地球環境を考えた「サステナブルシーフード」の魚がおいしい! 世田谷で『BLUE』が日本初の試み

片岡力也

Summary
1.日本初の「サステナブル(持続可能)シーフードレストラン」が世田谷にオープン
2.サステナブルな食材は地球に優しいだけでなく味や安全性も高い
3.イギリス人も驚くクリスピーな「フィッシュ&チップス」は必食

日本で初めてMSC認証・ASC認証を取得した魚のみを調達する「サステナブルシーフードレストラン」

世界で近年多くの関心を集めている「サステナブル」。Sustain(持続)とable(可能である)、つまり「持続可能な」という意味で、広く地球環境に配慮した取り組みがそう呼ばれている。「サステナブル」という言葉がまだ聞き慣れない日本は、世界と比較すると残念ながら出遅れていると言わざるを得ない。

2014年、国際自然保護連合(IUCN)により太平洋クロマグロが絶滅危惧種II類に指定されたのはご存知だろうか。クロマグロだけではない、日本に流通するマグロのうち、半数以上の種類が絶滅危惧種に指定されているという。

日本が誇る和食、寿司の中でもマグロは最も人気のある食材の一つであり、その消費量は世界でも群を抜いて日本が多いが、世界中に飛び火した和食ブームで消費量がさらに増えたことによる捕獲量の増加が原因であろうといわれている。マグロだけでなく、我々日本人が愛してやまないウナギもまた絶滅の危機にあるというのが現状である。

そんな“危機的状況”にあることに衝撃を受け「魚の消費量の多い日本こそ行動を起こさないといけない」と、北欧では既に広く取り入れられている「サステナブルシーフード」に注目したのが、オーナーの松井大輔さんだ。

松井さんは、MSC(海洋管理協議会)とASC(水産養殖管理協議会)という国際的な認証を取得した魚のみを調達するという、日本初の『サステナブルシーフードレストラン BLUE』を、2017年5月に世田谷の千歳烏山に開店、9月にはリニューアルオープンをしている。

MSC認証は、水産資源を必要以上に獲ることを防ぐために、適切に管理された環境で水揚げされた天然の水産物に付けられ、ASC認証は、地域社会に配慮した環境で養殖された水産物に付けられる。つまり、天然の魚のみでなく、養殖の魚にも配慮した環境に優しいレストランなのである。

サステナブルシーフードの特徴を最大限に活かした絶品料理

一番人気は「BLUE特製フィッシュ&チップス」(写真上)。この特徴的な形はインスタ映え狙いというわけではい。通常タラを使用する料理だが、ここではサステナブル認定されたスケソウダラを使用。一般的なタラと比べるとうまみは強いが、身がやや薄いのが特徴だ。

そこで「カダイフ」という主にトルコ料理で使われる麺を巻いて揚げ、歯ごたえとボリュームを増すことで、食べごたえあるフィッシュ&チップスに仕上げている。添えた2種のソース(コリアンダーソース、タルタルソース)は手作り。フレンチレストランでの修業経験を生かし、タルタルソースは材料のマヨネーズとピクルスまで自家製という。

「シーフードの濃厚アメリケーヌソースドリア」(写真上)のメイン食材であるオーストタイガーというエビは、持続性を高めるために資源管理を徹底して漁獲されたもので、身が厚く味も濃厚だ。

この濃厚な味を生かすために、チーズは少なめ。オーストタイガーのみでなく、北海道産ホタテ、スケソウダラももちろんサステナブル認定されたものを使用している。

世界中で需要が高まっている魚のひとつ、カツオを使った人気メニュー「鰹のポキ with 半熟卵」(写真上)。宮城県の一本釣りされたカツオが使われている。巻き網漁で釣ると魚は損傷を受けやすい。また品質が著しく低下したものは捨てられてしまうという。よって一本釣りのカツオの方が鮮度は高く味も良い。必要最低限の魚のみを捕獲することは、結果的に品質も高めているのである。

サステナブルな食材は地球に優しく、味もいい!

飲食店に何を求めるかというアンケートを取ると、北欧ではトップ3にサステナブルであるか否かという項目が入り、日本では味やコスト、安全性などが上位にランクインするという。
実際「サステナブルシーフード」は味やコスト、安全性はどうなのか。実は『BLUE』で提供しているメニューはこの全ての項目において、通常のシーフードに引けを取らない。

「サステナブルシーフードの特徴は乱獲や早期収穫をしないこと。つまり魚にストレスをかけず、しっかり成長したものが市場に出回るんです。また、認定されるには徹底した品質管理が必要になるので、品質は高く味も通常の魚より良くなりやすい。問題はコストです。管理にコストがかかるため、仕入れ値に影響してしまうので、そこは企業努力で解決しています」と松井さん。仕入れ値が高くなる分、知人の管理する、都心から少し外れた千歳烏山という立地に店を開くことで、経費を徹底的に抑えた。人件費や、PR活動にも様々な工夫を施している。

まだまだ浸透しているとは言えないが、日本でも『BLUE』の成功事例をもとにサステナブルレストランが増え、みんなが環境を大切にしながら食を楽しむ世界がやってくるかもしれない。

撮影:榊智朗


【メニュー】
BLUE特製フィッシュ&チップス コリアンダーソース&タルタル 1,000円
シーフードの濃厚アメリケーヌソースドリア  1,200円
鰹のポキ with 半熟卵 900円
※価格は全て税別

サステナブルシーフードレストラン BLUE

住所
〒157-0061 東京都世田谷区北烏山9-2-4
電話番号
03-5969-8558
営業時間
11:30~14:00(LO.14:00) 、18:00~24:00 (LO.23:00)
定休日:月曜
公式サイト
公式ページhttps://www.blueseafood.jp

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。