おいしい「ドイツワイン」の選び方をワインナビゲーターが伝授!ポイントは常識やレッテルに縛られないこと

みんな大好き「お酒」だけれど、もっと大人の飲み方をしたいあなた。文化や知識や選び方を知れば、お酒は一層おいしくなります。シャンパーニュ騎士団認定オフィシエによる「お酒の向こう側の物語」
#ドイツワイン

Summary
1.レッテルや常識に縛られない! 「ドイツワイン」選び
2.ドイツワインの“いま”を知るなら「ナーエ」に注目!
3.「ナーエ」のワインはここが違う! 3つのポイント

レッテルや常識に縛られない! もっと楽しい「ドイツワイン選び」【ワインナビゲーター・岩瀬大二】

一度貼られたレッテルを剥がして、本来の価値を示すのは難しい。ワインの世界はいまだに昔のレッテルや常識がなんの検証もないまま、何のアップデートもされていないまま生き残っているというケースが多く、それが、ワインを楽しむことを妨げてしまっている要因の一つのようにも思える。

「肉には赤、魚には白」、「赤ワインは常温で」。いつ、だれが、どのような考えをもって作った常識なのか? ということは関係なく、無条件に受け入れ、楽しみ方をストップしてしまっている。赤ワイン、冷やして楽しみましょうよ。マグロに赤、豚肉に白、楽しいでしょう?

「ドイツといえば甘い白」はまさにそのレッテル。この「ドイツは甘い白ワイン」という定説は、その昔(30年~40年ほど前)、日本ではワイン全体としてやや甘口のものがよく飲まれている時期があって、その際、ドイツの一部の銘柄が日本でよく飲まれ、その時の記憶から、ドイツワイン全体が甘めの白ワインという印象が日本では定着したというもの。

もちろん良質で甘やかな白はドイツワインの得意技なので、間違った認識ではない。でも、このレッテルだけで多様なドイツワインを閉じ込めてしまうのは実にもったいない!

ドイツでいま最も注目したい、「ナーエ」のワイン

さあ、ここからが本題だ。僕がドイツワインの喜びを表現するとすれば、「伸びやかで美しい酸」と「可憐で濃密なアロマ」の融合。凛とした芯の強さと逆に包容力とも言いたくなる優しい表情。驚くほどの気品と、柔らかい涙がこぼれそうな素朴な笑顔、その両面が自然に溶け込む。

これは主にドイツが世界に誇るリースリング品種の特徴でもあるが、甘い白から、ドライな白、芳醇な赤、そしてスパークリングワインまで共通のものとも言える。この多彩さや相反する魅力の融合は、ドイツのワイン産地が持つ複雑で多様な土壌と密接にかかわるもの。ひと言でドイツワインといっても産地によってそのキャラクターも変わる。

北部に位置し赤ワインの王国とも言われる「アール」、燦々(さんさん)と注ぐ陽光が芳醇さを生む「バーデン」、カジュアルなタッチながら静けさも称える白ワインの「フランケン」、世界の最高峰であるリースリング品種の王国「モーゼル」や「ラインガウ」など魅力的な産地は数多い。その中で、僕が「レッテル剥がし」として注目しているのが「ナーエ」という地域だ。

フランクフルトから車で1時間30分ほど西へ。日本のサッカーファンにはおなじみになった武藤嘉紀が所属、かつては岡崎慎司もキャリアを積んだFSVマインツ05 の本拠地マインツを過ぎたあたりに広がるエリア。広がるといってもドイツのワイン産地の中では極小といってもいい。しかも1971年に独立した新しい生産地域だ。この地をなぜ面白いと思ったのか。理由は3つある。

まず、土壌の多様さと複雑さだ。小さなエリアではあるが、火山岩、スレート(粘板岩)、ライムストーン、粘土、石英、砂岩……と、その組み合わせも含めて180のタイプの違う土壌があるという。ワインの個性を決める一つはやはり土壌ということになるので、これだけタイプが違えば様々なキャラクターのワインが生み出されるのは必然だろう。

そして2つめ。宝石箱ともラボとも言われる多様な土壌を生かして、「ナーエ」では意欲的な生産者が多彩なチャレンジをしている。古くからワインは造られていたが1971年に独立したということもあり進取の意欲も高い。ブドウ品種の生産割合においては王道リースリングは29%にとどまり、ミュラー・トゥルガウ(13%)、ドンフェルダー(10%)、ピノ・グリ(8%)、ピノ・ブラン(7%)、ピノ・ノワール(7%)、シルヴァネール(5%)、以下ドイツで著名なもの以外にも多数の国際品種への挑戦もすすんでいる。「ナーエ」でワインを選べばショーケースのように多彩なキャラクターを楽しめるのだ。

そして、3つめ。ここが肝心。

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