無我夢中で食べ尽くしたい! 錦糸町から新たな「中国料理」旋風を巻き起こす『SOUTH LAB 南方』
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- 1.中華ファンが既に大注目! 香港料理の新しい可能性を体感できる、錦糸町『SOUTH LAB 南方』
2.中国・香港を知り尽くしたプロデューサーと一流店を渡り歩いたシェフによる最強タッグ
3.東南アジアで食べられている香港料理を独自にブラッシュアップさせた料理が愉しめる
香港料理をより洗練させた“香港キュイジーヌ”が体感できる
これまで香港料理専門店といえば、屋台料理を中心にしたカジュアルな料理を提供する店が多かった。しかし最近注目されているのが、香港料理を洗練させた“香港キュイジーヌ”だ。
2018年に高級店出身のシェフが手掛ける『ティム・ホー・ワン』『福全徳』が、2019年3月には“香港の隠れ家レストランの女王”と呼ばれるグレース・チョイさんの店『CHOY CHOY KITCHEN』がオープン。そして2019年6月4日、錦糸町にオープンしたのが『SOUTH LAB 南方(サウスラボ みなかた)』だ。
JR錦糸町駅の北口から徒歩3分。フレンチレストランのようにスタイリッシュな外観は、居酒屋だらけのエリアにあって圧倒的に人目を引く佇まいだ。通りを歩く人のほとんどが、大きな窓を不思議そうにのぞきこんで行く。
香港料理の新しい可能性を探るラボラトリー(研究所)
店内も、中国料理店とは思えないモダンな作り。同店をプロデュースした著名フォトグラファーの菊地和男さんは香港料理に精通していることでも知られ、香港の食に関する書籍も数多い。青山の人気中華料理店『楽記(現在は閉店)』では“名誉厨師”だった。
香港を代表する料理として筆頭に挙げられるのは広東料理だが、この店で提供するのは広東州東部にある潮州(ちょうしゅう)からインドシナ半島に渡り、ベトナムやカンボジアに移住した人たちが伝承・発展させた香港料理だという。
「東南アジアでも愛されている香港のソウルフードをブラッシュアップし、そのエッセンスを伝えたいと考え、この店を作りました」(菊地さん)
そんな“香港料理愛”あふれる菊地さんとタッグを組んだシェフはCHAM CHI KWONGさん(写真上)。日本人では発音が難しいため「トミーさん」の愛称で呼ばれている。
五つ星ホテル「アイランド シャングリ・ラ 香港」の『夏宮』や『福臨門酒家』(現:『家全七福酒家』)など一流中国料理店で腕をふるってきた凄腕シェフだが、そうした華麗なキャリアを意識させない、温かく親しみやすい方だ。
▲入口近くには香港料理で使用されるレモングラスやガパオ、カイランなどの珍しい野菜が並べられており、購入も可能
盛りだくさんのコースで、珍味や伝統の味を堪能し尽くす
菊地さんは、香港への渡航が200回を数え、通算滞在は1,200日を超えるという”香港の達人”。そんな菊地さんが考案したメニューと聞けば、自然と期待も高まるはず。
コース料理は6,500円、8,000円、10,000円の3種類。内容は仕入れによって変わり、以下はある日の6,500円コースの一部だ。
黄ニラと貝柱のスープ「韮王揺柱羹(ガウオンユウチューガン)」(写真上)。高級食材を惜しみなく使い、8時間煮込んだスープ上湯(ショントン)は濃厚ながらすっきり上品なうまみが詰まっている。
鮮烈な記憶となるに違いないのは、鶏白子のペースト揚げ「鶏子戈渣(ガイチー)」(写真上)。
白子は成長したオスの鶏の精巣だが、実は非常に入手しづらい部位。また、一羽からふたつしか取れない上、サイズも小さいため、一定の量を集めるのは非常に困難。その希少な白子を新鮮なうちに蒸してペーストにし、卵黄を上湯とコーンスターチで伸ばしたベースに加えて時間をかけて練り混ぜ、1日かけて冷やし固めた後、衣をつけて揚げる。聞いただけで気が遠くなりそうな手のかかりようだ。
最初に感じるのは、羽根のように薄く軽い衣のサックリ感と芳ばしさ。続いてとろりと濃厚な食感が突如あらわれ、絶妙な塩加減とともに溶けていく。ゆるいカーブを描くような味わいの変化があり、はかなさとともに舌にしっかり残る不思議なうまみもある。驚きに満ちた一品だ。
この料理は、白子が仕入れられた時は予約なしでも食べられるが、仕入れられない時は予約しても食べられない。事前に電話して確認し、確保できる日を選んで予約を入れるのがオススメ。是非とも食べていただきたい一品だ。
南方風海老しんじょう「生煎蝦餅(サンチンハーペン)」に続いて登場したのは、パクチー100%のパクチーサラダ「南方香菜沙律(ランフォンシャンツァイサーリ)」(写真上)。
トッピングはパクチーの根の素揚げで、葉の部分とは異なる香りと甘みがあり、パクチー好きにはたまらない味わい。ワインビネガーとクミンにエシャロットを加えたドレッシングが、パクチーの強い風味によくマッチしている。
登場した瞬間に目が釘付けになる鳩の醤油煮「鼓油鳩(シーヤオガップ)」(写真上)。丸のままの鳩をリコリスというハーブや八角を使った自家製醤油に漬け、12時間ほど湯煎して仕上げる。
肉はとろけるようにやわらかく、噛みごたえのある皮にからまった醤油は、どこかエキゾティックな香り。手づかみで夢中で食べてしまう。
これに牛肉ガパオ、揚げ卵麺炒め「干焼伊麺(ゴンシュウイイミン)」、デザートの「杏仁豆腐」と「マンゴープリン」の2種盛りが続いて終了。これだけ刺激的な料理が11品で6,500円とは、なかなかお値打ちである。
香港料理の真骨頂を味わえる、スペシャルなアラカルト
コースももちろんいいが、『SOUTH LAB 南方』の真骨頂はアラカルトにある。
南方風潮州カルパッチョ「南方潮州魚生(ランフォンチューチャオイサン)」(写真上)は、厚めに切ったイサキの刺身をヤマイモ、オクラ、キュウリ、セルバチコというハーブを使ったペーストとよく和え、上から辛みのきいたトマトソースとオイルをかけたもの。
多彩な食材が混ざり合い、ひと噛みごとに異なる味と食感があらわれるのは、まるで万華鏡のよう。イタリア料理にありそうな一皿だが、潮州に昔からある料理だという。
蓮の葉包みご飯「南方荷葉飯(ランフォンフォーイーハン)」(写真上)は、干し貝柱などの具がたっぷり入った五目飯を、蓮の葉でくるんで蒸しあげたもの。葉を開いた瞬間に、蓮の香りが広がり、食べごたえも十分だ。
香港料理といえばこれ! 身と皮のコントラストも楽しい「鶏の姿揚げ」
香港料理店では丸のまま吊るされている鶏をよく見るが、これは香港料理の代表といわれる鶏の姿揚げ「脆皮炸子鶏」(チョイペイジャーガイ)を作るためのものだ。同店では、龍崗鶏(ロンコンガイ)という種類の広東産のメスの若鶏を使用している。前述の「鼓油鳩(シーヤオガップ)」と似ているが全くの別物。
軽く茹でてから香辛料を塗って数時間も陰干しておいた鶏を低温で下揚げし、注文が入ってから滝のように熱い油をかけまわして火を通していく。
数分間にわたり、全体が均等な狐色になるまで、付きっきりで何度も熱い油をかけまわす。この手間が、外はパリパリで中がレアな焼き上がりに欠かせないのだ。たまらなくおいしそうな、芳ばしい香りが立ち上がってくれば完成。焼きあがった丸鶏を大きな包丁ですばやく豪快にカット。そのスピード感にも思わず見入ってしまう。
香港料理の代表ともいえるクリスピーチキン「脆皮炸子鶏」(写真上)は、3日前から予約が必要。半羽から注文できるが、できれば大人数で一羽を注文し、さまざまな部位をたっぷり味わって欲しい。
▲ちなみにトミーさんのおすすめは、下側に盛られている背中の肉(写真上・手前)
断面を見ると、脂の色が濃い黄色でクリーム状と分かる。こってりしているように見えるが脂のくどさは皆無で、鶏らしい甘い香りと濃厚なうまみが凝縮されている。皮のパリパリ感はもちろんだが、肉は、箸で持つだけで肉汁が滴るほどしっとりしていてやわらかく、噛めば噛むほど力強いうまみが湧いてくる。
「この味は、龍崗鶏でなければ出せません。脂の香りも肉質も皮も、ほかの鶏とはまったく違うんですよ」(菊地さん)
これぞ香港家庭料理!「鹹魚肉餅(ハムユイヨッペン)」の香り高さに悶絶
「鹹魚(ハムユイ)」と呼ばれる塩漬け魚を乗せた蒸しハンバーグ「鹹魚肉餅(ハムユイヨッペン)」(写真上)は家庭でも作られるが、どんな料理店にも必ずある定番メニューだという。
ハムユイは、香港・中国沿岸・台湾でよく食べられる発酵させた干し魚で、菊地さんによると「うまみの塊ですね。魚の形をした発酵調味料のようなものです」。ただし最近は、中国国内でもこれだけ上質なものはなかなか手に入らないそうで、このハムユイは菊地さんが中国から独自のルートで取り寄せた特別のものだ。
味付けは蒸したときに出る肉汁と中国製のたまり醤油少量のみというシンプルさだが、ハムユイといっしょにくずして蒸し汁ごと食べると、ハムユイ独特の少しクセのある甘い発酵香が口いっぱいにふんわり広がる。
これはまさにご飯のお供! ぜひ「香米(ジャスミンライス)」を併せて注文し、蒸し汁ごとご飯に乗せてかきこんで欲しい。
あえて紹興酒は置かず、ワインとビールで
慣習にはこだわらず”本当においしいもの”を追求する同店のスタイルは、ドリンクにもあらわれている。
小規模の店では品質の保持が難しい紹興酒は置かず、お酒はワインとビールのみ。ワインはナチュールを中心に取り揃えており、どうしても紹興酒が欲しい人向けには「ドメーヌ・ド・モンブルジョ」(写真上・左端)のように、紹興酒のようなコクのあるワインも用意されている。
カラフェに入った中国茶は、茶人としても名高い菊地さんが選び抜いたフェニックス・ウーロン茶。潮州市の鳳凰山で作られ、高級ウーロン茶として知られている茶葉を水出しし、まろやかな甘みを引き出している。
錦糸町から、新しい香港料理を広めていきたい
▲左からキッチンスタッフの近成祐亮さん、CHAM CHI KWONGさん、ソムリエールの近藤杏子さん、マネージャーの吉田朱希さん
現在、アラカルトメニューは20種前後と少なめだが、菊地さんは「今後はメニュー数を増やすのではなく、香港料理の魅力をもっと深く探っていきたい。この店は、そのためのいろいろな試みをする場でありたいです」と語る。
“サウスラボ南方”という店名は、東南アジアにおける香港料理の新たな可能性を探る研究所(ラボラトリー)をイメージしてられているのだ。
錦糸町は、さまざまな国の人が集まる街でもある。この店を起点に、新しい香港料理が世界に広まっていく予感がする。
【メニュー】
コース
6,500円(2名より)、8,000円・10,000円(各3名より)
アラカルト
南方潮州魚生(ランフォンチューチャオイサン)1,300円
脆皮炸子鶏(チョイペイジャーガイ)1羽9,500円/半羽4,800円
鹹魚肉餅(ハムユイヨッペン)1,800円
香米(ジャスミンライス) 200円
南方荷葉飯(ランフォンフォーイーハン)1,600円
ドリンク
ビール 700円~
グラスワイン 600円~
水出し中国茶(450ml) 1,200円
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税別です
SOUTH LAB 南方
- 電話番号
- 03-6658-5299
- 営業時間
-
火~金曜18:00~22:00(L.O.)、土曜12:00~22:00(L.O.)、日曜12:00~21:00(L.O.)
定休日:月曜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
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