イタリアンはずばり郷土料理がウマい! 本場シチリア料理づくしの『シチリア屋』【白山】
特集:イタリア郷土料理
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- 1.ピザやパスタだけじゃない! 個性あふれるイタリア郷土料理の世界【特集・イタリア郷土料理】
2.日本人向けアレンジなし! 地元民が愛するシチリア料理を再現、白山『シチリア屋』
3.シンプルこそシチリア料理の極意、滋味豊かな食材の醍醐味を堪能する
旅するように楽しみたい「イタリア郷土料理」の奥深い世界
「イタリアにはイタリア料理というものは存在しない」という言葉がある。150年ほど前までは都市国家の集合体だったイタリアは、南北に長いという地理的条件もあって、それぞれの地域で独自の文化が育まれてきた。このため、そこで生まれた料理も一括りにはできないほど食材も調理法もバラエティに富んでいる。
近年、東京でも、イタリア料理という大きなカテゴリーではなく、郷土料理にフォーカスした店が次々に誕生。グルマンたちの熱い視線を浴び、人気を博している。
地元の人々に受け継がれてきた料理を忠実に再現
イタリアの一番南に位置するシチリアは、“地中海の十字路”とも呼ばれ、ギリシャ人、アラブ人、スペイン人、ノルマン人など多様な民族に征服され、影響を受けたことで、独特の食文化が形成された。多様な文化を受け入れ、脈々と受け継がれてきたシチリア料理の魅力を楽しめる店が、今回ご紹介する『シチリア屋』だ。
『シチリア屋』は2014年、東京・白山にオープンして以来、現地さながらのシチリアの郷土料理が楽しめる店として、イタリア料理ファンから圧倒的な支持を集めている。その人気の秘密は、オーナーシェフである大下竜一さん(写真下)のあふれんばかりのシチリアへの想いが詰まった料理にある。
イタリア料理を志し、2度目のイタリアでの修業先として選んだのは、シチリアだった。ミラッツォという港町のレストランで働きながら、自転車でシチリアを一周。自然や人々と触れ合う中で、昔から受け継がれてきた郷土料理に出逢い、感銘を受けたという。
帰国後、レストランで学んだ料理だけでなく、シェフや地元の人々から教わった郷土料理も伝えようと『シチリア屋』をオープン。現地とできるだけ同じ食材を使い、味を忠実に再現した味わいは、一度食べるとトリコになるほど唯一無二の魅力にあふれている。
料理
シチリア料理
特徴
『シチリア屋』の魅力は、「シチリアセット」と名付けられたコースに凝縮されている。突き出し、ミニスープ、前菜(2品)、パスタで構成され、シチリアの名物料理だけではなく、現地でもなかなかお目にかかれない、マイナーな田舎料理まで、大下シェフならではシチリア郷土料理ワールドがそこにある。
「沖縄料理だと、ゴーヤチャンプルーやソーキそばなど有名な料理はすぐに思い浮かぶと思いますが、現地で食べられているフーチバー(琉球よもぎ)などの料理は知られていません。シチリアにも、レストランにはないけれど、現地の人たちが昔から食べている料理がたくさんあります。そんな料理のおいしさをぜひ紹介したいと思いました」(大下シェフ)
メニューには見慣れぬ名前もあるが、滋味豊かな味わいの料理はしみじみと心に響くものばかり。そんな『シチリア屋』の料理の世界を紹介しよう。
シンプルだからこそ奥深い! 『シチリア屋』の田舎料理
▲フィノキエット団子
『シチリア屋』と聞いて、多くの人がその名を挙げる料理が「フィノキエット団子」だろう。フィノキエット、パン粉、卵、ペコリーノチーズといった材料を合わせて手で団子にし、一度揚げてからトマトソースで煮て、松の実とレーズンをトッピングする。現地のレストランでもほとんどお目に掛かれないマニアックな料理だ。
フィノキエットとは、野生のフェンネルとして紹介されることが多いが、ふくらんだ茎の根元を使うフェンネルとは種類が異なり、葉の部分のみを使う。日本人には馴染みが薄いが、シチリアでは、雑草のように野山に自生し、料理に欠かせない野菜の一つ。同店では、希少な西洋野菜を作り続けている千葉県の『エコファームアサノ』から取り寄せている。
ナイフを入れると、心地よい爽やかな香りと共に、みっしりとフィノキエットが詰まった断面が現れる。パン粉や卵はほんの繋ぎ程度で、別名“草団子”と呼ばれるほど、潔いくらいフィノキエットだけで作られている。
塩味をきかせた酸味の少ないトマトソースが、フィノキエットのほんのりした甘さを引き立て、熟成されたうまみを持つペコリーノチーズがコクをプラスしている。しっとりしたフィノキエットのクセのない優しい味わいと爽やかな香りで、素朴ながら心に残るおいしさだ。
▲鰯とフィノキエットのブカトーニ
「パスタ・コン・レ・サルデ」と呼ばれるイワシとフィノキエットを使ったパスタは、シチリアを代表する料理の一つ。シチリアで手に入りやすい食材、イワシとフィノキエットをおいしく食べるために生まれた料理だ。
地域によってソースにトマトやサフランを入れたりするが、大下シェフのレシピは、修業先であるミラッツォのレストランのものを再現。イワシ、フィノキエット、オリーブオイル、レーズン、松の実、タマネギでソースを作り、味付けは塩とオリーブオイルのみとシンプルに仕上げている。
こちらにもフィノキエットがたっぷり。イワシの濃厚なうまみやレーズンの甘さが、絶妙な塩加減で際立ち、渾然一体となったソースは、飽きることがない。松の実の食感によるアクセントも楽しい。ソースをパスタにたっぷり絡めて、口いっぱいに頬張りたくなる。
▲経産和牛のピッツァイオーラ
皿の真ん中に盛られた目玉焼きが目にも楽しい料理は、大下シェフが修業したレストランの人気メニュー。『シチリア屋』ではアラカルトで用意されている。
こちらの料理は、シチリアの郷土料理ではなく、チュニジア人の同僚が作っていた「シャクシュカ」というトマトソースと目玉焼きを合わせた料理をヒントに作られたもの。大下シェフにとってシチリアでの思い出が詰まったメニューだ。
「ピッツァイオーラ」とは、ピザ職人風という意味。生のトマトを刻み、イタリアンパセリ、オリーブオイルでソースを作る。通常、オレガノを入れるのだが、イタリアンパセリを使うのが修業先のスタイルだったとか。このソースに、柔らかい赤身の経産和牛を入れて煮込む。
絶妙な火入れの和牛は、ナイフがスッと入るほど柔らかい。酸味と塩気もしっかりときいたトマトソースは、目玉焼きを絡めるとまろやかに。肉質が細かく、マイルドなコクの経産和牛との相性はぴったりだ。
▲カンノーロ・シチリアーノ
シチリアの伝統的なドルチェ、カンノーロ。薄いパイ生地を筒状に丸めて揚げ、中にリコッタチーズのクリームを詰めている。両端に、シチリアではポピュラーなオレンジピールとくるみをトッピングしている。
このスイーツが同店に登場したのは、つい最近だという。味の決め手となる羊のリコッタチーズがなかなか手に入らなかったためだ。生地も、シチリアで食べたものと同じ食感にこだわり、現地から取り寄せている。
現地よりも甘さを控えめにしたリコッタチーズのクリームは、牛で作るものよりさっぱりとしていて、コクがある。サクサクとした皮とフレッシュで軽やかなクリームのコントラストが魅力的だ。
ワインの品揃えも、もちろんシチリア産にこだわっている。人気は「エトナ・ロッソ」。シチリア島東北部にあるエトナ火山周辺で栽培される「ネレッロ・マスカレーゼ」などシチリア固有種のブドウで作られるワインだ。
この地域は、最高のワインを作る産地として、近年、世界的に注目されている。火山灰による独特の土壌で育ったブドウから作られるワインは、溢れるような強いミネラル感がある。
料理の根幹をささえる“シチリア料理のメソッド”
現地の味をそのまま再現することにこだわってきた大下シェフ。近頃は、徐々に“自分流”のおいしさを表現するようになったという。その際、ブレないように心掛けているのが、自身で確立してきたシチリア料理のメソッドだ。
それが「塩」と「オリーブオイル」。シチリア料理では、味付けは極力塩とオリーブオイルにとどめ、素材の持ち味をストレートに生かすことが魅力のひとつ。このため塩とオリーブオイルは料理全体の味わいを左右する重要な役割を果たす。
こちらの塩(写真上)は、シチリア、トラパニ県のエガティ諸島のもの。トラパニは、昔ながらの塩田を使った方法で作られる天然海塩の有名な産地。天日干しでじっくり時間をかけて作られた塩は、ミネラル分が豊富で、しょっぱさに尖りがなく、素材の味を引き立てる名脇役となっている。
オリーブオイル(写真上)は、調理用と仕上げ用と2種類を使い分けているが、どちらもシチリア産。シチリアのオリーブオイルは、香りが高く、フルーティで、重すぎないのが特徴。食後感も軽やかだ。
その他、フィノキエットや、乾燥そら豆、シチリア、トラパニ地方伝統のパスタ、ブジアーテ(写真上・左)など、シチリアならではの食材にこだわるのもメソッドの一つだ。
とことん現地の味にこだわったシチリア郷土料理を食べに行こう
同店は、都営三田線・白山駅もしくは春日駅から徒歩7~8分。白山通りから一本入った路地裏にある。
店内に入ると真っ先に鮮やかなブルーの壁が目に飛び込んでくる。大下シェフが訪れたシチリアの離島のレストランをイメージしているとか。席数はテーブル席15席、カウンター5席。
お薦めは大きな天然木を使ったカウンター。皿を何枚も並べられるくらいのスペースがあり、シェフから料理にまつわる話を聞ける特等席だ。
21時までは「シチリアセット」(月替わり)と「シェフのお任せコース」(前日までに要予約)に、お腹に余裕があればセコンドやドルチェを追加するスタイル。21時以降はアラカルトも楽しめる。
「シチリア料理のメソッドからブレないように、日本の食材などを使って、これもシチリア料理だよと胸を張れるような料理を作ってみたいですね」と語る大下シェフ。今も年に一度はシチリアを訪れて、シチリア料理の世界を探求し続けている。これからも『シチリア屋』の料理から目が離せない。
▲大下竜一シェフ プロフィール
1976年埼玉県生まれ。東洋大学哲学科卒業後、飲食業界に入る。都内チェーン店(ベリーニカフェ)でイタリア料理を始め、2年目にイタリアに渡り、ブレシア(ロンバルディア州の都市)のミシュラン二つ星店やフィレンツェのピッツェリアで修業。1年半の修業を終えて、帰国した後もイタリアへの興味は変わらず、再びイタリアへ。自分の性格とスタイルに合うと判断して1年7カ月シチリアで修業。帰国後、『シチリア屋』をオープンする。
【メニュー】
シチリアセット 4,000円
シェフのお任せセット 6,500円
経産和牛のピッツァイオーラ(2~3人前) 4,200円
カンノーロ シチリアーノ 800円
グラスワイン 700円~
※21:00以降アラカルトのみも可
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税別です
シチリア屋
- 電話番号
- 03-5615-8713
- 営業時間
-
火~金 18:00~23:00(L.O.22:00)/ 土・日・祝 12:00~14:00(L.O.13:30)、18:00~23:00(L.O.22:00)
定休日:月曜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
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