イタリア全20州の料理を巡る!? 四谷三丁目『オステリア・デッロ・スクード』が早くも予約困難の兆し
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- 1.シェフは広尾『インカント』を10年で一流レストランへと飛躍させた凄腕
2.3カ月半~4カ月ごとにイタリア全20州の料理と食文化を巡る
3.在日イタリア人が絶賛! シェフが作るのはイタリアの伝統を継承し未来へつなぐ料理
日本のイタリア料理界の実力者、小池シェフが夢を形にした店をオープン
四谷三丁目の交差点から5分ほど歩き角を曲がると、驚くほど静かな住宅街になる。ここに、2018年3月にオープンしたばかりで連日賑わいを見せていると話題の『Osteria dello Scudo(オステリア・デッロ・スクード)』がある。
シェフは小池教之さん。広尾『インカント』のオープン時からシェフとして携わり、押しも押されもせぬ有名店へと飛躍させ、10年経った区切りの年に卒業。いよいよ自身の店をスタートさせた。
クリームイエローの壁、真っ白なテーブルクロス、温かみのある木の椅子がイタリアの田舎にあるレストランを思い起こさせる。そのせいか、こちらには在日のイタリア人がしばしば訪れる。そして「故郷と同じ味!」と驚きと絶賛の声があがる。
それもそのはず、小池さんは3年間でピエモンテ州、トレンティーノ・アルト・アディジェ州、プーリア州、シチリア州、カンパーニャ州、ウンブリア州を渡りながら修業し、イタリア全20州の伝統料理を学んだ。休日は高級なレストランではなく地元の人が食べている“本当のイタリア郷土料理”を食べ歩き、知れば知るほどイタリア料理の奥深さに魅了されたという。
だからシェフは日本にいながら「イタリア現地の情景を伝えたい!」と、メニューは約3カ月半ごとにテーマとなるひとつの地域の料理と地酒に絞り込み、5~6年かけてイタリア全州を巡るという、驚きのスタイルにした。同店オープン時はヴェネト州の料理でスタート、そして6月からはイタリアの南西・カラブリア州の料理だ。
▲カラブリア州。ブーツに喩えられるイタリア国土の“爪先”にあたる地域。
カラブリア州の中でも山側と海側、北と南では食材も調味料も違うため、少しずつメニューの内容を変え深く掘り下げていくという。メニューブックの冒頭にはテーマとなる州の食文化が紹介されているので、ぜひ一読したい。
カラブリア料理と言えばペペロンチーノ(唐辛子)を使った辛い料理が有名だが、韓国や東南アジアの料理の強い辛さとはまったく異なり、唐辛子の香りとうまみを重視する「辛うま」が特徴だ。
代表的な「ンドゥーヤ(Nduja)」は豚の赤身と脂、唐辛子を練ってペーストにし、豚の腸に詰めて燻製にした伝統食材。ピッツァにのせたり、調味料にしたりとそのままでもおいしくいただけるくらいの辛さである。さらに同じ唐辛子でもンドゥーヤではなくシラスの唐辛子漬け発酵調味料・ロザマリーナを使う地域もあるそう。これはなかなかおもしろい。
ひとつの店がイタリア全20州の料理をとことんまで掘り下げた新しいスタイルに大絶賛
さて、カラブリア州を巡ることにしよう。
まずは前菜の海辺の街チロマリーナをイメージした「ロザマリーナ風味の蛸とジャガイモ ケッパーのインサラータ チロマリーナ仕立て」(写真上)から。弾力のある蛸、ほっくりとしたジャガイモ、ケッパーの酸味が見え隠れする。辛さと言えば少し口に残る程度だ。その辛みの正体は、ドレッシング代わりにしたロザマリーナ。伝統料理である発酵したシラスのうまみが食材をふわっと包み込み海を感じるひと皿に。
プリモピアットの1品目は「燻製をかけた豚肉とリクイリツィアのオルツォット」(写真上)である。こちらは世界一と謳われるカラブリア産のリクイリツィア(甘草)の香りが主役。煮詰めてパウダー状にしている。オルツォットとは大麦のリゾットのような仕立てのこと。粘りがなくさらりとした仕上がりになる大麦は、燻香がしっかりのった豚の脂の甘みを増長させる。それぞれ個性のある食材が一緒になることにより生まれるハーモニーで完成する。
プリモピアット2品目はチヴィタの伝統料理であるカプレット(仔山羊)のトマトソースパスタからヒントを得た「アルバニア由来のパスタ“シュトゥリーデリャ”仔山羊のラグー チヴィタ風」(写真上)。シュトゥリーデリャはさぬきうどんのような食感のパスタ。手でしごき伸ばしたランダムな太さがソースをよく絡める。唐辛子の粉の辛みがピリっと効いたトマトソースと仔山羊独特のチーズの酸味がストレートに伝わってくる。
料理に合わせたのは同じくカラブリアのコゼンツァの山のワイン「テヌテ フェッロチント マリオッコ」(写真上・左上)。色調は深紅だが味は軽やかでタンニンもしっかりあり、仔山羊の脂との相性が抜群である。地酒×地元の料理でその土地を感じてほしいとのシェフの想いから、やはりカラブリアのワインを合わせている。テーマの州のワインの層を厚くするため、中心となる価格帯のものはその州のものにすべて入れ替えるといったこだわりよう。
メインは「鹿スネ肉のストゥファート アスプロモンテ風」(写真上)である。アスプロモンテ国立公園地域の伝統料理で香味野菜もヴィネガーもたっぷり。
野菜と一緒に蒸し煮した鹿がものすごくやわらかい。調理法としてはシンプルの極みなのだが、下ごしらえに手間ひまをかけ、食材から出たうまみが凝縮されたスペシャルな皿である。
私の料理はイタリアの伝統料理を未来へつなぐための料理である
前職の『インカント』は、常に20州の料理を一堂に揃えた店で、まさにイタリア料理の博物館のようだった。よって、どうしても各州の代表的な料理が軸となり、各地域を深く掘り下げることができないことに、小池シェフはジレンマを感じていたと話す。
ひとつの州だけに絞ることで今まで知らなかった世界が広がる。例えば今回のカラブリア州。カラブリア=唐辛子というイメージが強い故に、唐辛子以外の食材はほとんど知られていない。しかし同じ州でも代表的な「ンドゥーヤ」を食べないどころか唐辛子を食べない地域もある。20州全土を何度も食べ歩いた小池シェフだから、このイタリアの地域性の豊かさを表現できるのだ。
「イタリアに存在している料理ではなく、イタリアの料理を作っているのです。ただそれも時間とともに変化していくものでもあります。私は未来の料理を作っているわけではありません。今、この時点で受け継がれてきた料理を磨き込んで未来へつなぐために作っているのです」とシェフは言う。
ここには本当のイタリアを感じられる良さがある。シェフの“食べ歩いたからわかるイタリアの知られざる話”もぜひ聞いてほしい。ゆっくりとイタリアを旅するように、この店の料理とその先にある未来を楽しみたいものだ。
撮影:八木竜馬
【メニュー】
MENU 4 PORTATE(全4品のコース) 5,500円
MENU 6 PORTATE(全6品のコース) 6,500円
MENU DELLO PORTATE(シェフお任せコース)※要予約 8,000円~
※価格はすべて税別
Osteria dello Scudo
- 電話番号
- 03-6380-1922
- 営業時間
-
月~金ディナー18:00~21:30(L.O.)/月・水ランチ12:00~13:30(L.O.)/土12:00~19:00(L.O.)
定休日:毎週日曜日 ※他月1回
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
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