーを楽しむことができている。何回食べてもおいしいなぁと再確認させられました」(高山都さん)

四品目:「トウモロコシのスープ」

生のトウモロコシジュースの上には、燻製された白トウモロコシのクリームがキンと冷やされ飾られている。スープを泳ぐシラスの塩味が、トウモロコシの甘みを引き立たせる。後からじんわりとくる辛味は、アクセントに散らされた生の胡椒と乾いた胡椒。交互に押し寄せてくる甘みと辛味の妙に惑わされて、あっという間に飲み干してしまう。「すごく甘い! いつまでも飲んでいたい!」と、美女たちの黄色い声が飛び交った。

「今まで食べたトウモロコシのスープとは、甘みが全然違う! 胡椒を噛むとスパイシーさが広がって、甘いスープがグッと引き締まっていく」(斉藤アリスさん)

「トウモロコシの天然の甘さのなかに、シラスの塩気とブラックペッパーのスパイシーな刺激に感動! 甘いだけでなくスパイスで引き締まっているから、お酒と合わせて食べられます。少し穀物さを感じるスッキリとした三光天賦(さんこうてんぷ)とトウモロコシの相性が素晴らしい。あと3回くらいおかわりしたいな」(高山さん)

五品目:「鮎のフィッシュアンドチップス」

季節の旬の魚を使って作る「フィッシュアンドチップス」は『サーモンアンドトラウト』オープン当初からある人気メニューの一つ。錫(すず)100%の皿にくるまった鮎が、力強くヒレを伸ばして顔を覗かせている。

「出逢いは、パリの『クラマト』というシーフードレストランです。ここで食べた、カマスを背開きにして揚げたものを参考に、自分なりに改良を重ねました」と森枝さん。

きれいな小麦色に揚げられた鮎は、背開きにして肝と中骨を全て抜き、また元の形に戻す。丁寧な処理のおかげで、衣は甘く、身はほくほくとやわらかい。途中で感じる肝の苦味は、肝そのものではない。肝をイメージした苦味のあるソースを、注射器で注入しているのだ。

この苦味に合わせてペアリングされた酒は、麦芽由来のしっかりした苦味とトロピカルフルーツの明るい酸味が豊かなスコットランド産の「PUNK IPA」。ジャンクフードの概念を取っ払った上品なフィッシュアンドチップスから、森枝シェフらしいユーモアを感じさせられた。

「食べた瞬間、本能でビールを欲した。鮎の肝の苦味とさっくり揚がった芳ばしさを、ビールと一緒に流し込みたくなりました」(真藤さん)

「サクサクの衣とふわっとした白身と肝のソースがとろけだす。3つの食感が楽しめるなんて初めてです」(片山さん)

六品目:「ゴールデンキウイとコリアンダーのサラダ」

熟したキウイの甘酸っぱさと、コリアンダーや実山椒、マジョラムの清涼感が刺激的な一品。フレッシュなハーブの香りが華やかに広がってくる。

「パクチーにキウイを合わせるなんてなかなか思いつかない。他では味わうことのできない組み合わせに、新しい発見をさせられました。キウイの甘酸っぱさとハーブのワイルドな風味が、鮎を食べたあとの脂っ気をすっきりさせてくれる。小さいのに優秀なサラダです」 (高山さん)

七品目:「白身魚のソテーとイカとズッキーニ。シソとモロヘイヤ、オクラのスープ」

料理が並んだ途端「なんの魚でしょう?」と、森枝シェフはクイズ形式でお客の味覚を研ぎ澄ます。コースの中にはお客が食べたことのない食材を一品入れるようにしているという森枝シェフ。お客との距離が近いからこそできる料理のアプローチなのだろう。

一同は真剣な面持ちで料理と向き合う。さまざまな魚の名前が飛び交うなか、“金魚”という回答にカウンターが笑いに包まれた。淡水魚という森枝シェフのヒントを経て「ブラックバス」の正解にたどり着いたのは片山さん。食用のイメージがない魚だが、弾力のある白身はきちんと下処理されて甘みと塩味を感じる。そして、全く臭みがない。濃厚な色をしたモロヘイヤスープは、まろやかで滋味深い。

「きちんと骨切りされていたので、最初はハモかな? と思いました。私のなかではリリースする魚というイメージがあったので、おいしくて本当にびっくり。臭みも全くありません。スープはみずみずしく、あっさりとしています。味と見た目のギャップが楽しい、アイデア満載の一品です」(片山さん)

八品目:「山梨県早川町の鹿肉、黒ニンニクをベースにしたソースと、摘果したマンゴーのピクルス、ヒマラヤ塩、スティックセニョール、十六ささげを添えて」

森枝シェフが親交深いという、早川町でジビエの処理加工施設を営む望月秀樹さんが完ぺきに処理した“早川ジビエ”は、獣臭さを感じさせない。低温で芯までじっくりと火入れされた鹿肉は、鮮やかなピンク色をしている。ねっとりと舌にまとわりつくような感触に続いて、ふんわりと薫香を感じる。黒ニンニクのソースをつけると芳醇なうまみがより引き立つ。なめらかなポテトの中から、プリプリの枝豆が甘みと一緒に弾け飛ぶ。

「ペアリングには、イタリア・ピエモンテ州の『Zero13』を合わせました。どこか動物らしいニュアンスがジビエとよく合います」と山﨑さん。

「鹿肉はだしにつけていたんじゃないかと思うほど、味に深みがある。ヒマラヤの塩と合わせると、卵の黄身のような風味を感じておもしろい。さらにおもしろいのが、マンゴーのピクルス! 渋みと酸味が合わさったようでフルーツとは思えません。ポテトの中に枝豆が入っているのも夏らしくっていいですね」(斉藤さん)

九品目:「スッポンと夏野菜のお椀〜トムヤム仕立て〜」

中にはゴーヤ、冬瓜、ズッキーニと茄子、タイのショウガが入っている。タイとメキシコの唐辛子で作った自家製のチリオイルは、辛いがうまみが強い。スープの下には、スッポンの身をたっぷりと詰めた茶碗蒸しが隠れている。気がつくと、みんな無言でスープを啜っていた。飲むほどにクセになる複雑な香りは、口の中に閉じ込めていたくなる。

「酸っぱさとスパイシーさ、コクがすごくバランスが良い。オイルとショウガが効いていて、飲むと喉が熱くなる感覚。スッポンと訊くと、冬に食べるイメージが強かったけれど、寒暖の差が激しい夏場にもピッタリなアレンジがされています。元気になりそう〜!」 (高山さん)

十品目:「ラベンダーの香るパンナコッタ、エルダーフラワーの冷たいスープ、キクラゲ、黄桃、早生ミカン」

パンナコッタは口に入れると、畑をまるごと食べたかのようにラベンダーが豊かに香る。エルダーフラワーの甘い蜜は甘くなりすぎないよう、黄桃の渋みと柑橘の酸味がバランスよく計算されている。

「デザートにキクラゲという異色の組み合わせにびっくり! パンナコッタとは思えないクリームチーズのように濃厚な味わいだけど、フルーツと一緒に食べるとさっぱりしていて重たくない」(斉藤さん)

十一品目:「スモモのシャーベットと梅のクリーム、クランベリーのゼリーとクランブルをのせて」

なめらかなシャーベットの中から、サクッとしたクランブルの食感と甘みが溢れだす。ディルと合わせて食べれば、酸味と香りが甘さを抑えてグッと大人な印象に変わる。

「梅でクリームを作る感性が斬新! ディルは料理に使うハーブだと思っていましたが、デザートに使ってもあうことにびっくりしました。クリーミーなのに後味がすごくさっぱりしている。柔らかく爽やかに〆にもってってくれる、満足感しかないデザートです」(高山さん)

十二品目:「お茶菓子と京都・宇治のほうじ茶」

豚の皮を揚げた「チチャロン」は、メキシコや東南アジアでよく食べられているという。五香粉というスパイスと一緒にキャラメリゼして甘くスパイシーに仕立てられたチチャロンは、おせんべいのようにカリッとしていて、アジアの屋台街を彷彿させる香りが漂う。

「青梅のキャンディータ」は砂糖と一緒に煮詰めたデザートのこと。シロップを加熱し、そこに梅を入れて香りのみを移す。冷ましたら梅を取り出して、再びシロップの温度をあげる。これを一カ月くらい繰り返すという。果実のテクスチャーを残しながら、梅に香りを移していくために別々に火入れするという涙ぐましい努力の末、完成。青梅のシャキッとした食感は、長い間加熱されていたことなど微塵も感じさせない。

奄美大島・喜界島在来の柑橘「シークー」も、キャンディータ仕立てに。キリっとした酸味と苦みを感じる。

「チチャロンは、スパイシーなかりんとうのよう。青梅のキャンディータはお酒のつまみになりそうなピクルスのような味わい。ついついお酒が飲みたくなっちゃいます(笑)。シークーは、香りが豊か。口の中いっぱいにベルガモットの香りがひろがるように刺激的な感覚です。酸味とほろ苦さと甘みがずっと広がって、余韻まで楽しめます」(片山さん)

何度来ても初めての経験を味わうことができる森枝シェフのクリエイティブさに、すっかり魅了された美女たち。世界中を旅しては、現地で感じたものや出逢った食材を自分の料理に取り入れ続ける森枝シェフ。父が与えてくれた環境と、そこで培った感性ひとつひとつがルーツとなって息づいているのだろう。

「みんながアクセスしづらい食材だったり、一回の食事でいろんなものを同時に食べられるのがレストランの魅力。そして、常に飽きさせないことをするのが、レストランの仕事」。そう言い切る森枝シェフの背中が、さらに大きく見えた。

(文・取材/植木祐梨子)

<メニュー>
おまかせコース 7,000円
ペアリング6種 4,000円
※ 価格は全て税抜

Salmon & Trout(サーモン&トラウト)

住所
〒145-0032 東京都世田谷区代沢4-42-7
電話番号
080-4816-1831
営業時間
18:00~深夜2:00
定休日:月曜日を中心に計6回
ぐるなび
ぐるなびページhttps://r.gnavi.co.jp/e0wz75tf0000/

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※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。