舌の記憶に残る確かな一皿。敏腕イタリアンシェフの新たな世界・外苑前『ブラマソーレ』

有川美咲

Summary
1.都内イタリアンの名店『トラットリア シチリアーナ ドンチッチョ』出身シェフが独立!
2.シチリアを中心にイタリア全土の料理をラインナップ
3.料理を主役として捉えた、居心地のよいシンプルな内装も魅力

都内イタリアンの名店出身シェフが独立、外苑前『ブラマソーレ』

東京メトロ銀座線・外苑前駅より徒歩5分。イタリア・シチリア料理の名店『トラットリア シチリアーナ ドンチッチョ』出身の高橋健太さんが独立してオープンした一軒がある。『BRAMASOLE(ブラマソーレ)」だ。

お店の特等席は、ライブ感溢れるカウンター席。L字カウンターの角の内側には、揚げ物用の鍋を設置する。「天ぷら屋さんを参考にした」と高橋さんが言うように、よくあるイタリア料理店とはまた違った雰囲気で食事を楽しむことができる。

イタリア全土の料理を、シンプルかつ自由に

高橋さんは料理専門学校卒業後、千葉・船橋のオステリアで修業を積み、イタリアへ渡る。

「北イタリアのボローニャを中心に、南イタリアまで全土を巡りました。その土地や、そこにいる人々ならではの魅力を感じながら、6年間イタリアという国の多彩な郷土料理を学びましたね」と高橋さん。

帰国後は東京・渋谷の『トラットリアシチリアーナ ドンチッチョ』に5年在籍後、系列店である『アンティカ・トラットリア シュリシュリ』の立ち上げから入り、料理長として5年従事した。

イタリアンにどっぷり浸かった経験を活かしつつ、より自分らしい自由な料理をと、2018年12月13日に『ブラマソーレ』で独立を果たしたのだ。

「品数の多いコース料理は、提供された瞬間は驚きがありますが、食べ終わってしまうと記憶から抜けていることも多いと思います。それよりも素材が見えたり、シンプルで誰でも作れそうだけど、食べてみるとどこよりもおいしかったりといった、印象に残る料理を目指しました」と話す。

高橋さんが提案する料理は“イタリア好きのためのイタリア料理”。長年修業を積んだシチリア料理はもちろん、北イタリアの郷土料理など地域をまたいだ料理を展開する。
ではさっそく、その世界を見ていこう。

シンプルだけど奥深い料理の数々

まずはお通しとして、シチリアのストリートスナック「パネッレ」(写真上)。ファーストドリンクの提供に合わせ、揚げたてアツアツで供される。
ちなみにドリンクは炭酸系が望ましい。「パネッレ」が、スパークリングワインやビールといった、しゅわっとしたアルコールと相性抜群なためだ。

表面はサクっと、なかはクリームチーズのようなとろりとした食感。絶妙な塩加減と、ふわりと軽い口当たりは、何個でも食べたくなるほど。

「パネッレ」とは、ひよこ豆の粉と水、タマネギ、ニンニクを火にかけて鍋で30分練って固め、揚げたもの。味付けは塩のみとシンプルだ。シチリアではラードやひまわり油で揚げるが、同店ではより軽さが出るよう、米油を使用している。

メインには「鮮魚のロースト サルモリッリオ(レモン・オレガノソース)」(写真上)を。これは淡白な白身魚に、清涼感のあるソースを合わせた魚料理。

ぶつ切りにした魚に塩、コショウ、小麦粉をまぶし、表面を焼き固めた後、オーブンでじっくりと火を入れる。これにより、皮はプリッと、身はふっくらとした食感に仕上がる。

ソースはレモン果汁に、シチリア産のフレッシュなオーガニックオレガノ、ニンニクオイルを合わせたもの。ふわりとした白身魚を口にすると、たちまちオレガノの爽やかさが口いっぱいに広がる。

「フレッシュなオレガノはドライオレガノとは異なり、豊かな香りが特徴です。そこにレモンの爽やかさをプラス。夏場はより清涼感を味わっていただくため、ミントを加えます」(高橋さん)

扱う魚は季節によって変わるが、取材時は北海道産のカジカを使用。北海道や静岡・沼津港から直送される、旬の鮮魚を使用する。
骨ごとぶつ切りにする豪快さにより、うまみが詰まった骨周りの身まで楽しむことができる。

珍しい食材を使って印象的なパスタに

高橋さん自慢のパスタ料理も、ぜひ味わってほしい一品。店内で自家製する生パスタは、4~5種類を揃えており、その日によって内容が変わる。

「鶏のレバー・ハツ・トサカ・胸肉ラグー カンネッリ」(写真上)は、鶏のトサカを使った珍しい一品。これは高橋さんがボローニャで働いていたときに学んだ料理だという。

ラグーソースにはレバー、ハツ、トサカを使用。臭みのないこれらの食材がコクを生むため、濃厚なソースに仕上がっており、コラーゲンもたっぷりだ。

パスタには自家製カンネッリを使用。くるくると巻いた細長いパスタには、ソースがよく絡む。ソースの香りづけに使用するマルサラ酒が、コクや渋みのある赤ワインとの相性を高めている。

ラグーソースは香味野菜、レバー、ハツ、鶏胸肉を炒めマルサラ酒で香りづけ。そこに下茹でしたトサカとゆで卵の黄身を入れ、カンネッリと和え、仕上げにペコリーノ・ロマーノチーズをかける。

「トサカという食材は味の想像も容易ではないので、きっと印象に残る一皿になるでしょう」と高橋さん。今はゆで卵の黄身でコク出しをしているが、今後キンカン(内臓卵)やモミジ(鶏足)などの食材を使い、より珍しさを追求していく予定だ。

大人のデザートにも魅力たっぷり

デザートにはチョコ好きのためのチョコレートスイーツがおすすめ。

「チョコレート フラン(フォンダンショコラ)」(写真上)は、生地にカカオ64%のチョコレートを、なかにホワイトチョコレートを混ぜたソースを閉じ込めた一品。
スプーンを入れた瞬間、とろりととろけ出すチョコソースからは、濃厚で甘い香りが漂う。

ふわりと軽い生地からは、しっかりとカカオが感じられる。甘さだけでなく、チョコレートの苦みを楽しめる、大人のデザートに仕上がっている。

「お客さまがどういったチョコレートを食べたいのかを考え、お客さまごとに味を変えられるよう努めています」(高橋さん)。

料理に集中できる、あえてシンプルな空間

海外にあるイタリア料理店をイメージしたという内装は、白壁に白のクロス、無垢材のカウンターというシンプルなデザイン。

イタリアの雰囲気をあえて感じさせず、カトラリーや器、料理でイタリアを感じてほしいとの想いを込めている。

余計な装飾をそぎ落とすことで、客も料理を味わうことに集中できる空間になっている。また、程よい広さでカジュアルな雰囲気なので、ふらっと立ち寄ったり、気軽に通ったりもおすすめだ。

ディナーはアラカルトオーダーもできるが、コースがおすすめ。お客のニーズにこたえるよう、おまかせで4~6皿を提供する。

「通っていただくほどに料理の好みを知ることができるので、その方に合わせた味付けで提供していきます」と高橋さん。
常連になることで自分だけの一皿を提供してもらえるプライベートレストラン、ぜひとも通い詰めたい。

【メニュー】
パネッレ(お通し)
鮮魚のロースト サルモリッリオ(レモン・オレガノソース) 200g 2,400円
鶏のレバー・ハツ・トサカ・胸肉ラグー カンネッリ 1,700円
チョコレート フラン(フォンダンショコラ) 700円

BRAMASOLE(ブラマソーレ)

住所
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前3-42-5 スピナッチヒル1F
電話番号
03-6434-0615
営業時間
ランチ予約制、ディナー17:30~23:00
定休日:日曜、祝月曜
公式サイト
公式ページhttps://www.instagram.com/bramasole_insta/?hl=ja

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。