本場のスペイン・タパスを食べ尽くす!中目黒の「人気スペインバル」をハシゴ、”本物”のバル文化にハマる
みんな大好き「お酒」だけれど、もっと大人の飲み方をしたいあなた。文化や知識や選び方を知れば、お酒は一層おいしくなります。シャンパーニュ騎士団認定オフィシエによる「お酒の向こう側の物語」
#中目黒の人気スペインバル
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- Summary
- 1.旅酒ライターが巡る中目黒の実力派スパニッシュ
2.スペイン田舎料理がおいしい『バル・ポルティージョ デ サル・イ・アモール』
3.パエリアの可能性を拓く『スペイン料理 パブロ』
【中目黒】実力派スパニッシュを巡る
ここ数年、おススメしたくなるスペイン料理店、スペインバルが増えている。筆者は、MCとして多くのスペイン料理や文化に関するイベントに出演しているが、こうした場でも、その勢いを大いに感じている。実にうれしい話だ。
その中から今回は2つの店を紹介しよう。その2店はともに中目黒にある。いい店が1つのエリアに複数あるというのは実にありがたい。1軒で終わっても、本場のバル文化を見ならってハシゴするのもいい。ハシゴをするなら、違う日には行く順番を変えると見える景色も、楽しさも違う。
本店はアロセリア。『バル・ポルティージョ デ サル・イ・アモール』
1軒目は『バル・ポルティージョ デ サル・イ・アモール』。代官山の人気アロセリア『サル・イ・アモール』のバル形態として2019年5月にオープンした。まず本店となる『サル・イ・アモール』を紹介しておこう。
アロセリアとは米料理のスペシャリストという意味で、本店ではパエリアだけではなく、スペインならではの郷土ごとに多彩な米料理が楽しめる。もちろんそれ以外のスペイン郷土料理も豊富。「スペインにいるように楽しんでいただきたい」ということで、メニュー、味わい、ワインはもちろん、内装、雰囲気までスペインの食堂であることに徹底的にこだわっている。店名は「塩と愛情」という意味。それは料理の味わいというだけではなく、お店のスペインへの愛であり、日本的なアレンジやギミックでごまかさずに、スペイン料理店としてあるべきというメッセージでもある。
その思いをそのままにバルとしてオープンしたのが『バル・ポルティージョ デ サル・イ・アモール』だ。ポルティージョは「小さな扉」という意味。スペインへつながる、スペインの幸せなバルの楽しみが、そこを開けば広がるということだろう。
「40ユーロでいけるスペイン」というメッセージも面白い。バルというと小さい店を想像するが、むしろ代官山の本店アロセリアよりかなり広い空間で、カウンター、テーブルとも使い勝手がいい。
筆者のお気に入りスペースは、入口付近のウェイティングスペース。スペインではこうしたスペースで軽く飲みながらグループ全員が揃ったところでテーブルに着くというのが定番。このスペースで夕方の開店直後にビールやシェリーを1杯というのが実に気分がいい。
窓から差し込むまだ明るい日差しの中で飲む、ちょっとした罪悪感と優越感。これだけで旅気分になるし、そこからカウンターやテーブルに移動すると、それだけでハシゴ気分だ。
無国籍感やアレンジメニューではなく料理は伝統的なスペイン郷土料理が中心。2~3人ならおススメは「名物タパス6種盛り“コンビナード”」(写真上)だ。
鉄板焼き3種を含めたものだが、冷菜から筆者のお気に入りのスペイン料理である「ピキージョピーマンのコンフィ」や魚介と肉もの・揚げ物がバランスよく一皿に。これだけで酒がすすんでしまう“ヤバめ”のプレートだ。
他にも冷製のつまみ中心、揚げ物メイン、肉なし、肉でガッツリなどのバリエーションもある。まさにスペインのバルメニューを知るきっかけ=「扉を開く」ものになるだろう。
本店がアロセリアということでもちろん米料理も充実しているが、うれしいのが「本日のパエリア」だ。毎日同じ時間に炊き上がる日替わりメニューで、一皿ずつでオーダーできる。ふらっと一人で行った時や、いろんな料理を楽しんだので米は少しだけでいい、という時にちょうどいい。バルならではの楽しみ方でもある。パエリアは、日によってフィデウァ(パスタのパエリア)の時もあるので、これも試していただきたい。
バル・ポルティージョ デ サル・イ・アモール
- 電話番号
- 03-6455-2536
- 営業時間
-
ランチ12:00~15:00 (L.O 14:00)、ディナー月~金17:30~22:30(L.O.22:30)、土・日・祝日 17:30~23:00(L.O.22:00)
定休日:第3月曜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
実績も経験も豊富な『スペイン料理 パブロ』
さて、スペインの伝統的な田舎のバルに対してもう1軒は、同じくスペインの伝統は守りつつ、都会のやや若い感じの人が集まるバルという趣か。それが『スペイン料理 パブロ』。オーナーシェフがバルセロナの星付きレストランで修業をしたというところからか、伝統メニューだけれど、都会的な洗練もある。
スペインが誇る美食の街・サンセバスチャンのトレンドにありそうなユニークな料理もありながら、バル的な気軽さもある。ワインのリストは昔ながらの大らかで濃いリオハ系(スペインを代表するワインの生産地リオハ。なめらかなタンニンが特徴)ではなく、軽やかな果実味を楽しめる、言ってみればこれもわりと都会的なものが主軸だ。
こちらのオーナーシェフとはイベントで知り合った。パエリアの世界大会が元祖の地バレンシアで行われるのだが、その日本代表を決める大会。全国から常連、強豪が集まる大会で、これまでも数回行われていて、優勝候補とされるチームがひしめくなか、初挑戦で2位。MCをやっていてジャッジペーパーを見た瞬間の驚きは忘れがたいものがある。
その翌年も僅差の2位。実力を見せつけたのだが、その後、日比谷公園に多くの来場者を集めた「全国タパス選手権」で優勝。審査員が選ぶパエリア選手権と、来場者が選ぶタパス選手権でともに支持されるのだからすごい。
こうした輝かしい実績の一方で、店を一旦クローズ。全国47都道府県を、パエリアを作りながら回るという「冒険」に挑んだ。軽ワゴンにパエリア鍋など機材を積み込み、各地で、パエリア選手権で課題パエリアとなっている、本場のバレンシアーナ(鶏肉やウサギ肉、インゲン豆を使った山のパエリア)と、その地ならではのご当地パエリアの2種類を作る。
少年相撲教室の土俵の横だったり、クリエイターが集まるコミュニティスペースや、ご当地の飲食店でのコラボレーションだったり、人里離れた場所などさまざまな場所でおいしさと笑顔を届けた。武者修業でもあり、人生の経験値をあげる旅でもあり、パエリアの可能性を拓く挑戦でもあったのだろう。
バルセロナの洗練と冒険心。メニュー上のシンプルな料理名からは想像ができない奥行きというか面白さが伝わってくる。ある日の訪問では、定番の「ピンチョスの盛り合わせ」と、スペインのバルと言えばこれ! という「ポテトフライの目玉焼きのせ」(写真上・ぐちゃぐちゃに切り刻むほど混ぜてから食べるのが気分)に加えて、「タラのピルピル」(同・下)をオーダーしたが、これが凄みを感じる一品だった。
ピルピルはスペイン人が、油が弾ける音を表現する言葉。日本人がグツグツと感じる音が彼らはそう感じられるらしい。ひらたくいえばタラのアヒージョということになるが、数十匹のタラのアラが集まらないとできないということで、カスエラ(素焼きの小鍋)の中にそれほどのだしが詰まっているのかという驚きがある。
オリーブオイルとこのだしが乳化、一体化し、複雑でやさしい風味となり、それが絶妙な火入れでしっとり、どっしりとなった厚みのあるタラに絡む。
強い味付けはしていないのだが、実に深い余韻のある味に仕上がっている。軽めの赤ワインもいいし、コクのある白ワイン、さらにビールにも合う。バルの感覚で本格的な料理が味わえる。それがこの店の面白さだ。
この2軒は目黒川と山手通りを挟んで約3分。昔のイメージならライバル店ということになるのだろうが、筆者はそう思わないし、当事者同士もそんなことは持っていないだろう。同じような実力と楽しさがある店がエリアに2店舗あればそれは相乗効果になる。ハシゴもよし、今日はこの1軒と腰を据えるのもよし。そんな関係にある店と街を、今後も紹介していきたい。
スペイン料理 パブロ
- 電話番号
-
050-5487-6152
(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
- 営業時間
-
ディナー 17:00~24:00
(L.O.23:00)
土・日
12:00~24:00
(L.O.23:00)
定休日:不定休日あり
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
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