日本橋兜町『Neki』のビストロ料理が美しすぎる!ランチもディナーも気軽に使える理想的な一軒が誕生

日比谷線「茅場町駅」から徒歩3分、銀座線「日本橋駅」から徒歩5分のところにオープンしたビストロ『Neki(ネキ)』をご紹介。『ビストロロジウラ』で長年シェフを務めていた西恭平さんが営む同店は、ゆるやかでリラックスした雰囲気の中で本格フレンチを楽しむことができる一軒。ランチメニューは全てテイクアウト可能。自然派ワインとともにいただくセンス抜群のビストロ料理は、デートや仕事帰りの一杯に最適。

桑原恵美子

Summary
1.日本橋兜町に、本格フレンチをカジュアルに楽しめるビストロ『Neki(ネキ)』がオープン
2.シェフは『キュイジーヌ(S)ミッシェルトロワグロ』で修業を積んだ実力派
3.本格フレンチの技法に和のアレンジをプラスした、なじみやすい味

再開発が進む日本橋兜町に、最注目ビストロ『Neki』がオープン

古くから 金融街として知られてきた日本橋兜町(かぶとちょう)。多忙な証券マン向けの飲食チェーン店が多いこの街に、2020年5月27日、あたりの風景を一変させるようなオーラを放つビストロ『Neki(ネキ)』がオープンし、注目されている。

日比谷線「茅場町駅」から徒歩3分、銀座線「日本橋駅」から徒歩5分ほどの場所にオープンした『Neki』(写真上)。

『ネキ』という店名は、関西地方の方言で「そば・かたわら」という意味。幅広い年代の方から、身近な存在に感じてもらえるレストランにしたいと思い、名づけたそうだ。

モダンなのに、温かみがある店内には、カウンター席、テーブル席、ソファー席がある。

父も祖父も父の兄弟も料理人。自然にスッと料理の道に入った。

シェフの西恭平さん(写真上)は1983年京都生まれ。父も祖父も、父の兄弟も料理人という家系に育ち、「自然にスッと」料理人の道に進む。

最初はパティシエを目指していたが、京都『ホテル グランヴィア』内のレストランで働くうちフレンチにも興味を持つようになり、フランスの地方料理を学ぶために渡仏。アルザス地方の小さなオーベルジュ『シュナンブール』で修業を積み、帰国後は『ミシュランガイド東京』で二つ星を獲得している『キュイジーヌ(S)ミッシェルトロワグロ(現在は閉店)』で3年間、腕を磨いた。

「20人近くも料理人がいる大きなレストランで働くのは初めてで、一つの料理を仕上げるのに大勢が分業するスタイルにびっくりしました。でも、それだけにどの工程も技術のレベルが高く、本当に勉強になりました」と西さんは振り返る。その後、『ミシュランガイド東京2015~2020』で6年連続ビブグルマンに掲載される『bistro ROJIURA』(渋谷)でシェフを務めた。

「そろそろ自分の店を持ちたい」と考え始めた頃、西さんは「似たような店がたくさんあるエリアに、また作ってもしかたがない」と思い、故郷の京都に店を出すことも考えたという。そんな時、再開発の機運が盛り上がっている茅場町で店を出してみないかという誘いがあり、「面白そうだ」と直感した。

当初のオープン予定日だった2020年5月が新型コロナウイルスによる自粛要請期間と重なる不運はあったが、まずはランチタイムのテイクアウト販売のみでスタートし、6月3日からはランチタイム営業、7月2日からはディナー営業がスタート。

「平日は意外にも男性客が多く、食べたり飲んだりするのが好きな人が多い街だとわかりました」(西さん)

気軽にふらっと立ち寄ってほしいから、あえてアラカルトメニューのみ

『キュイジーヌ(S)ミッシェルトロワグロ』で働いたのは、「本格フレンチの技をきちんと身につけておきたい」と考えたからだが、西さんが本当にやりたかったのは、誰もが気軽にふらっと入れて、カジュアルにフレンチを楽しめる店。だから同店ではコースメニューは組まず、あえてアラカルトメニューのみにしている。もちろん、要望があれば昼も夜もコースメニューを用意可能。バーメニューも用意しているので、2軒目使いもできる。

「テーブル席でコースを楽しむ人、カウンター席でスタッフとの会話を楽しみたい人、1日の終わりに軽く1杯のワインとつまみをご褒美にしたい人、それぞれが自分のスタイルでくつろげる店にしたいと思ったのです」(西さん)

ディナーメニューは今のところ、前菜が10種類前後、メインが4種類、デザートが2種類。その中から西さんのおすすめを選んでいただいた。

まるで絵画のよう! 息をのむ美しさ、そして感動のおいしさ

「トレビスと生ハム、イチジクのサラダ」(写真上)は、西さんが「赤いサラダを作りたい」と思いできたメニュー。出てきた瞬間、その抽象画のような美しさに息を飲む。

赤紫色の葉野菜トレビスをベースに、ヘーゼルナッツ、フェタチーズ、ドライトマト、素揚げしたブルグル(挽き割り小麦)が散りばめられ、ひと口ごとに違う味わいと食感があらわれる。煮詰めたバルサミコ酢にハニーマスタードをきかせたドレッシングが、トレビスのほろ苦さの中の甘みを絶妙に引き出している。

▲まるで絵を描くように、繊細に盛り付けていく

フレンチの技法に和の味わいを添えて、親しみやすい一皿に

“誰でも気軽にフレンチを楽しめる店にしたい”という西さんの想いは、料理からも伺える。本格フレンチの技法を使いながら、“和”のテイストも繊細に織りまぜることで、フレンチでありながら食べ疲れない、親しみやすい味わいになっているのだ。

「やりすぎると和食そのままになってしまうので、その点は気を付けています」(西さん)

例えばメイン料理のひとつ、「アナゴのフリット/焼き茄子/カラスミ」(写真上)。

ソースは焼き茄子のピューレがベース。付け合わせは軽くソテーしたモロヘイヤ、トッピングとしてたっぷりのカラスミのパウダーと花穂紫蘇(はなほじそ)を散らして仕上げている。

卵白を泡立てた衣をつけて揚げる「ベニエ」というフレンチの技法でさっくり揚げたアナゴは、それだけを食べるとまるで天ぷらのような軽い味わい。だが、焼き茄子のピューレをクリーム状に仕上げたソースを付けると、アナゴの“和”な味わいが一変。フレンチの醍醐味である、重層的な味の奥行きが出現する。そしてカラスミ特有のうまみで、最後に“和”を感じる余韻がほんのり残る。

西さんの自慢の一品、「フランス産鴨肉の炭火タレ焼き」(写真上)は、フランス料理の定番である鴨料理を、焼鳥をイメージしてアレンジしている。付け合わせはゴボウの素揚げと、色鮮やかなニンジンのピューレ。

柑橘類の果汁と、焦がした蜂蜜をミックスした甘辛味のソースを鴨に塗り、炭火で香ばしく焼き上げる。店内には焼鳥店のような芳ばしい香りが広がり、食べる前から猛烈に食欲をそそられる。

ナイフを入れ、フォークで口に運ぶ間にもどんどん肉汁が滴ってくるので、あわてて口に入れると、香ばしく焦げた皮のカリカリ感、焼鳥のような甘辛いソースの味、かむほどに湧きあがるうまみが次々にあらわれて、思わずうっとり…。

付け合わせのニンジンのピューレは、コリアンダー、クミンなどのスパイスで風味をつけたインド料理風のフレーバー。もうひとつのゴボウの素揚げには発酵させたマッシュルームのパウダーがかかっていて、香ばしさに複雑なうまみを加えている。食材一つひとつに隠された、おいしさのマジック。いったいどこから、こういう発想が生まれるのか。

「料理のアイデアは食材から生まれることもあれば、器から生まれることもあります。ただ、全てが奇をてらったものにならないよう、そして味に緩急をつけるよう、配慮していますね」(西さん)

ランチメニューは全て、テイクアウト可能!

ランチメニューは、「プティポワの冷製スープ」(700円)といった軽いものからしっかりボリュームのあるものまで、6種類を用意し、すべてテイクアウト可能。350円プラスすると、セットサラダかセットスープが付けられるが、600円でその両方を付けることもできる。

ランチメニューの一番人気は、7時間かけて火を入れたローストポークとマッシュポテト、自家製BBQソースにチェダーチーズを挟んだホットサンド「プルドポークのグリルホットサンド」(写真上)。

パンは日本橋で愛されているベーカリー『ビーバーブレッド』から仕入れている。

西さんとスタッフがセレクトしている自然派ワインも自慢のひとつ。和の要素を取り入れた『Neki』の料理になじむ、飲みやすいものが中心。

コロナで、今までの「あたりまえ」を反省した

オープン時期とコロナ発生時期が重なった不運について、西さんは「自分の覚悟を見直すいい機会になった」と語る。

「正直これまでは、食べることが好きな人が集まる場所に店を出せば、あたりまえにお客さんが来るものだと思っている部分がありました。でもこれから、飲食店のあり方は大きく変わるでしょうし、『何を提供するために店をやるのか』という信念が、これまで以上に必要になると感じています」(西さん)

自粛期間中に始めたテイクアウトは、これまでと全く違うスタンスでメニューを考えるいい機会になったという。「鴨胸肉のローストと十五穀米ご飯、マデラ酒ソース」(1,150円)は、和食の「鴨重」をイメージして考えたメニュー。ボリュームがあるので男性にも好まれ、十五穀米はヘルシーなイメージがあるので女性にも人気だという。

「まさか、自分の店でご飯ものを出すとは思わなかったです(笑)。でも、こういうものが喜ばれるということがわかり、勉強になりました。テイクアウトメニューももっと研究してみたいし、幅広い層の方に店に来ていただくために、挑戦を続けていきたいですね」(西さん)

グランドオープンから数日後のランチタイムに訪れてみると、予約なしのお客が入れないほど盛況。若い女性に混じってビジネスマンの姿も見られ、この街の食シーンが、同店を起点に大きく変わりそうな予感がした。

西さんの趣味はレコードのコレクション。営業中には、店の奥にあるレコードプレーヤーから西さんセレクトのレコードが流れて、居心地のいい雰囲気を醸し出している。

【メニュー】
<ディナーアラカルト>
・トレビスと生ハム、イチジクのサラダ 1,500円
・アナゴのフリット/焼き茄子/カラスミ 2,000円
・フランス産鴨肉の炭火タレ焼き 3,500円

<ランチ(テイクアウト可)>
・プルドポークのグリルホットサンド 950円

<ドリンク>
・グラスワイン 900円~

撮影: 小野千明

Neki(ネキ)

住所
東京都中央区日本橋兜町8-1 1F
電話番号
03-6231-1988
営業時間
11:30~14:30(L.O.14:00)/18:00~23:00(L.O.22:00)
定休日:日曜
公式サイト
公式ページhttps://www.instagram.com/neki_tokyo/

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。