武蔵小山「豚星」
最先端の店や老舗、和の名店から海外そのままの料理を再現する店まで、東京にはない店がないと思われる。そして、東京にはまだまだ知られざる名店がある。東京の街の懐の深さが育んだ店。そして、客はそんな店に育まれる。東京にしかない店とはどんな店か？連載企画「幸食のすゝめ」の森一起さんに３軒選んでいただいた。時はシルバーウイーク、上京したご両親を連れて行くというチョイスも加味されている。
＜以下、森さん＞
東京という大都会は、夥しい数の地方出身者の見果てぬ夢でできている。その爽やかな成功例を見せることも、郷里で離れて暮らすご両親には嬉しい東京土産になるかもしれない。東急目黒線の武蔵小山、昭和レトロな街の空気を自然に呼吸し、近隣の大衆酒場にも敬意を払いながら、街に新しい伝説を作った『豚星』。頭でっかちなもつ焼きファンなら引いてしまいそうな洒落た内装、ビストロ的な黒板メニュー。しかし、出てくる料理は創意と工夫に満ちて、しっかり旨い。煙もくもく、脂べったりの古典的もつ焼き屋ではないから、両親も居心地佳い時間が過ごせるだろう。この一角は再開発が決まり、現店舗での営業は今月限り。消滅のシナリオを用意された街で、てきぱきと働く地方の若者たちの笑顔。それは、ご両親の胸に温かな句読点を打つだろう。
＜メニュー＞
串130円、ドリンク類390円
豚星（ぶたぼし）
- 電話番号
- -
- 営業時間
- 17:00～23:30
- 定休日
- 定休日 月曜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
中野「味治」
背開きか、腹開きか、いったん蒸すか、最初から直火で焼き上げるか…。全国のどこに行っても、鰻屋のお品書きはだいたい決まっている。鰻のあらゆる部分を無駄にすることなく、各部分が持つ微妙な旨味の違いを味わいつくす鰻の串焼きに出会えるのは、まず東京だけだろう。漫画「美味しんぼ・驚きの日本味」のモデルにもなった名店『川二郎』のご主人が、更なる味を追求して開いた中野の『味治』。短冊焼、きも焼、えり焼、八幡巻から成る「一通り」を頼めば、名店を支えてきた職人芸、串焼きの至宝を存分に堪能できるだろう。もちろん、〆には甘さを控えた東京風のタレに潜らせた極上の「うな丼」「うな重」も待っている。完成された鰻料理の数々は、鰻の真の価値をご両親に伝えてくれるに違いない。
＜メニュー＞
一通り(串セット)1,240円、うな丼1,700円
味治（みはる）
- 電話番号
- 03-6677-1990
- 営業時間
- 12:00～14:00、17:00～21:00
- 定休日
- 定休日 日曜
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浅草「正直ビヤホール」
浅草寺か、スカイツリーか、ご両親を連れての東京観光なら、やはり浅草だろう。人形焼きや揚げ饅頭をつまみながら仲見世を冷やかし、蕎麦か天麩羅、洋食など下町の味覚を楽しむ。クライマックスは観音裏、言問通り沿いの『正直ビヤホール』に向かおう。メニューは「生ビール」一品のみという潔さ、ビールのサイズさえない。最も美味しい温度で飲み切れるように配慮された、ごく薄いグラス。何度か泡を切りながら、丁寧に注がれる生ビール。アテは特にないが、飲む程にチーズや煎餅などが回ってくる。もちろん、チャージなんて厄介なものは存在しない。浅草生まれの浅草育ち、白い割烹服がお似合いのママの凛とした佇まいと洒脱なトーク。それは明治以来、常にモダンであることの宿命を帯び続けた街、東京という都市そのものだ。
＜メニュー＞
生ビール600円
※価格はすべて税込
※森一起さんのスペシャルな記事『幸食秘宝館・武蔵小山、グルメランキング上位には載らないホントウの名店3軒を巡る』はこちら
正直ビヤホール
- 電話番号
- 03-3841-7947
- 営業時間
- 17:00～23:00
- 定休日
- 定休日 不定
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