プロが教える「クッキーレシピ」最大のコツとは? 意外なテクニックがサクホロ食感を作り出す
プロが教える「クッキーレシピ」の最大のコツとは?プロが実践するレシピは、簡単なのに驚くほどおいしい!「バターを冷たい状態のまま混ぜる」「小麦粉にアーモンドパウダーを加える」「クッキー生地を極力さわらない」などコツを守るだけで、簡単に絶品クッキーが作れます!洋菓子レッスンは半年待ち、各メディアで大活躍中の洋菓子研究家・たけだかおる先生の秘伝メソッドとこだわりレシピを大公開します!(バレンタインにも)
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- Summary
- 1.人気洋菓子研究家が教える、ホンモノの洋菓子レシピ
2.だれでも簡単にプロの味が作れる! 最高においしい「バタークッキー」の作り方
3.焼き上げ前の“バターの温度”がおいしさを左右する!
洋菓子研究家が伝授! 最高においしい「バタークッキー」の作り方
お菓子作りの基本となる「クッキー」。シンプルな材料を混ぜて焼くだけの手軽さから、読者のみなさんも一度は作ったことがあるのでは?
でも実は、レシピ本にはあまり書かれていない「プロならではのコツ」があったのです! それを実践するだけで、いつものクッキーが何倍も何十倍もおいしくなるのです。
今回は、プロのクッキーレシピを教わるべく、新妻グルメライター植木祐梨子が、洋菓子研究家・たけだかおる先生に弟子入り。
たけだ先生主宰の予約がとれないお菓子教室に参加して、とっておきのレシピを教わってきました!
●祐梨子
「先生〜! 今度、夫のお友達の家に遊びに行くことになったんです。手作りのお菓子を持っていきたくて、ササッと作れそうなクッキーを作ろうかなと思って♪」
●先生
「いいですね! クッキーなら大人数でも分けやすいですし、手土産にはぴったりですね」
●祐梨子
「はい♪ でもクッキーって作り方は簡単だけど、固くなってしまったり、風味が弱かったり。レシピ通りに作ったつもりでも、その時々で仕上がりが変わることが多いんですよね…」
●先生
「うーん。それはもしかしたら、バターを泡立て器ですり混ぜすぎたり、生地を触りすぎたりすることが原因かも」
●祐梨子
「え!? “バターは泡立て器でしっかりとすり混ぜましょう”って、レシピ本によく書いてありますよね?」
●先生
「たしかに、すり混ぜることで空気が入って食感がよくなるというメリットもあります。でも混ぜすぎると、空気を抱き込んでサクっと口どけがよくなることと引き換えに、バターの味がダイレクトに伝わらず、風味を感じにくくなることもあるんです」
●祐梨子
「それは知らなかったです! どうすれば、バターの香りを残しつつ、サクサクの食感に仕上げることができるのでしょう?」
●先生
「サクサクでバターの香りたっぷりのクッキーを作るためには、守ってほしいポイントがいくつかあります! さっそく説明していきますね」
●祐梨子
「はい、よろしくお願いします!」
■押さえておきたいポイント3つ
1.冷たいバターを使うこと!
2.小麦粉にアーモンドパウダーを加えること!
3.クッキー生地を触りすぎないこと!
[point1]冷たいバターを使うこと!
●祐梨子
「先生、冷たいバターを使うとはどういうことでしょうか? いつもクッキーを作るときは、常温に戻したバターを白っぽくなるまで泡立ててから、粉や砂糖と混ぜ合わせていたのですが……」
●先生
「その方法も間違いではありませんが、バターの風味をより感じるためには“冷たいバター”を使うのがオススメです!
たしかに、常温にしてゆるめたバターをすり混ぜて空気を抱き込むと、クッキーは口どけの良いサクサク食感になりやすいです。でも空気を含ませた分、バターの香りがダイレクトに伝わらなくなってしまうんですよ」
●祐梨子
「バター自体に空気を含ませると、風味が弱くなってしまうんですね。でも、冷たいままのバターは固いので、他の材料とうまく混ぜ合わせることができないですよね?」
●先生
「はい。そこでオススメなのが、 “フードプロセッサーを使うこと”なんです!」
●祐梨子
「なるほど! フードプロセッサーなら、冷たいままのバターでも、撹拌(かくはん)することで他の材料と混ぜることができますね」
●先生
「そのとおり! 泡立て器の場合は、ゆるめたバターを混ぜることで空気が入ってしまいます。でも、フードプロセッサーなら冷たいままのバターを撹拌できるので、バター自体に空気を含ませることなく、クッキー生地が作れるんです」
●祐梨子
「ゆるめたバターを混ぜるか、冷たいバターを混ぜるか、その違いで空気の入り方が変わって、クッキーの風味に違いが出てくるということですね」
●先生
「そういうこと! バターの味を強調させたい場合は、なるべく空気を抱き込まないようにするのがポイントなんです。
フードプロセッサーを持っていない場合は、泡立て器ではなくゴムベラを使いましょう。その場合、バターは”芯がない状態“くらいのゆるさに留め、溶けるほどゆるめないように注意しましょうね」
[point2]小麦粉にアーモンドパウダーを加えること!
●先生
「さて、バターをきちんと冷やしたところで、粉と砂糖を混ぜ合わせていきます。ここでポイントとなるのが、粉を2種類入れること。小麦粉のほかに、アーモンドパウダーも合わせて加えましょう」
●祐梨子
「たしかに、アーモンドパウダーを入れたら、ナッツの香ばしい風味が加わっておいしくなりそう!」
●先生
「そうなんです。さらに、アーモンドパウダーには油分が含まれているため、焼き上がりの生地が固くなりにくく、サクホロ食感になる効果もあるんです」
●祐梨子
「味も食感も良くなるとは、まさに一石二鳥ですね!」
●先生
「ちなみにアーモンドパウダーには、“皮付き”と“皮なし”があります。どちらの種類を使うかはお好みですが、今回はバターの香りを引き立てたいので、“皮なし”を使いましょう」
[point3]クッキー生地を触りすぎないこと!
●先生
「さて、ここからは一番重要なポイント! サクホロ食感のクッキーを作るために大切な“クッキー生地のまとめ方”について解説しようと思います」
●祐梨子
「生地のまとめ方? バターと粉類を合わせてひと塊にするだけなのに、コツがあるのでしょうか?」
●先生
「意外かもしれませんが、クッキーが固くなってしまったり、風味が落ちてしまう一番の原因は、“生地の触りすぎ”にあるの。
バターと砂糖、粉類を合わせてから、きっちりまとめようとボウルの中で何度も生地を触る人が多いのですが、触りすぎるとバターが溶けて分離してしまうんです。バターの構造上、一度完全に溶けてしまうと、いくら冷やしても元の形状には戻りません。
なので、バターと粉類を合わせるときは軽くまとめる程度に留めておきましょう」
●祐梨子
「“軽くまとめる程度”とは、どのくらいの状態でしょうか?」
●先生
「フードプロセッサーに入れて攪拌していると、バターと粉が混ざり合って全体が黄色くなってきます。そのまま攪拌し続けると、写真のようにゴロゴロッとした大きな塊ができてくるので、その状態になったらラップに取り出してひとまとめにしていきましょう」
●祐梨子
「なるほど! ある程度固まってきたら取り出して、あまり触りすぎないよう“カタチを整える”くらいのイメージで生地を完成させていくんですね」
●先生
「そういうこと! フードプロセッサーで生地をまとめて、成形しながらさらに手でまとめて……と繰り返してしまうと、つい触りすぎてしまうので注意してくださいね」
●祐梨子
「たしかに、型を抜いて…まとめなおして…と繰り返していると、クッキー生地はどんどん柔らかくなりますよね。手の温度でバターが溶けてしまったことが原因だったんですね」
●先生
「それもありますね。あとは、何度もまとめなおした生地は、焼き上がりが固くなってしまうの。それは生地を触りすぎることでグルテンができてしまうからなんです」
●祐梨子
「なるほど! カチカチの固いクッキーができる理由は、そこにあったんですね!」
■クッキーの輪郭をハッキリとさせるには?
●祐梨子
「先生、もうひとつ質問があります! きれいに成形したつもりでも、いざ焼いてみるとオーブンの中で生地が広がってしまって、形が崩れてしまうことがあるんです。これにも原因があるのでしょうか?」
●先生
「もちろん、お菓子作りの失敗には必ず理由があります。形が崩れてしまう原因は、生地内のバターの状態が関係しているの。でも実は、それもフードプロセッサーで解決できますよ!」
●祐梨子
「フードプロセッサーを使うメリットは、バターに空気を抱き込ませないことだけじゃなかったんですね!? フードプロセッサーがクッキーの形にどう影響するのでしょう?」
●先生
「焼いているときに形が崩れるのは、オーブンの中で生地が焼き固まる前に、バターが溶けてだれてしまうことが原因なの。
でも、先ほど説明したとおり、フードプロセッサーなら“バターが冷たい状態”をキープしたまま、クッキー生地を作ることができます。生地内のバターが冷え固まった状態なら、オーブンの中で生地がだれるタイミングを遅らせることができるんです。この写真を見れば、違いがわかるかしら?」
●祐梨子
「本当だ! 左はクッキーの輪郭がぼやけているけれど、右はハッキリしていて綺麗!」
●先生
「生地内のバターが冷たければ、形が崩れる前に焼き固まるので、シャープな輪郭をキープしやすくなる、というわけです」
●祐梨子
「オーブンに入れるときのバターの状態で、こんなにも違いが出るんですね」
●先生
「そして、その効果をさらに高めてくれる簡単なテクニックがもうひとつ。焼き上げる前に、冷凍庫で2時間ほど生地を冷やしておくんです」
●祐梨子
「え~! 冷凍するだけで、こんなに差が出るんですね!」
●先生
「先ほどの原理と同様、常温のままの生地をオーブンに入れるよりも、冷凍して冷やした生地の方が、バターが溶けて生地がだれるタイミングを遅らせることができるからです」
●先生
「ちなみに、焼くときは通常のクッキングシートではなく、メッシュ素材のシートを使っています! 私が愛用しているのは“シルパン”というもの。仕上がりのレベルがぐんと上がりますよ。
メッシュ素材のおかげで油分が下に抜けやすくなって、よりサクサクに焼き上がるんです。また、クッキー生地が横に広がるのを抑えてくれる効果もあります。プロも使っている製菓道具なのですが、洗って繰り返し使えるので経済的でもありますよ」
コツを理解したところで、いざ実践
●祐梨子
「バターの状態が、クッキーの味と形に大きく影響しているとは知りませんでした。クッキーって簡単なイメージだったけれど、意外と奥が深いんだなぁ…」
●先生
「そうなんです。でも、奥が深いからこそおもしろいですよね。それではさっそく、最初に教えた3つのポイントをおさらいしながら作っていきましょう!」
●祐梨子
「わ~とっても楽しみ♪ よろしくお願いします!」
■「バタークッキー」の作り方
■材料(直径45mm、厚み15mmサイズ、約8枚分)
・無塩発酵バター … 100g
・バニラビーンズ … 1/2本
・粉糖 … 40g
・アーモンドパウダー… 30g
・準強力粉 … 120g
・クリスタルシュガー(粒子が大きいグラニュー糖)… 適量
※フードプロセッサーを使用しない場合でも、材料の分量は同じ。
※発酵バターとは、乳酸菌を添加させて作ったバターのこと。日本では非発酵バターが主流だが、ヨーロッパでは発酵バターが一般的。風味豊かな味わいが特徴で、最近では日本のスーパーでも扱われるようになった。賞味期限が短いため、調理後もなるべく早めに食べること。
※粉糖は茶こしで濾してから計量する。粉糖がなければグラニュー糖でもOKだが、粉糖のほうが生地に軽さが出る。なお、粉糖には「①オリゴ糖入り」「②粉末水あめ入り」「③純粉糖」「④コーンスターチ入り」などの種類がある。今回は①~③の粉糖がオススメ。
※薄力粉ではなく準強力粉(フランス粉)を使用するのは、ザクッとした生地感のある食感にするため。
■今回使用したキッチンツール
・フードプロセッサー
・メッシュ素材のベーキングシート(シルパン)
・ギターシート(厚手のしっかりとしたビニールシート。ラップでも可)
・めん棒
・ルーラー2本(15mm角。生地の厚さを均一するために使用する)
・ゴムベラ
・円形の抜き型(今回は直径45mmを使用)
■下準備
・バターは1cm角にカットし、冷蔵庫で20〜30分冷やしておく。(冷凍庫の場合は10分程度。これ以上冷やすと、バターが混ざるまでに時間がかかってしまうため)
・粉糖、準強力粉、アーモンドパウダーはふるって合わせ、冷凍庫で1時間くらい冷やしておく。(粉類が温まっていると、バターの温度が上がって溶けやすくなってしまうため)
- ポイント
- ・ナイフの背でバニラの鞘をなぞって中身を端に寄せると、種を取り出しやすくなる。
・残ったバニラの鞘は、乾燥させて砂糖の入ったタッパーに入れておくと、「バニラ風味の砂糖」として活用できるのでオススメ。
- ポイント
- ・バターが粉類に混ざり、全体的に黄色くなってくる。攪拌し続けると徐々に大きな塊ができる。
・バターが溶けると焼き上がりの形がキープできなくなってしまうため、フードプロセッサーで攪拌する際は短時間で。
- ポイント
- ・クッキー生地には直接触らず、ギターシートの上からまとめていく。ラップでもOKだが、ギターシートの方が表面にシワができにくいため、綺麗に仕上がる。
・生地内のバターが溶けないよう、触りすぎに注意。
② バニラビーンズを取り出し、バターに合わせる。
③ ②に粉類を合わせ、ゴムベラでバターの水分を分散させるように混ぜていく。
- ポイント
- ・生地の両サイドを15mm角のルーラーで挟み、その上からめん棒で形を整える。横幅をクッキー型の直径に合わせることで、効率よく型抜きすることができる。
- ポイント
- ・焼く前に冷凍して生地温度を下げることで、焼き上がりのクッキーの輪郭が綺麗に出る。
・バットを逆さにして使うと、生地が取り出しやすい。
・両隅の余ったギターシート(ラップ)は折り込んでおく。
- ポイント
- ・型抜きは生地に対して垂直に、手の平を使って押す。生地が固いため、手のひらが痛い場合はキッチンペーパー等を挟む。
・型からはずすときは、人差し指と中指の腹を使ってまっすぐに生地を押し出すようにする。
「型から生地をはずすのが難しい〜…」
●先生
「型からはずすときは、生地がゆがまないように、型抜き全体をクルクルと回しながら抜くとやりやすいですよ」
●祐梨子
「なるほど! 型を回しながら押せば、均等に力が入りますね」
●先生
「型を抜いたら、その都度、型をキッチンペーパー等で拭くようにすることも、綺麗に仕上げるポイントです。残りの生地はバターが溶けないように、手早くまとめ直しをしましょう。その際はこねすぎないようにね」
- ポイント
- ・小さめの器に砂糖を入れ、そこに生地側面を軽く押し付けるようにしながらまぶすと作業がしやすく、無駄がない。
(電気オーブンの場合は、余熱の温度をさらに10〜20℃高めにし、180℃で12分、向きを変えて8分程焼く)
- ポイント
- ・冷たい生地を入れることでオーブン庫内の温度が一気に下がるため、余熱は高めにしておく。オーブンの火力が弱い場合は、温度を上げる以外に、生地の厚みを薄くしたり、サイズを小さくするなどの調整を行うと良い。
「こんがりと綺麗な色に焼けました~! バターとバニラの香りがすごいっ!」
●先生
「厚さもあるし、輪郭もハッキリしたクッキーができましたね♪」
「はい! 先生に教わったポイントを守るだけで、本当にお店のようなクッキーが作れました♪ 厚焼きなのにサクッとホロホロで、バターの香りが濃厚で、もうおいしすぎて感動……!」
「それはよかった♪ バターの香りをもっと際立たせたい場合は、準強力粉を120gから100gに減らすこともオススメですよ。
生地が緩くなる分、クッキーの輪郭は若干崩れやすくはなりますが、バターの香りはかなり増します! わたしは圧倒的に100gで作った方が好みかな」
●祐梨子
「たった20gなのに、そこまで味が変わるんですね! 刻んだチョコを入れてもおいしそうだし、いろいろな楽しみ方ができそう!」
「基本を押さえておけばアレンジしやすいので、とっても重宝するレシピでもありますね。
例えば、爽やかに仕上げたいときは、レモンの皮を削って入れるのもオススメです。レモンの皮を入れる場合でも、その他の材料の分量は変える必要がないので安心してくださいね」
●祐梨子
「レモンの皮を入れるなんてとってもおしゃれ! 今日教わったレシピにレモンの皮を追加するだけなら、とっても簡単ですね。夫のお友達の家に持っていくのは、プレーンとレモンの2種類にしようかな」
「いろんなアレンジを試して、お気に入りを見つけてくださいね!
次回のレッスンはベイクドチーズケーキ。ワンランク上に仕上げるためのコツを伝授しますよ」
●祐梨子
「次回も楽しみ! よろしくお願いします♪」
取材・文/植木祐梨子、写真/岡本寿
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