六本木フレンチ『ル スプートニク』の繊細な料理に心躍る!バラに見立てた「意外な食材」は感動のおいしさ
六本木の隠れ家的なフレンチ『ル スプートニク』をご紹介。シェフは『ミシュランガイド パリ 2019』三つ星の『パヴィヨン・ルドワイヤン』や、『オーグードゥジュール ヌーヴェルエール(現在は閉店)』などで研鑽を積んだ実力派。フレンチのほか、ブーランジェリー、パティスリーで修業したシェフが作る料理は前菜からデザートまで逸品ぞろいです! ぜひ予約して訪れたい一軒です。
- レストラン
- 六本木
- フレンチ
- ワイン
- 東京
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- Summary
- 1.フレンチ、ブーランジェリー、パティスリーで修業したシェフゆえ、前菜からデザートまで抜かりなし。六本木フレンチ『ル スプートニク』
2.名作「フォアグラ・ビーツ・薔薇」をはじめ、手の込んだメニューは見た目の美しさも圧巻
3.テーブルの上で仕上げる「動きのある」メニューも楽しい
舌の記憶は一生ものだ。
おいしいものに出逢った感動は時を経ても色褪せないし、新しい味を覚えると昨日よりおいしい料理を作りたくなる。
大学卒業後、料理の道を歩みはじめる
食べることが大好きな両親のおかげで子どものころから味覚が鍛えられ、大学を卒業するころには、食べ歩きの趣味が高じてグルメ関係の出版社への就職を志望していたという、『ル スプートニク』の高橋雄二郎シェフ。
就職活動をするなかで料理人の道へと方向転換することを決め、まずは料理上手だった母に料理のいろはを教わった。
フレンチ、パティスリー、ブーランジェリー。異なるスタイルの店を渡り歩いて「自分に足りないスキル」を磨き続けた
ほどなくして大学を卒業すると、地元・福岡の調理師専門学校に入学。
そこでフランス料理の華やかさに惚れ込み、上京して都内の有名店で3年半修業を積むや、さらに上を目指して本場フランスへと向かった。
最初に入店したのは、18世紀から続き、『ミシュランガイド パリ 2019』でも三つ星の評価を受けたフランス料理の『パヴィヨン・ルドワイヤン』。
ここで、当時のパリにおける最先端のテクニックを学んだ後は、プライベートで食事に訪れた際、おいしさに感動したという町場のビストロ『ラミジャン』で調理全般を担当することとなる。
しかし、それでもまだ飽き足らない。
門外漢であったパンやお菓子の作り方を基礎から学びたいと、今度はパリ市内のブーランジェリー『メゾンカイザー』へ入店。
「渡仏の目的は、自分に足りないものを補うことだった」と自身が言い切る通り、不足している技術を次々と身に付けることに注力し続けたのだ。
そしてフランス時代の最後の修業先に選んだのは、パティスリー『パンドシュクル』。
朝6時から夜10時までみっちり働き続けたが、給料は満足のいく額ではなかったため、週末には焼肉屋でのアルバイトも続けながら帰国への準備を進めていた。
帰国後は東京都内の人気フレンチでシェフを務めたのち、2015年に独立
そんな最中出逢ったのが、後に東京・丸の内のフレンチ『オーグードゥジュール ヌーヴェルエール(現在は閉店)』のシェフとなる宮崎慎太郎氏だった。
彼が同店でのスーシェフを探していると聞いて自ら志願したことで、帰国後の働き先が決定。
連日満席の人気店で2年ほど腕を振るった後、東京・代官山『ル・ジュー・ドゥ・ラシエット(現在の『レクテ』)』のシェフに就任したが、当時は、同時期にフランスで修業していた料理人たちがメディアでも台頭している真っ盛りの時期だった。
料理の味やオリジナリティの追及にさらに熱が入ったと同時に、独立への想いも高まっていった。
かくして、2015年7月、東京・六本木に自身の店『ル スプートニク』をオープン。
フランス料理の基礎を大切にしながらも、自分らしさをふんだんに盛り込んだ料理を生み出し続ける毎日がスタートした。
季節の恵みたっぷりのアミューズは、器にもユーモアを
料理は、ランチ、ディナーともにコースのみ。季節の恵みたっぷりのアミューズ(写真下)は、一品ずつ異なる器に盛りつけられており見た目もユニーク。
1週間熟成させた甘鯛でマリネしたキュウリを巻いた一品(写真上・右上)は、熟成によってうまみ成分のアミノ酸が数倍に増えているため豊潤な味わい。
塩をしてよく揉んだ聖護院かぶで作った澄んだスープ(写真上・右下)は、滋味たっぷりで身体がじわりとあたたまる。
黒ゴマの土台にどっかりと構えているのは、ふきのとうのチュロスと紫サツマイモのコルム(写真上・左下)。
中には、豚の血で作ったブータン・ノワール(シャルキュトリーの一種)のムースが詰め込まれており、黒ゴマを付けながら食べると何層もの異なる食感や味わいを楽しめる。
海苔のチュイール(薄く焼き上げたもの)にマグロと茄子のタルタルを詰め込んだ一品(写真上・左上)は、磯の香りが鼻から抜ける心地よさも圧巻だ。
「その場の思い付きで作ったものでも、イケる! と思ったらお客さんに出すことがあります。営業中であっても、『こっちのほうがおもしろい』と思ったら、初めて作ったものでもその場で出すくらい」と躊躇がないが、それゆえお客さんの驚きも大きいに違いない。
優美なスペシャリテの正体は、フォアグラとビーツ
シグネチャー的存在として君臨するメニューは、茹でてからピューレにしたビーツに砂糖類を足し、薄く焼き上げて形成したチュイールを花びらに見立てた「フォアグラ・ビーツ・薔薇」(写真下)。
土台となるフォアグラに、薔薇の香りを移した赤ワインとルビーポルト(酒精強化ワイン)で作ったゼリー状のシートをのせ、その上に一枚一枚丁寧にチュイールを敷き詰めているのだ。
「リピーターのお客さまには、必ず違うメニューを出すと決めています。新しいメニューを考える過程で、ビーツのチュイールが映えるメニューはどんなものだろう? と試行錯誤したところ、真っ赤な色を活かして薔薇に見立てることを思い付いたんです」。
「実は、最初はフォアグラとビーツをミルフィーユのように交互に重ねることを検討していたのですが、ビーツのチュイールが水分に弱く、納得のいく食感にならなくて。軽やかな食感を最大限に活かせる今のスタイルに行き着きました」。
繊細な花びらに手を付けるのはしのびないが、美しい薔薇を身体に摂り込む喜びはひとしおだ。
鹿肉の火入れには、想像をはるかに超える手間とこだわり
常連客から予約が入ることも多い蝦夷鹿(えぞしか)は、特に柔らかいモモの部位、シンシンを好んで使用。
ジン(蒸留酒)の香りづけにも使われるスパイス「ジュニパーベリー」とともにマリネした後、鉄分が多い鹿に火が入り過ぎてレバーっぽい食感になることを避けるため、独自の調理法でローストしている。
その調理法とは、「熱伝導率が低いステンレス製の鍋に肉を投入してから低温のオーブンに入れ、1分たったら取り出す」を10回程度繰り返した後、グリル板で表面に焼き色をつけるというもの。
ふっくらジューシーに焼きあがったシンシン(写真上)は、フォークで少し触れるだけでも、プルンとした柔らかさが伝わってくる。
鹿の血でつないだ赤ワインベースのソースとも相性抜群。付け合わせの紫タマネギ、低温のオーブンで半日かけて乾燥させたブドウと交互に食べるのもまた一興だ。
端に添えられているのは38年物のローズマリー。肉とともにローストされているため、スモーキーな香りも合わせて楽しめる。
テーブルの上で仕上げる、幻想的なデザートに魅せられる
樹々の上に舞い散る軽やかな初雪を思わせる「いちごとココナッツとパスティスのジュレ」(写真上)。
テーブルに運ばれた後、液体窒素で粉末状にしたフェンネルとライムのアイス2種が散らされ、その瞬間、煙がフワッとお皿一面に広がるロマンチックな一品。
「スモークをかけたりソースで溶かしたりと動きをつけることができるのは、レストランならでは。コースの中にはいくつか仕込んでいますね」と高橋さん自身も楽しそうな表情。
食を通して、国内外問わず幅広く活動していきたい
アミューズからデザートまで、一品一品にかける熱量が突き抜けていることこの上ないが、「お客さんに、『おいしかった』『楽しかった』と言ってもらえることがなによりうれしいし、その言葉が原動力となっています」と笑顔を見せる高橋さん。
「目標は常にあります。今年は海外や地方のシェフともっと一緒に仕事がしたいし、食を通して精力的に活動していきたいですね」。
そう語る高橋さんにとって、独立はゴールではなくスタートに過ぎない。
修業時代と変わらず、一つの目標の次にはさらなる飛躍への階段が待っている。その気持ちを忘れない限り、人はきっと生涯成長し続けられるのだろう。
撮影:野坂茉莉絵
【メニュー】
・ランチ 6,500円
・ディナー 12,000円(11皿)/16,000円(13皿)
※消費税別途、要サービス料10%
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです
ル スプートニク
- 電話番号
-
03-6434-7080
(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
- 営業時間
-
火~日
ランチ 12:00~15:30
(L.O.13:00)
ディナー 18:00~23:00
(L.O.20:30)
定休日:月曜日
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
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