愛と人情の街「大阪・西成」でハシゴ酒。串揚げや寿司など、安くておいしい3軒を朝から巡る
味わう旅 #11
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- Summary
- 1.酒飲みに優しい街「大阪・西成」
2.その物価の安さで旅行客にも人気。人情溢れる居酒屋も豊富
3.人気串揚げ店や名物女将による寿司店など、西成のディープな3軒をハシゴ酒
旅の醍醐味は、現地の人との交流にあり
私の旅は居酒屋ありきと言っても過言ではない。ここ数年は年間の約7割を旅に費やしており、そのほとんどが一人旅だが、不思議なことに寂しいと思ったことは一度もない。その理由こそが旅中の夜を居酒屋で過ごしているからだ。
居酒屋はただ空腹を満たすために行く場所ではない。特に旅先の居酒屋に行くと、地元の食材や郷土料理を食べることができるのはもちろん、店主や他のお客との会話によって、その土地の県民性に気付けたり、文化や習慣、歴史などを学べたりすることもよくある。
私のように、店に来ていきなり「この地の名物は何か」と質問したり、出てきた料理を懸命に撮影したりしているお客には、誰かが話しかけてくれることも多い。そうした新たな出会いが毎日あるからいつまでたっても旅がやめられないし、旅中に寂しさを感じないのも至極当然である。
そんな旅と居酒屋をこよなく愛する私は、日本全国の飲み屋街を歩いてきたが、中でも好きな街が大阪・西成(にしなり)区である。
「大阪・西成」のディープな3軒をハシゴ酒
かつて日本中の日雇い労働者が集まった大阪市西成区。当時は建設業が右肩上がりで、この街にさえ来れば誰でも仕事を見つけることが容易だったという。日雇い労働者が増えることで、街には一泊1,000円以下の激安ホテルがいくつも立ち、激安のスーパーや居酒屋等も現れた。
自動販売機やコインロッカーの金額を見ても、ここが周囲より物価の安い街であることは間違いない。
経済状況による雇用の減少等で、一時治安が悪化したこともあるが、現在は、その立地の良さと物価の安さから、バックパッカーを中心とした観光客に人気を博すようになり、治安も安定している。さらに、昼から開いている居酒屋や一人でも入りやすい店も豊富にある。
今回は、そんな西成で一日3軒ハシゴ酒をしてみた。
【一軒目】行列のできる人気「串揚げ」をビールとともに、『八重勝』
西成飲みのスタートはとにかく早い。なにせ、モーニングメニューに「ビールとゆで卵350円」と掲げている店がいくつもある街だ。
まずは、10:30に開店する、行列のできる串カツ屋『八重勝(やえかつ)』で朝飲みを楽しみに行ってみた。客席は多いが、大阪を代表する超人気店だ。平日ならオープンの15分前、休日なら20~30分前から並んでおくのがベストだろう。
最初はシンプルに「串カツ」(写真上)を頼む。オーソドックスな串カツは、全国の串カツ屋で楽しめる定番メニューだ。その店の油や揚げ加減が自分好みかをジャッジするには最適であろう。同店の串カツは肉の比重が大きく、食べごたえも抜群。がっつり肉感を楽しむことができる。
続いて、人気メニューを一気に頼む。『八重勝』では、一気に頼んでも出来上がったものから順に出してくれるので、常に揚げたてを食べることができるのが嬉しい。
オーダーしたのは4種。写真上・左から時計回りに、外はサクッと中はジューシーな「グリーンアスパラ」、噛んだ瞬間に中からトロッとチーズが溢れ出す「カマンベールチーズ」、シャキッとみずみずしさがたまらない「れんこん」、衣の食感と濃厚なうまみが相性抜群の「牡蠣」。
その他「焼きあなご」「生椎茸」「海鮮三種」など、とにかく幅広いメニューが用意されている。そして串揚げの間に「どて焼き」(写真上)を頼むのが大阪流だ。店によっては、串カツ以上にこだわる、裏の看板メニューなのだ。昼前から、これら絶品メニューをお酒とともに楽しみ、良いスタートを切ろう。
【メニュー】
串カツ 3本300円
グリーンアスパラ 200円
カマンベールチーズ 200円
れんこん 150円
牡蠣 300円
焼きあなご 200円
海鮮三種 300円
どて焼き 3本300円
瓶ビール 600円
冷酒 450円
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税込みです
八重勝
- 電話番号
- 06-6643-6332
- 営業時間
-
10:30~21:00
定休日:木曜、第3水曜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
【二軒目】上質な「ホルモン」を秘伝ダレでいただく、『ホルモン道場』
二軒目は、『八重勝』のすぐ横にある『ホルモン道場』へ。こちらも朝10:30オープンということもあり、午前中であろうと常に呑兵衛で溢れる人気店だ。
暖簾をくぐると所狭しに椅子が12席ほど並び、壁との距離はわずか数十センチ。そこを「すみません」と言いながら奥の席にすり抜けていく様子は、なんとも西成らしい風景である。
名物は、店名通り「ホルモン」だ。ホルモンの発祥は大阪といわれており、ホルモン屋の数が他地域と比べて圧倒的に多い。たこ焼きやお好み焼きに次いで、大阪を代表するB級グルメといえよう。
大阪のホルモン屋は、タレが味噌ベースであることが多いが、『ホルモン道場』はソースベースのタレを使用する。独自で20種類以上の食材をブレンドした秘伝のソースは、野菜や果物の味が重なり合ってホルモンのうまみを引き出す。
注文してから目の前で焼いてくれるスタイルなので、ファーストオーダー時に「生セン」(写真上:牛の第3胃センマイの刺身)を頼むことをおすすめする。注文するとすぐに出てくるので、焼き物を待っている間のビールのお供にぴったり。
酸味の効いた自家製味噌がさっぱりしているので、ホルモン焼きの合間につまむのも良いだろう。
初めてオーダーする場合は「ミックス」がおすすめ。センマイを含む色々な部位が少しずつ入っているので、次に何を頼むかのイメージが付きやすくなるのだ。
その後「ハラミ」(写真上・左)と「上ミノ」(同右)を追加オーダー。良質なサシが入った「ハラミ」は、噛んだ瞬間に塊のまま崩れ落ちそうになるほど柔らかい。
「上ミノ」はコリコリした食感がクセになり、ビールを一気に加速させる。ビジュアルは大衆酒場だが、肉は高級焼肉店の質を感じさせる、そんな良店だ。
【メニュー】
生セン600
ミックス600
ハラミ750
上ミノ750円
瓶ビール600
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税込みです
本家ホルモン道場
- 電話番号
- 06-6631-3466
- 営業時間
-
10:30~20:00(L.O.19:30)
定休日:火曜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
【三軒目】女性大将が握る「豪快な寿司」を堪能、『勇ずし』
三軒目は少し離れた、大阪メトロ四つ橋線「花園町駅」付近にある『勇(いさみ)ずし』へ。カウンター席のみの典型的な寿司屋だが、実は珍しく女性が大将を務めている。
2019年で84歳になった女将は、60年以上一度も建て替えることなくこの店を守り続けてきた。そんな女将は、仕入れ先である「大阪市中央卸売市場」でも顔が利き、新鮮なネタを安く優先的に仕入れることができるため、同店での圧倒的なコストパフォーマンスを実現している。
アラカルトメニューには値札が付いているが、基本的には予算を言って女将にお任せするのが『勇ずし』スタイル。この日は7,000円で頼んでみた。もちろん、ビールや日本酒は欠かせない。
まず、突き出しに出てきたのは「ウナギときゅうりの酢の物」(写真上)。甘じょっぱいタレでこんがり焼き上げたウナギを、酸味の効いたキュウリが引き締める。このバランスが絶妙で、シンプルながら箸が止まらない逸品だ。
続いて運ばれてきたのが「ヒラメのお造り」(写真上)。贅沢にこれほど大きなエンガワも付いてきた。女将の目利きと捌きに加え、旬ということもあったからか、私があまりのおいしさに悶絶していると、女将が大きなヒラメを片手で掴んで見せてくれた。
この豪快な持ち方、とても84歳には見えない! そんなパワフルな女将との会話も、『勇ずし』の魅力の一つである。
続いて一番の人気メニューである「鉄火巻き」(写真上)。寿司屋の一番人気が「鉄火巻き」というのは珍しいと思っていたが、目の前に運ばれてきたとき、それに納得した。
まずその大きさ。鉄火巻きというより、もはや恵方巻きに近いサイズ感で、その中からシャリより多く盛られた大トロが溢れているのだ。なんとも女将らしい豪快さを感じる。
そして素晴らしい口どけ。シャリが柔らかめなので、口に運んで大トロと混ざり合ったと思いきや、ふわっととろけてしまう。一瞬の中に幸せが潜む、なんとも感動的な一品だ。
その後も、自分で好きなだけ具材を乗せられる「ウニいくら軍艦」(写真上・左)や「真鱈の白子」(同右)などが次から次へと運ばれてきて、一向にストップする気配が感じられない。
「にいちゃんは気に入ったから特別よ」と微笑む女将。
味よし、人よし、価格よし。西成らしい、人情味溢れる名店だ。
【メニュー】
おまかせコース お好みで
勇ずし
- 電話番号
- 06-6651-6861
- 営業時間
-
17:30~21:00
定休日:日曜、月曜、祝日
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
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