メディア初! 武蔵小山に新たな“のん兵衛スポット”が誕生! 人気店『豚星』が手掛ける鰻串店『梅星』
【連載】幸食のすゝめ #096 食べることは大好きだが、美食家とは呼ばれたくない。僕らは街に食に幸せの居場所を探す。身体の一つひとつは、あの時のひと皿、忘れられない友と交わした、大切な一杯でできている。そんな幸食をお薦めしたい。
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- 1.2019年11月、武蔵小山に新たなのん兵衛スポット『梅星』がオープン!
2.立ち飲みスタイルで楽しむ「鰻串」が大評判、オープンと同時に即満席になる人気ぶり
3.場所は『PIZZA Q』跡地、ムサコを代表する人気店『豚星』の新業態
幸食のすゝめ#096、鰻の寝床には幸いが住む、武蔵小山。
「あ、僕は箸いりません。ありがとうございます」。
丁寧に挨拶したスーツ姿の男性は 、鰻が刺さっていた串で器用に3点盛りを食べている。頼んだドリンクは梅割り、ストレートの焼酎に梅エキスを垂らしたものだ。「一通り」の串を頼み、そこに入らない串もすべて食べて「ごちそうさま!」と満足そうに帰って行った。その背中を追いかけるように店主の黒田(直人)くんが言う。
「あの人、きっと鰻串のマニアですね。開店してから何人か、同じような方が来ました。やっぱり、鰻って人気があるんだなぁと思います」
新宿想い出横丁の『カブト』をはじめ、鰻串の名店は箸を出さないところが多い。そして、メインドリンクは焼酎のストレートに「天羽の梅」という梅味のシロップを垂らした、通称「梅割り」だ。黒田くん自身、鰻の串焼きが好きで都内の名店を回っていたので、そこに集るファンたちの姿をたくさん見かけて来た。
でも、どうして武蔵小山を代表する人気店『豚星』の新店は、鰻串の立ち飲みなんだろう?
今のムサコカルチャーを形成、場所を変えてもなお愛される店『豚星』
かつて三業地として、料亭や待合が立ち並んでいた隣りの西小山と並んで、武蔵小山もたくさんの酒場が並ぶ街だった。連日客で溢れている『牛太郎』は、その代表格だ。しかし、今もムサコ・ホッピングの拠点となっている2店が誕生しなければ、現在の武蔵小山の攻勢はなかっただろう。
2010年に開店し、今や一大チェーン店となった『晩杯屋』と、翌年4月にオープンした『豚星』。
武蔵小山の酒場を支えていた親父たちだけでなく、若者たちが押し寄せる街になった原動力は、間違いなくムサコドリームを体現した2つの店の誕生の成果だ。
やがて人気の絶頂期に、2店は『東京のしゃれた町並づくり推進条例』という条例で、「飲食店街りゅえる」ごと消えた。数え切れないスナックが建ち並んだ武蔵小山の迷宮は、今パークシティというタワマン街に変り、2019年11月11日の立ち飲みの日には『晩杯屋』もオープンした。
一方、『豚星』は2016年のバレンタインデーに、パルム商店街と交差する銀座通りアーケードでリニューアルオープン(写真上)。現在は隣町、西小山で人気店『fujimi do 243』を営む渡邊マリコさんを迎えて、ただのもつ焼き屋に留まらない、総合的なもつ料理の専門店としてパワーアップ、更なる人気を博した。
鰻串の前身である「アメリカンピザの店」も、連日完売の大盛況だったが…?
そんな中、オーナーのキョンちゃんこと佐藤(喜与佳)さんは新店をオープン。誰もが、連日客が入り切れない『豚星』のパート2だと思った。しかし、驚愕の新展開はピザ、しかも、近隣の人気店『トリプレッタ』などのミラノピッツァではなく、スライスして売るアメリカンピザのテイクアウト店だった。
古典酒場『牛太郎』の先にあるピザ屋さんは評判を呼び、毎日売り切れが続き、テレビにも取り上げられた。
テイクアウト主体とは言え、2階にはイートインスペースも完備、アルコール類も用意した。
しかし、客たちの多くはテイクアウトカウンターに椅子を出して、キョンちゃんや黒田くん、スタッフのナガシーと会話しながら飲んだ。
パワーアッブした新店も、東京一おいしいアメリカンピザも素晴らしいけど、古くからの客たちは慣れ親しんだスタッフたちとの会話が欲しかった。たとえ忙しくて話せなくても、目の前を行き交う彼らの姿を追い、酒を飲みたい。
武蔵小山が近代的な街に変わって行く中で無くなっていく「飲食店街りゅえる」の喧噪とラビリンス。
それは当初の『豚星』の大切な要素だったのかもしれない。
「そういえば…」ふと思い出した一言が、鰻串への舵切りとなる
平和島の『あきば』や自由ヶ丘の『ほさかや』の中で感じる、あの和気あいあいとした楽しさは何だろう。定食中心の鰻屋さんで隣りの人と話すことなんてないけど、鰻串の店では常連も一見もみんながリラックスして1つになっている。それでも、鰻だからどこかにハレのご馳走の気分もある。
その時、ふと、最初に物件を見た時に2人が話していたことを思い出した。
「なんだか鰻の寝床みたいな物件だね」、しかも、古民家ならではの瓦屋根もあった。
「そうだ、立ち飲みの鰻串をやろう! 鰻の寝床でも、立ち飲みならたくさんの人に来てもらえるはずだ」
さっそく、仕入れのルートを確保するために、色々な工場を回った。
「でも、工場見学に行っても、鰻のうの字も分かってない」、大変だった。
でも、持ち前の研究熱心さともつ焼きで鍛え上げた炭焼きのセンスが功を奏して、黒田流鰻串は着々と完成されていった。
懐かしくて新しい、ムサコの新しいパラダイス
しばらく閉まっていたピザ屋の店先に『うなぎ串 梅星 立呑み』という看板が付くと、すぐに武蔵小山の街で評判になった。『豚星』の新店→鰻串、しかも立呑みというインパクトは呑んベえたちをノックアウトする魅力に満ちていた。
2019年11月3日17時、新店『梅星』は開店と同時に、満員になった。みんな笑顔で鰻を頬張り、思い思いの酒を飲んでいる。
『梅星』は鰻串という東京ローカルな懐かしさはそのままに、『豚星』で培ってきた新しい酒場としての魅力もいっぱいだ。
ドリンクはビールやハイボールのほか、さまざまなサワー、もちろん梅割りもある。『豚星』で人気を博した、大葉と鷹の爪が鮮やかな「金魚」や、焼酎版ブラッディーメアリーの「辛トマ」などがあるのも嬉しい。
白菜ピクルスや、ナムル、マカロニなどサイドメニューも豊富、厚揚げや野菜、チョリソーも焼いてくれる。
コップワインもグラスに溢れるもっきりサイズ。鮎の魚醤で食べる白焼きも『梅星』らしい感性が嬉しい。
変わり行く街の心温まるカウンター
〆には、『梅星』ならではの梅のお茶漬けもある。しかし、『梅星』ならではのユーモアとアイデアに溢れたメニューが「タレご飯」だろう。
誰もが子どもの頃、鰻のタレを白いご飯に思い切りぶっかけて食べたいと思ったことがあるはずだ。しかも、ここでは卵も付いていて、味変もできる。
開店当日には、おじいちゃんに連れられて来た小学生が嬉しそうに何杯もお代わりしていた。周りから鰻の身を乗っけてあげる客たちもいて、『梅星』は初日からたくさんの活気に包まれていた。
「なんだか、ちょっと『豚星』始めた頃みたいだね」、キョンちゃんがぽつりと言った。
「食べ合わせ」の代表例、梅と鰻には何の根拠もなく、むしろ食が進んで食べ過ぎてしまうところから生まれた迷信だと言う。
ムサコの新しい星、『梅星』の明るい明日が見えたみたいで、もう一杯「辛トマ」の杯が進んだ。
いつかここがタワマンが立ち並ぶ街になったとしても、鰻串屋の喧噪と活気があれば僕らはきっと笑顔を失わず生きていけるはずだ。
鰻の寝床には、幸いが住んでいる。
【メニュー】
一通り 1,200円(5本)
八幡/くりから 300円
短尺 350円
蒲焼き/白焼き 小1,200円、大1,500円
3点盛り 400円
タレご飯 250円(卵付き)
お茶漬け 300円
マカロニ 250円
カルシウム 200円
各種サワー 400円
ハイボール 450円
コップワイン 650円
ソフトドリンク 350円
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税別です
梅星
- 電話番号
- 03-6421-6359
- 営業時間
-
17:00~23:30
定休日:日曜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
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