新鋭調理テクノロジーで日本料理はこう変わる! 赤坂に誕生した『マガリバナ』の革新的な日本料理とは
- レストラン
- 赤坂
- 日本料理
- イノベーティブ
はてぶ - LINE
- Summary
- 1.革新的な日本料理店『マガリバナ』が話題沸騰中!
2.コンセプトは日本料理の伝統と西洋の最新調理機器との融合
3.実験的な『マガリバナ ラボ』のメニューが斬新で興味津々!
若いチームによる革新的な日本料理店の誕生
かつてこのような日本料理店があっただろうか。2018年12月にオープンした『マガリバナ』が提供するのは、古くから受け継がれてきた日本料理の「伝統」と西洋の最新調理機器の「技術」が融合した革新的な料理だ。
この扉の向こうには未だ経験したことがない味覚の世界が待っている。外からのうまみを足す西洋料理を作るための機器を自然の素材の味を生かして調理する日本料理にどう使うのだろうか。
季節によって多少変動はあるが、おまかせのコースは12品前後。メニューには1品ごとに主役となる食材だけが記されている。
「若いチームだからできたこと」と話すのは石田元也料理長(写真下)。石田さんが28歳、ホール担当25歳、オーナー30歳と確かに若い。経験が少ないことに眉をひそめる人もいるが、若いからこそ今までにない発想だったり、型破りな調理法が生まれたりするのである。
そして彼らによって誕生したのが伝統的な日本料理を最新調理機器による技術で調理した新しい「日本料理」だ。
最新調理機器による食材の変化がすごすぎる!
現在こちらの店で駆使するのはスチームコンベクションオーブン、急速冷凍機、ガストロバック(減圧加熱調理器)である。
これら3つの「技術」を使ったのが刺身に添えた野菜だ(写真上)。ガストロバックでかつおだしを染み込ませる。すると生野菜はまるで漬物のように変化するのだ。
ガストロバックで減圧することによって食材の色や栄養分を損なわずにスポンジ状態となり、だしや調味液が浸透しやすくなるので食感や味、香りなどの特徴が強調される。例えばわさび菜は辛みが倍増するし、食感もシャキシャキするというわけだ。
かつおだしもコンベクションオーブンで温度管理を徹底し、劣化しないようだしを引いた直後に急速冷蔵をかけている。何年も何十年も積み重ねてやっとのことで手に入れる“技術”があっという間にできてしまう最新調理機器のすごさを体験した。
茶もガストロバックを使うことで可能性が広がる。温度によって浸出する香味成分が異なる茶の性質を利用し、低温で甘みとうまみを、さらに低温では出しづらい香りまでも強調した茶を淹れることができる。煎茶をいただいてみるとスッキリとしているのに最後に甘みと香りが残る。これが冷茶でできるとは驚きだ。
桜鱒は塩焼きにし、大根おろしとすだち、木の芽味噌でいただく(写真上)。「桜鱒はパサつかず芯をレアにするために温度管理を徹底できるスチームコンベクションオーブンを使っています」と石田さん。生ではないギリギリの温度まで熱を入れ、最後に皮目だけ炭火で焼いた桜鱒のしっとり加減は想像以上だ。味噌の味が強い木の芽味噌は桜鱒につけることで、なじんでやわらかな風味となる。「伝統」と「技術」の融合の瞬間を味わった。
肉は赤身を好んで使うことが多い。こちらは赤身の中でも硬めである北海道十勝産の短角和牛のカメノコウ(写真上)。
かみごたえを楽しんでいると低温調理で閉じ込めたうまみがじわじわと現れる。ソースはまろやかでとろみがあり和牛とともに喉を通ると田楽味噌のような甘さが印象に残る。
デザート(写真上)は焼いた安納いも、きなこのアイス、そしてガストロバックを使ったフルーツを盛り合わせる。やはり興味をそそるのはフルーツだ。イチゴにはリンゴ酢をきかせた赤ワインソース、リンゴにはカラメルソースとシナモンを入れる。
不思議だ。このひと口サイズからいくつもの味が湧き出てくる。リンゴは「タルトタタン」と錯覚するほどだ。この食感と風味を出すのはガストロバックにしかできない技なのである。
若く勉強熱心な料理人が開く新しい日本料理の世界
石田さんの料理歴はまだ浅い。大学を卒業して6年間の会席料理店での修業のみである。遅すぎたスタートによるハンディキャップは誰よりも努力することで補ってきた。徹夜で勉強し、朝早く築地の魚屋に行き捌き方や良いものを見極める方法を教えてもらった。時間があれば気になる店を食べ歩いて勉強する。料理長となった今でも“料理”ができているとは思っていない、それはお客さまが決めることだと話す。
誰からも調理法を教わったわけではない。文献や論文、研究データ、情報などからどの技術が必要なのかを考察し、最新調理機器を使って温度は1度、湿度は1%単位で試作を重ねて最高の料理に仕上げる。おいしいという基準は人それぞれではあるが、誰もがおいしいと思えるように追求し仕込んだ食材は嘘をつかないのである。
コンセプトに合わせた内装も必見だ。どこにいても映し出される鏡は空間を広く感じさせ、最新技術でカットされたテーブルは継ぎ目も美しい。空調で料理を乾燥させないようにとテーブルに暖房機器を取り付け、足元だけを暖かくできるようにしている。奇をてらう新しさではなく伝統を重んじた新しさなので心地良い。
またこの店にはもうひとつの顔がある。それが『マガリバナ ラボ』だ。コース料理の『マガリバナ』に対して『マガリバナ ラボ』はアラカルト。最新機器を駆使した伝統的な日本料理は同じだが、ラボというだけあってより実験的だ。
スチームコンベクションオーブンの最適温度でイクラを加熱し半熟にした「温かい半熟イクラおろし」やガストロバックで鶏だしを浸透させた後にフライにした瑞々しい「新じゃがフライ」など、興味深いメニューばかり。『ラボ』の開催日はSNSで発信している。
食材を最高の状態で提供するために最適な技術は何かを考え、それを安定して供給するには最新機器がベストなのかもしれない。ただし石田さんはその技術に頼っているだけではない。最新機器を使いこなすためには機械の特徴を覚え、独自のプログラムを細かく設定したりと大変な努力をしている。
また食材の生態環境を理解しなければどの機器を使えば良いか判断ができないので毎日の研究も欠かさない。こうした日々の鍛練によって新しい世界が開けるのである。年月をかけ修業を積み重ねる日本料理の世界で、食材に真摯に向き合い終わらない探究心を持つ若い料理人が挑戦できるこの店は日本の料理界の未来を明るくするだろう。
撮影:佐々木雅久
【メニュー】
ディナーコース 12,000円
GV煎茶250ml 500円
GVほうじ茶250ml 500円
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税抜です
※別途、サービス料10%
マガリバナ
- 電話番号
- 050-3466-7260
- 営業時間
-
18:00~23:30(L.O.21:00)
定休日:不定休日あり ※4月4、7、10、14、17、21、24、28日
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
はてぶ - LINE