弱火でほっとくだけで「常備菜」が完成! 忙しい人にこそ伝えたい、山本式・弱火調理法を使ったレシピ5選

連日のテレワークに子育て、3食の自炊…と、体力的に限界を迎えている人も多いはず。そこで紹介したいのが、「少ない調味料」「弱火でほったらかしにするだけ」で作れる簡単常備菜レシピ。調理時間が短い上にヘルシー、作り置きもしておけるので、忙しい人やダイエット中の人にもぴったり。タマネギやニンジン、キャベツなど家にある食材ですぐに作れるので、ぜひ実践してみて!

dressing編集部

Summary
1.少ない調味料でOK! 弱火でほっとくだけで作れる常備菜レシピ5選
2.いつもの食材がぐんとおいしく! うまみを引き出して減塩も叶う「山本式・弱火調理法」
3.弱火だから鍋から離れていても安心! テレワークや子育てで忙しい人にこそ試してほしい

忙しい人こそ必見! ほったらかしで作れる「常備菜レシピ」5選

新型コロナ感染拡大による外食の自粛、子どもたちの休校、テレワークと、家庭でのご飯作りの重荷は増すばかり。でも子どもの世話をしながら、仕事をしながらだと、台所に長時間立つのはとても無理…。

そこでおすすめしたいのが、「山本式・弱火調理法」を使った常備菜レシピ。

「山本式・弱火調理法」って何?

「山本式・弱火調理法」とは、料理家・山本千代子さんが1970年代に考案し、平成9年に特許も取得している調理法(広く知ってもらうため、現在は特許の更新はしていない)。

1970年代から急増し続けていた成人病(生活習慣病)の原因を探る中で、早くから「油の酸化」に着目。油を酸化させにくい弱火調理の研究を重ね、どの家庭でも簡単においしくできるように完成させた独自の調理法だ。

基本の工程は、以下の3ステップ。
(※用意するもの・・・精製されていない塩、加熱用の良質なオリーブオイルまたはお好みの酸化しにくいオイル、直径20㎝内外のお手持ちの鍋、鍋にぴったりと合う蓋)

1)予熱していない鍋にオリーブオイルと塩を振り入れる
予熱をしていない鍋にオリーブオイルをひいて、分量の塩をふる。

2)素材の一部を入れてなじませる
素材の一部を先に入れて、塩とオリーブオイルを鍋底全体に広げるようになじませる。

3)蓋をして弱火で加熱
食材すべてを入れ、ぴったりの蓋をして弱火にし、そのままレシピの時間を基準にして加熱する。(音があまりしないので、くれぐれも火にかけていることをお忘れなく!)

たったこれだけで、塩と油を含んだ蒸気で食材を包み込むため、味の染みこみがアップ。そのままでも十分おいしいので、味付けも最低限に抑えられて減塩&ヘルシーに。

弱火調理のため火に付きっきりになる必要がなく、ほかの作業と並行して料理ができるのも嬉しいポイント。また「焦がした」「生煮えだった」「火を通しすぎた」といった火加減による失敗がほとんどないのも魅力。

そしてなにより、最大のメリットは、多くの食材がびっくりするほどおいしく変身すること! いろいろなアレンジがきく「常備菜レシピ」を5種類紹介するので、この機会にぜひお試しを!

【初級】砂糖を使わず甘みを引き出す「ニンジンのソテーごま風味」

冷蔵庫の野菜室にいつもあるニンジン。とはいえ、カレーやシチューくらいにしか使わない、という人も結構多いのでは?
山本式・弱火調理法で加熱すれば、まるでスイーツのような甘みに大変身。火入れの違いでここまで味に差が出るとは…と、驚かされる一品。

▼材料(2~3人分)
・ニンジン … 小1本
・オリーブオイル … 大さじ1
・塩 … 小さじ1/5
・煎りごま … 大さじ3~4
・好みでごく少量の醤油

▼作り方(レシピ動画はこちら
① ニンジンは千切りにする。予熱をしていない鍋にオリーブオイルをひき、塩を振る。

② ニンジンを少し入れて、塩とオリーブオイルを鍋底全体に広げるようになじませ、残りのニンジンも鍋に入れる。

③ 蓋をして弱火にかけ、8分から10分ほど加熱。(※ここまでが「山本式・弱火調理法」)

④ 火を止めて2分ほど蒸らし、煎りごまを振る。

※歯ごたえを残したい場合は、加熱時間3~4分。
※このままでも十分においしいが、好みで醤油を香り付け程度に入れても。

▼「ニンジンの山本式」おすすめアレンジ
・たくさん作って常備し、卵で包んでオムレツに。
・マヨネーズを少し足してサラダに。
・ツナやコンビーフといっしょにご飯に混ぜ込んでも。

【初級】朝食にも! やさしい酸味の「ザワークラウト風キャベツ」

春キャベツの季節にぜひ試してほしいのが「ザワークラウト風キャベツ」。ツンとしないやさしい酸味で、いくらでも食べ進められそうなおいしさ。常備しておけば、朝食はパンとこれだけでOK!

▼材料(2~3人分)
・キャベツ … 1/4個
・オリーブオイル… 大さじ1
・塩 … 小さじ1/5

・ローリエ(月桂樹の葉) … 1枚
・ソーセージまたはベーコン … 100g程度

・[A]白ワイン酢またはりんご酢 … 大さじ2
・[A]はちみつまたはきび糖…大さじ1
・[A]塩…小さじ1/4
・[A]胡椒…少々

▼作り方
① キャベツは約5mm幅に切る。予熱をしていない鍋にオリーブオイルをひき、塩を振る。

② キャベツを少し入れて、塩とオリーブオイルを鍋底全体に広げるようになじませ、残りのキャベツも鍋に入れる。

③ 蓋をして8分間、弱火で加熱する。

④ ローリエ、ソーセージまたはベーコンをのせ、さらに5分、蓋をしたまま弱火で加熱。(混ぜ合わせなくてOK)

⑤ 上下を返したら、合わせておいたAを全体に回しかけ、すぐに火を止める。

▼「キャベツの山本式」おすすめアレンジ
・「ザワークラウト風」は、ホットドッグやサンドイッチの具にしてもおいしい。
・ごま油とすりごまを加えてナムル風に、キムチを加えてラーメンの具に。
・加熱する際、キャベツをドーナツ状に広げて真ん中に卵を落とせば、「キャベツのココット」に。

【中級】付きっきりで炒める必要なし!「ほったらかしオニオンスープ」

「タマネギをあめ色になるまで炒める」と聞いただけでうんざりするけれど、「山本式・弱火調理法」なら、フライパンに付きっ切りで炒める必要はなし! 鍋に入れて放っておくだけで、たんねんに炒めたようなあめ色のタマネギ炒めが魔法のように完成。まとめて作っておけば、「料理の素」として大活躍!

▼材料(4人分)
・タマネギ … 2個
・オリーブオイル … 大さじ2
・塩 … 小さじ2/5
・鶏ささみ(できれば筋を取る)…2本

・洋酒(ブランデーまたはウイスキーまたは白ワイン)…1/5カップ
・水…3カップ
・ローリエ(月桂樹の葉)…1枚
・塩、胡椒、チーズ(モッツァレラ、バルメザンなど)適量

▼作り方
① タマネギは千切りにし、鶏ささみは食べやすい大きさに切る。

② 予熱をしていない鍋にオリーブオイルをひき、塩をふる。

③ タマネギを少し入れて、塩とオリーブオイルを鍋底全体に広げるようになじませる。なじんだら、残りのタマネギ、鶏ささみの順にのせる。

④ 蓋をして20分間、弱火で加熱する。

⑤ 洋酒を加えてひと煮立ちさせ、水とローリエを加えて30分ほど煮る。

⑥ 塩、胡椒で味を調え、器に盛ってからチーズを加える。

▼「タマネギの山本式」おすすめアレンジ
・オニオンスープにパンとチーズを入れてオーブンで5分焼けば、オニオングラタンスープに。
・タマネギの山本式をまとめて作っておけば、味噌汁や卵丼などさまざまな料理に使えます。

【中級】山本式なら煮くずれ知らず! こっくりおいしい「大根と豚バラの煮物」

これぞ、ご飯が進むおかず! 山本式・弱火調理法なら、安いお肉でもびっくりするほどやわらかくなり、煮込んでも大根は煮くずれ知らず。重ねて弱火で煮込むだけなので、ほったらかしでラクラク完成!

▼材料(4人分)
・大根 … 1/4本
・オリーブオイル … 大さじ1
・塩 … 小さじ1/5

・豚バラ肉…100g
・[A]醤油…小さじ1
・[A]はちみつまたはきび糖…小さじ1/2
・[A]おろし生姜…小さじ1/3

・[B]醤油…大さじ1
・[B]はちみつまたはきび糖…小さじ1
・[B]おろし生姜…小さじ1/3
・[B]酒…大さじ1
・[B]だし汁または水…1カップ

▼作り方
① 大根は5mm厚さのいちょう切り、豚バラ肉は食べやすい大きさに切り、Aで下味を付けておく。

② 予熱をしていない鍋にオリーブオイルをひき、塩をふり、大根一切れで、塩とオリーブオイルを鍋底全体に広げるようになじませる。

③ なじんだら残りの大根、豚バラ肉の順番で重ね、蓋をして10分間、弱火で加熱する。

④ Bの調味料を加え、蓋をしたまま弱火で15分ほどさらに加熱。

▼「大根の山本式」おすすめアレンジ
・大根を山本式・弱火調理法で10分ほど加熱し、練り味噌を添えればふろふき大根風に。
・千切りにして、山本式・弱火調理法で10分ほど加熱したものを作っておけば、味噌汁が時短で完成。市販の甘酢を加えて煮なます風にも。

【上級】鍋振り不要! 重ねて火にかけるだけで「八宝菜」がプロ級に

山本式・弱火調理法の奥義ともいえる、スペシャル料理。といっても、オリーブオイルと塩をひいた鍋に、ただ材料を順番に入れて蓋をし、弱火で加熱するだけ。

一度も鍋を振ることなく、2~3人分の八宝菜がカンタンに完成! 多めに作っても手間は同じなので、1~2人暮らしなら作り置きも可能!

▼材料(2~3人分)
・タマネギ(食べやすい大きさにカット) … 1/2個
・茹でタケノコ(薄切り) … 1/6本
・干ししいたけ(もどしたものをそぎ切り) … 2枚
・カラーピーマン(乱切り) …1/2個
・白ネギ(斜め切り) … 1本
・アスパラガス(根元部分の皮をピーラーでむき、3~4センチにカット) … 2本
・海老(殻と背ワタを取り、塩水で洗い水気をふいておく) … 4尾

・[A]オリーブオイル … 大さじ1
・[A]ごま油 … 大さじ1
・[A]塩 … 小さじ1/4

・うずらの卵(ゆでたもの) … 4個

(肉団子)
・[B]豚ひき肉 … 100g
・[B]酒 … 小さじ1
・[B]生姜汁 … 小さじ1/2
・[B]卵白 … 大さじ1
・[B]小ねぎ(小口切り) … 小さじ1
・[B]小麦粉 … 大さじ2~4
・[B]塩、胡椒

(とろみ付け)
・[C]だし汁、または水 … 1カップ
・[C]塩 … 小さじ1/4~1/3
・[C]葛粉、もしくは片栗粉… 大さじ1

▼作り方
① Bを混ぜ、小さめの肉団子に丸めておく。

② Aの油と塩を予熱していない鍋に入れ、タマネギを少し入れて、塩とオリーブオイルを鍋底全体に広げるようになじませる。なじんだら、残りのタマネギ、茹でタケノコ、しいたけ、カラーピーマン、白ネギ、アスパラガス、①の肉団子、海老の順番に重ねる。

③ 蓋をして8分~12分ほど弱火で加熱する。

④ うずらの卵を加え、Cでとろみをつけたら出来上がり。

山本式だと、どうして勝手に料理がおいしくなるの?

1)野菜のアクが、うまみに変わる
野菜に含まれるポリフェノールが酸化してできるのが「アク」。山本式・弱火調理法は、オリーブオイルと塩と水蒸気で素材をコーティングするのでポリフェノールが酸化せず、本来のうまみのまま調理される。

2)心地よい食感が残る
高温で加熱すると野菜の水分を保っている細胞壁が壊れ、ベチャッとなるが、山本式・弱火調理法で加熱すると70℃前後に保たれるので、むしろ細胞の接着力が強化される。

3)効率的・均等に味がつく
山本式・弱火調理法では、オリーブオイルと塩と食材の風味を含んだ水蒸気で包んで加熱されるため、全体に均等にしっかり味がつく。

4)薄味でもおいしいので、ヘルシー
3)と同じ理由で、少量の調味料でしっかり味が付くので塩分が抑えられる。

5)誰でも料理上級者の味付けに
濃い味でごまかさなくてもおいしくなり、素材の味が活きた上級レベルの料理に仕上がる。

山本式・弱火調理法で加熱するだけで、いつもの野菜の甘みが引き出され、とびきりおいしい常備菜に。お肉や魚介類も、失敗知らずでやわらかジューシー。

でも一番助かるのは、「食材はあるけど、これで何を作ろう…」と、献立に悩む時間がいらなくなること。「とりあえず山本式・弱火調理法にしておけばオッケー」と思える安心感は大きい。

仕事に家事に子育てに…とマルチタスクが求められる今の時期にこそ、ぜひお試しを!


▼料理家プロフィール
山本千代子(やまもと・ちよこ)さん
料理研究家。1960年代から福岡県久留米市で、看板のない小さな料理教室を主宰。娘の料理家・山本智香(やまもと・ちか)さんとともに現役で教室を運営している。
『ラクなのに美味しい驚異の弱火調理法』(著者 山本智香 監修 山本千代子 三空出版)、『おくるごはん』(著者 山本智香 三空出版)、『限りなくシンプル!とびっきりおいしい! 山本式弱火調理法レシピ』(著者 山本智香 監修 山本千代子 講談社)を出版。


※この記事は、『ラクなのに美味しい驚異の弱火調理法』(三空出版)をもとに編集部で再構成しました。

撮影/戸高慶一郎
取材協力/三空出版
記事執筆協力/桑原恵美子