一人でも行きたい「愛されビストロ」。女性シェフの温かさが街を彩る、幡ヶ谷『オー ペシェ グルマン』
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- 1.フランス修業を経て多ジャンルで腕を磨いた女性シェフによる、幡ヶ谷のビストロ『オー ペシェ グルマン』
2.厳選された新鮮野菜をふんだんに使った料理が魅力
3.日曜限定ランチも必見! ワインとともに、人気メニューが小皿で味わえる
街に溶け込み、愛され続ける小さなフランス料理店
フランス料理と聞いて気後れする人はまだ多い一方で、最近は街に溶け込み、地元民が日常的に訪れる親しみやすいフランス料理店も増えている。
2010年に幡ヶ谷にオープンした『Au Peche Gourmand(オー ペシェ グルマン)』は、まさにそんな店だ。同店は、京王線・幡ケ谷駅と笹塚駅のちょうど中間、どちらの駅からも徒歩5分ほどのところにある。
ドアを開けてまっさきに目に入るのは、中央の小さなオープンキッチンで立ち働くシェフ・吉澤美智子さんの姿。同店の料理はすべて、吉澤さんが一人で作っている。ボルドー(濃い赤)カラーが基調の店内は、カラフルな雑貨も並び、まるで本場フランスのビストロを訪れたような雰囲気だ。
カウンター前には2人掛けのテーブルが2卓、奥には家族やグループ向けのテーブル席もあるので、地元の家族連れや友人グループがわいわい食事していることも多い。
はじまりは、フランスへの憧れ
小さいころから料理好きで、フランスにも興味があったという吉澤さん。「フレンチの料理人になればフランスに行くチャンスがあるかも」と考え、短大卒業後に調理専門学校に進む。
本当なら高校卒業後、すぐにでも入学したかったが、両親からの「大学で学ぶ経験は人生で決して無駄にはならない」という言葉通り、料理以外の学びを得てからのスタートとなった。
進学後は遅れを取り戻すべく猛勉強し、念願のフランス校に進学。ミシュランガイド三ツ星の常連『Georges Blanc(ジョルジョ・ブラン)』での厳しい研修をクリアし、帰国後はフレンチレストラン、カフェ、ベトナム料理店などで経験を重ね、2004年に東京・下北沢にビストロ『レ・リヤン』を開店した。
「働いていたベトナム料理店の近くで行きつけだったカフェが閉店することになり、『3年後に建物を取り壊すけど、それまでやってみない?』と言われたのがきっかけでした。もともと素敵な雰囲気のお店だったため、ほぼ居抜きで開業できることもあり、『3年間楽しめればいい』という軽い気持ちでした(笑)」(吉澤さん)
だが、そんな吉澤さんの料理にはたちまち熱心なファンがつき、『レ・リヤン』は伝説的な人気店となる。小説家の吉本ばなな氏も常連の一人で、建物が取り壊しになった時には閉店を惜しみ、自身の小説「もしもし下北沢(幻冬舎文庫)」の舞台として同店を登場させている。
小説の中で吉澤さんは、主人公が慕うシェフの「みちよさん」として登場し、重要な役割を果たしている。
吉澤さんは『レ・リヤン』閉店後に再びフランスに渡って1年間修業を積み、2010年幡ヶ谷に『オー ペシェ グルマン』をオープンするに至った。
「常連だった方々から『次の店は近くにしてね』と言われていたことと、私自身が下町の出身なので、商店街があって昔からの人が住んでいるような雰囲気のところが落ち着くんです。幡ヶ谷はそれらにぴったりの街でした」(吉澤さん)
「もしもし下北沢」にも登場した野菜サラダに感動!
ビストロ料理が揃う同店だが、そのメニューの特色のひとつが、サラダの多さ。十数種類のメニューのうち、サラダが6種類を占めており、新鮮な季節野菜が多く使われている。
「野菜が大好きなので、つい多く使い過ぎてしまって(笑)。でも、いろいろな野菜が出てきたほうが、食べていて嬉しいでしょう?」(吉澤さん)
「ポーチドエッグの入ったリヨン風サラダ」(写真上)は、ボリュームたっぷりなフランス・リヨン地方のサラダ。同店では、角切りのベーコンのほか葉野菜だけで4種類、さらにブロッコリー、インゲン、キュウリなど10種類前後の旬野菜が同サイズにカットされ、風味豊かなドレッシングで丁寧に和えられている。
ボリュームがあるのに最後まで食べ飽きないのは、新鮮な野菜たちの力強い生命力が、ひと噛みごとに体に染みわたるような気がするからだ。
小説「もしもし下北沢」には、吉澤さんの作るサラダが登場する印象的なシーンがある。
父の死にショックを受け、食べ物の味もわからなくなっていた主人公とその母親が、『レ・リヤン』のサラダを食べた瞬間に味覚が覚醒し、「心は死んでも体は生きている」と気づかされるのだ。
このサラダを味わうと、その感覚が理解できるような気がする。
塩がしっかり効いた「テリーヌ」で、ワインが進む!
「私の料理は、塩がしっかりしている男っぽい料理だとよく言われます」と吉澤さん。それを実感したのが、このテリーヌ。
「鶏白レバーのテリーヌ」(写真上)。鶏白レバーは、フォアグラと同じように脂肪をたっぷり蓄えたレバー。濃いうまみ、なめらかでねっとりした質感が特徴だ。
運ばれてきた瞬間からブランデーのような芳醇な香りがただよい、期待が高まる。
ふくよかな甘みもあるが、塩味もしっかり効いていて、間違いなくワインがぐいぐい進む味。喉を通り過ぎた後、口の中にハーブの香りがふんわり広がり、それがワインの香りと溶け合うと、たまらなく幸せな気持ちになる。この店を訪れたらぜひ味わって欲しい逸品だ。
こだわりの肉料理にも、野菜がたっぷり!
「シャラン産鴨肉のコンフィ」(写真上)。シャラン産鴨肉は、フランス・シャラン地方で育てられている鴨の一種。最近、高級鴨肉として人気が高まっているものだ。
「2~3人でワイワイ食べてもらいたいので、大きめの鴨を使っています」(吉澤さん)
軽く塩漬けした鴨を、ごく低温の油でじっくり時間をかけて静かに煮るように加熱している。運ばれてきた瞬間に華やかな香りが立ちのぼり、食欲が一気にかき立てられる。
絶妙な火入れによって、皮はパリパリと芳ばしく、身は芳醇で野性味あふれている。その肉とともに感動するのが、やはり野菜のおいしさだ。カラフルな夏野菜が10種類以上も添えられていて、メインの鴨肉に負けないほどの強い存在感を放っている。
見た目も華やかなリンゴパイは、一度食べたら忘れられない味
「温かなリンゴのパイ バニラアイスクリーム添え」(写真上)は、同店の人気ナンバーワンデザート。
「本当はリンゴのおいしい季節だけ出したいのですが、無いとがっかりする方が多いので、通年でお出ししています」(吉澤さん)
それほどに愛されている一品だ。
何層にも重なった薄切りリンゴは、焼きリンゴのとろりとしたやわらかさと、生のフレッシュな歯ざわりの両方が味わえる絶妙な焼き加減。添えられたバルサミコ酢といっしょに味わうと、リンゴのフルーティさがより深まる。また味わいたくなる、魅惑的なデザートだ。
吉澤さんの料理にぴったり合う、運命のワイン「ヴァルヴィニエール」
ワインはフランス産のみ。信頼できるインポーターからの情報をもとに、古くからワインを造り続けている醸造元を選んで揃えている。
一番のおすすめは、フランスのコート・デュ・ローヌ地方サン・ジョセフで作られている「ヴァルヴィニエール」の赤ワイン(写真上)。若々しい果実味の後に軽やかな渋みの余韻が残る、のど越しのいいワインだ。
じつは吉澤さんが『レ・リヤン』をオープンした時、あるワインのインポーターが「この店の料理にぴったり合う」と選んでくれたワインで、吉澤さん自身も気に入り、店に置くようになった。
その後、同じインポーターの誘いでフランスのワイナリーツアーに参加。
その時、ワインの造り手であるアラン・パレ氏の弟にあたるジャン・パレ氏のレストランで食べたランチの味に感動し、頼みこんで『レ・リヤン』閉店後の1年間、アプロンティ(見習い)としてその店で働かせてもらったという。
「ご家族の方々ともぴったり気が合いまして(笑)。飾らず素朴で、ひたむきにお料理に取り組んでいる素晴らしいご家族でした」(吉澤さん)。
ワインの造り手のアラン・パレ氏は『オー ペシェ グルマン』のオープン直後に来日し、店に訪ねてきてくれたそうだ。
▲入口横の壁には、扱っているフランスのワイン生産者たちのサインが並ぶ
日曜限定のランチは、人気メニューを格安で味わえる!
同店の魅力はまだまだ。
平日はディナー営業のみだが、日曜日だけランチ営業をしているのだ。
「茨城、栃木、盛岡、北軽井沢の生産者さんから届く旬野菜を食べていただきたくて、始めました」(吉澤さん)とのことで、「サラダランチ」(ミニスープ付きで1,300円)、「美桜鶏もも肉のコンフィ サラダ仕立て&ミニスープ&パン」(1,600円)など、野菜たっぷりのメニューが中心。
『レ・リヤン』時代から人気の、日曜ランチ限定で食べられる特製カレーや、ディナーと同じように丁寧に仕上げられている1皿300円の小皿料理も自慢の品。大人気で、毎週予約だけでほぼ満席になるため、予約必須だ。
その一部をご紹介しよう。
▲「特製カレー(豚すね肉&じゃが芋)&ミニサラダ」
かなりスパイシーなので、辛みを調整するための「パイナップルのチャツネ」、サワークリームが添えられている。新鮮野菜のサラダも絶品。
▲「人参のムース ウニ添え」
ニンジンのムース・コンソメジュレ・ウニの異なる柔らかさが口中でひとつになるおいしさ。
▲「トリッパのトマト煮込み レモン風味」
濃厚な味わいで、熱々で運ばれてくるのも嬉しい一品。
女性1人でもくつろいでフランス料理を味わえる、温かな雰囲気
▲ソムリエの橋本美澄さん(写真上・左)と吉澤美智子さん(同・右)
吉澤さんの頼れる相棒としてサービスを担当しているのが、短大時代の同級生でソムリエの橋本さん。今ではパン作りと焼き菓子作りも担当している。
そんな2人の信頼感が、店の居心地のよさを作っている。カウンター席には、吉澤さんと会話しつつワインを傾ける女性の一人客も多いという。毎週必ず訪れる人、記念日のたびに訪れる人、シニアの女性グループや夫婦、若いカップルなど、客層は幅広い。
「幡ヶ谷は住んでいる方々が温かいんです。女性2人でやっているせいか、ご近所の方々がいつも気にかけてくださって…」と吉澤さんは恐縮するが、それだけ街の人々が、この店を大切に想っているということなのだろう。
【メニュー】
▼ディナーアラカルト
鶏白レバーのテリーヌ 850円
ポーチドエッグの入ったリヨン風サラダ 1,650円
シャラン産鴨肉のコンフィ 2,800円
温かなリンゴのパイ バニラアイスクリーム添え 750円
▼ランチ小皿料理
「特製カレー(豚すね肉&じゃが芋)&ミニサラダ 950円
人参のムース ウニ添え 500円
トリッパのトマト煮込み レモン風味 300円
▼アルコール
グラスワイン 800円~
コート・デュ・ローヌ 〈ヴァルヴィニエール〉4,800円
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税別です
Au Peche Gourmand(オー ペシェ グルマン)
- 電話番号
- 03-6276-6332
- 営業時間
-
月~土 18:00~23:00(L.O.22:30)、日・祝日18:00~22:00(L.O.22:00) 日 ランチ12:00~15:30(L.O.15:00)※日曜日のみランチあり
定休日:火曜、第3水曜
- 公式サイト
- 公式ページhttp://a-p-g.jp/
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
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