8月14日「カラブリアで出逢ったマンマの味を」
「モッツァレラが溶けてしまうのがいやなので、フライパンの底が手で触れるような温度になってから入れます。ぬるいという人もいますが、元々イタリア人は、熱々も冷たすぎるのも食べないですから」。
イルジョットの高橋シェフは、イタリアでの修業先より、休みの日に地方を回って食べる料理に心惹かれたという。
温かくてたくましい、毎日食べても飽きないマンマの料理である。
このパスタは、カラブリア州を旅行した時に出会った。
カバティエリにからむのは、二種類のトマトとモッツァレラ、バジルにカラブリアの唐辛子入りソーセージのンドゥイヤ。
モッツァレラの甘いコクと乳の香り、バジルの香りにトマトの甘みにンドゥイヤの辛味がヒリリと効いて引き締める。
そしてカバティエリは、その中で嬉しそうに弾む。
モチッと歯の間で弾む。
僕らも当然嬉しくなって、もうフォークを運ぶ手が止らない。
IL GiOTTO(イル ジョット)
- 電話番号
- 03-6805-9229
- 営業時間
- 18:00~24:00(L.O.22:30)
- 定休日
- 定休日 火曜日および年末年始
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
8月15日「2年前、成都で」
代々木上原「ユイフェイ」の「豚ガツのピリ辛和え」は、下ごしらえの確かさが光っている。
その歯応えの痛快さを生かしたガツの下処理がよく、葱の薄切りもガツも同寸に切られていて、食べゆく楽しみを与えてくれる。
ソースの辛味と甘みのバランス、その味にアクセントする下に敷かれたレモンの酸味と香りも効果的でいい。
これがあってこそ、しみじみとしたおいしさが生まれる。
佐藤シェフは若いながらも、その辺りをわきまえていて、清々しい。
いたずらっ子のような笑顔に見覚えあり、「あれどこかであったことがありませんでしたか?」と聞いたら、「僕もそう思っていました」と笑う。
二人で記憶をたぐり寄せて、同時に言った。
「ああ、成都だ!」
成都に留学していた彼と、2年前に大勢で食事をしていた。
趙陽さんも一緒だった。
「あれはいい勉強をさせていただきました」と彼が言う。
あれを食べた彼なら、もっともっと今後が期待できる。
楽しみな店がまた増えたね。
<メニュー>
豚ガツのピリ辛和え 1,000円(税別)
虞妃(Yui Fei)
- 電話番号
- 050-3374-1197
- 営業時間
- 月・火・木・金 ランチ:11:30~14:30(L.O.14:00) 月・火・木・金 ディナー:17:00~23:00(L.O.22:00) 土・日 ランチ:12:00~14:30(L.O.14:00) 土・日 ディナー:18:00~23:00(L.O.22:00)
- 定休日
- 毎週水曜日 第2火曜日
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8月19日「ビフカツとカレーの邂逅」
旬香亭のビフカツは、そのままでうまい。
わさび醤油、デミグラスソース、太陽ウースーターソース、塩が添えられるが、なにもつけず、そのままパクってやるのがうまい。
ラギオールでカツをサクッと切る。
断面の美しさを愛でる。
フォークに刺して鼻に近づけ、衣の香りを嗅ぐ。
サクッと衣に歯が入ると、柔らかな肉に包まれて、肉の香りが滲み出る。
アンガスと黒毛を掛け合わせた、優しい滋味を持った肉で、脂のダレがないのがいい。
品があるし、塩が適妙なので、そのままがこの肉を生かす。
デミグラスもわさび醤油も、肉より勝ってしまう。おいしくなりすぎてしまう。
太陽ウースーターソースをキャベツにかけ、そのキャベツと合わせて食べてもいい。
ウースーターの辛さが、肉の穏やかな甘みを持ち上げる。
そのときカレーが到着した。
辛さか。
カツをスプーンに乗せ、カレーの中に少し、ほんの少しだけ沈めて口に運んでみた。
カレーは、甘みとうま味を抑えた品の良さで、スパイスの香りが高い。
そんなカレーだからこそ、嬉しそうに牛肉の味を、ビフカツの味を輝かすのであった。
<メニュー>
ビーフカツレツ2,000円、ビーフカツレツ上撰3,600円、欧風ビーフカレー1,800円(税別)
旬香亭
- 電話番号
- 03-5927-1606
- 営業時間
- 11:00~L.O.14:30、17:00~L.O.22:00
- 定休日
- 定休日 最終月曜
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8月22日「十二分に、ハムカツ」
カツサンドではない。
ハムカツサンドである。
加藤牛肉店のハムカツサンドはご馳走であった。
噛めば、ハムが、肉肉肉と主張して、歯を包み込む。
むむむむっと、肉感的に舌を凌駕し、これはうまいぞとつぶやかせる。
しかしおじさんは、あの薄いハムカツに郷愁を感じてしまう。
これは十分に、いや十二分にうまいのだが、あの懸命に舌で弄らないとハムがどこにいるのかわからない、薄いハムカツサンドが恋しくなる。
ハムと名乗りながら、ソーセージじゃないかという、名称詐称問題。
ハムカツと名乗りながらも、カツの方が厚いじゃないかという、誇大表示問題。
それらをすべて許容し、社会矛盾や不条理を飲み込んで、ハムの存在をまさぐる。
ああハムがいた。
君はそんなところにひっそりと隠れていたんだねと、出会いの喜びを謳歌し、自らの努力も評価してやる。
どうやら、これだけは譲れない。
加藤牛肉店
- 電話番号
- 03-6427-5961
- 営業時間
- 11:30~14:00、18:00~23:30
- 定休日
- 定休日 日曜
- 公式サイト
- http://shibu2.com/
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