早くも連日予約待ち! あの超人気中華の味坊集団が点心専門店『宝味八萬』をオープン【代々木八幡】

神田『味坊』、湯島『味坊鉄鍋荘』など個性的な中華料理店を手がける「味坊集団グループ」が2021年9月28日に7店舗目となる点心のお店を代々木八幡駅南口にオープン。それが点心専門店『宝味八萬』です。この道25年以上の熟練点心師がその場で包むこだわりの点心と広東料理を、ナチュラルワインなどのお酒と楽しむことができる話題店です。

中森りほ

コロナ禍の通信販売が結実した、点心専門店『宝味八萬』

羊肉好きに大人気の神田『味坊』を皮切りに、湯島『味坊鉄鍋荘』、御徒町『羊香味坊』、『老酒舗』と中国東北料理の魅力を伝え続けてきた味坊集団。2018年には一転し湖南料理店『香辣里(シャンラーリー)』を三軒茶屋にオープンさせ、キレのある辛さとハーブの清涼感で新たな世界を見せ続けてきた。中国東北料理、湖南料理と中国大陸を南下し、味坊集団が行き着いたのはあの中国のことわざ「食在広州(食は広州にあり)」。広東料理だ。

▲(左から)代表の梁宝璋(リョウホウショウ)さんと、料理長の何偉昌(HE WEICHANG)さん。

店名は梁宝璋さんの名前から1文字とり「宝味」、八幡は商売繁盛を願い「八萬」として組み合わせた。

きっかけは、コロナ禍を機に味坊集団が始めた通信販売だった。緊急事態宣言の発令などで外食自粛が呼びかけられる中でも「多くの人においしい中国各地の料理を楽しんでほしい」と、お取り寄せ商品を開発。とくに自宅でも簡単においしく食べられる点心が人気を呼び、日に日にラインナップを増やしていった。

お取り寄せ商品はすべて東京・足立区の味坊工房で自社製造しているのだが、この工房で腕を振るっていたのが、『宝味八萬』で料理長を務めることとなった点心師・何偉昌(HE WEICHANG)さんだ。

点心の本場広州市出身の広東人である何さんは、料理人歴約40年、点心師歴25年以上。1995年に来日後、代々木『CHINA GRILL XENLON』(現在閉店)にて19年点心師として勤務したのち、『亜細亜食品 点心工場』の工場長として5年のキャリアを誇る。

友人を介して代表の梁さんと出会い、味坊集団の工房で点心作りに励む。何さんの点心は、在日中国人の間でも評判が高くその味に梁さんも一目置いた。

「何さんが活躍するお店を作りたい」と梁さんは考えるようになり、以前より出店を考えていた代々木八幡の南口駅前に『宝味八萬』を開業。何さんを調理長に据え、香港よりも甘さ控えめな点心を中心に、広東料理を楽しめるお店にした。

▲看板や壁面、カウンターの打ちっぱなしに至るまで、内装はほぼすべて元画家である梁さんのアイディアによる。

「味坊農園」で栽培した野菜を使用し、生地から毎日作る点心

『宝味八萬』で大切にしているのが「作れるものは自分たちで作ること」そして「冷凍品や前日に作ったものではなく、作りたてを提供すること」。たとえば野菜は、埼玉県三郷市と茨城県つくばみらい市にある「味坊農園」で、農薬不使用で栽培した旬の野菜を使用している。

▲埼玉県三郷市にある「味坊農園」。

ネギ、ナス、フェンネルやパクチー、青唐辛子やインゲンなど、栽培する野菜は20種類以上に及ぶ。中国料理の中でも広東料理は、素材の良さを生かすシンプルな味付けが特徴だが、そのぶん食材の質も求められる。だからこそ『宝味八萬』では使用する食材にも強く意識を向けた。

▲「精進春菊餃(春菊とシイタケ、春雨の蒸し餃子)」

何さんおすすめの「精進春菊餃(春菊とシイタケ、春雨の蒸し餃子)」も、「味坊農園」の春菊を使用している。皮は浮き粉と米粉を混ぜてモチモチ食感にし、さらに青汁の粉を混ぜ込み鮮やかな緑色に仕上げた。具材は春菊のほか、シイタケ、春雨と植物性食材のみにもかかわらず、鼻を抜ける春菊の香りと青々とした味わい、シイタケの強いうまみ、そしてシャキシャキとした食感が閃光のようなインパクトだ。

▲「鮮蝦仁腸粉(エビの腸粉)」

梁さんのおすすめが、「鮮蝦仁腸粉(エビの腸粉)」。「精進春菊餃」同様、浮き粉と米粉を混ぜて仕上げたクレープのような生地で海老を包み込み、甘さも感じる黒酢タレをかけている。生地はお皿にくっついてしまうほどモチモチ&プルプル食感で、米粉の甘さと海老の甘さに、黒酢のアクセントがきいた一品だ。

▲奥の寸胴状の物が焼き物を仕上げる特注釜、手前の四角い物が腸粉を作る機械

この腸粉の生地を生み出しているのが、厨房内にある特注の腸粉機。生地のネタを機械に注ぎ込むことで、四角いクレープのような生地が焼き上がるという。

ちなみに左奥にあるのが、後ほど紹介する広東風焼き物を仕上げる特注の釜。お世辞にも広い厨房ではないにもかかわらず、本場・中国でも使用されている調理機材を取り揃えている。

▲「水晶粉果(エビとニラの蒸し餃子)」

▲「宝味蝦餃皇(エビと刻みタケノコの蒸し餃子)」

「水晶粉果(エビとニラの蒸し餃子)」「宝味蝦餃皇(エビと刻みタケノコの蒸し餃子)」などの皮も、「精進春菊餃」と同様ということだが、点心すべてが同じ皮を使っているわけではない。

▲「真味魚翅餃(フカヒレの蒸し餃子)」

「真味魚翅餃(フカヒレの蒸し餃子)」の皮は、小麦粉と水のみとシンプルで、ミチミチとしっかりとした食感。一方、具材はフカヒレのほか、パクチー、ニンジン、キクラゲ、タケノコ、エビ、豚肉、シイタケなどバラエティ豊か。噛み締めるたびにうまみのハーモニーが波打つように変化していくのが面白い。食材たちが渾然一体となってくれたことに感謝の気持ちが込み上げてくる。

▲「海鮮焼売」

現時点で一番人気だというメニューが「海鮮焼売」。「真味魚翅餃」と同様、小麦粉と水のみで手延べした皮に、卵黄を混ぜ込むことで萌黄色に仕上げ、シンプルに海老と豚挽き肉を包み、最後にクコの実をトッピングした美しい色合いの点心だ。王道の海鮮焼売だが、のばしたての皮でプリプリのエビとジューシーな豚肉を包んだ蒸したての焼売は、気をてらわずしみじみとおいしい。

特注釜で焼き上げる広東風の焼き物に、20種類ほどそろうナチュラルワインを自由に合わせて

▲「広州烤鴨(釜焼きアヒル)」

『宝味八萬』では、点心にとどまらず「広州烤鴨(釜焼きアヒル)」など、広東風の焼き物や蒸し物なども多くそろう。

「広州烤鴨」は、甘い醤油やニンニク、生姜などで下味をつけたアヒルを自然風で乾燥させ、1時間ほど厨房内の特注釜で焼き上げる。メニュー表で「脆皮」と形容されている通り、皮目がカリカリ&サクサクとした食感で香ばしい。アヒルはしっかり弾力があり、うまみも芳醇で、咀嚼し終わるのが惜しくなる。

▲「広州腊腸(腸詰め)」

同様に厨房内の特注釜で焼き上げているのが「広州腊腸(腸詰め)」。同店で使用する豚肉はすべて岐阜県の「けんとん」という品種なのだが、この腸詰でも使用されている。「腊」は干した肉という意味。豚肉を乾燥させてから特製の釜で焼き上げ、うまみを凝縮させている。

▲ワインボトルに直接値段が書かれているが、他店よりも驚くほどリーズナブル

そんなうまみが強い焼き物などに合わせていただきたいのが、店の中央にある冷蔵庫にストックされたナチュラルワイン。その数約20種類。『味坊』などと同様、お客が自由に冷蔵庫からボトルを取り出すスタイルだ。

このほか、奄美大島の黒糖焼酎と高知の河内晩柑を合わせた「宝味八萬特製晩柑サワー」、「羊香トマトハイ(スパイス入りトマトサワー)」など、オリジナルのアルコールドリンクも展開している。

現在ランチ営業もしており、麺もしくはご飯ものに点心2〜3種、サラダ、お新香がついて1,200円とお手頃価格で展開。連日ランチだけで70〜80食売り上げている。ちなみにディナーはすでに連日予約で埋まっているほか、夕飯のおかずに焼き物などテイクアウトする近隣住民も多いという繁盛ぶりだ。

「今後人手が集まれば、朝食営業も始めたい」と意気込む梁さん。広州のように揚げパンとお粥、そして点心を頬張る人で賑わう光景が、代々木八幡で見られる日もそう遠くはなさそうだ。

 
撮影:中森りほ

【メニュー】
「水晶粉果」580円
「精進春菊餃」「真味魚翅餃」「宝味蝦餃皇」「海鮮焼売」 各680円
「広州腊腸」「鮮蝦仁腸粉」 800円
「広州烤鴨」 1,200円
「広東焼羊排」 1,300円

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。また、価格はすべて税込です。

宝味八萬(ほうみはちまん)

住所
東京都渋谷区富ケ谷1-53-4 リコービル1F
電話番号
03-5761-6066
営業時間
ランチ11:00〜15:00(L.O.14:30)、ディナー17:00〜23:00(L.O22:00)
定休日:無休
公式サイト
公式ページhttps://www.ajibo.jp/

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。