新しい日本食のレストランが次々オープンしているニューヨーク。居酒屋も増えているが、店名に「居酒屋」をつけたレストランが昨年10月、イーストビレッジにオープンした。この居酒屋、何を食べてもハズレなし。
内装はごく普通だが、著名なセレクトショップのオーナーが貸し切りで誕生パーティをやり、芸能人が来ることも珍しくないのは、その味の確かさを物語っているといえるだろう。
“居酒屋”カルチャーを伝えたい
それにしても、何故「居酒屋」という名前をつけたのか?
CEOの金山雄大さんは、「それぞれ違う料理を頼んでシェアする居酒屋カルチャーを伝えるため」と説明する。そのために、メニューにオーダーの仕方を書いた。「まず、やみつきキャベツをオーダーする」「ビールか酒をオーダーする」といった順に続いて、アペタイザーとメインを数品ずつ頼み、「シメ」の料理を頼み、甘いものを頼む、という具合だ。日本人には周知でも、ニューヨーカーにとっては「シメ?」という感じだろう。それでもお客さんたちは面白がって「ルール」に従い、客単価も上がったそうだ。
そんなわけで、居酒屋で一番人気のあるメニューはやみつきキャベツ。2番目はチキン南蛮、3番目はハンバーグだ。こだわりの和州牛(和牛のDNAが入った米国産牛)を使っていて、大量に仕入れられないことから、ハンバーグは1日5食に限定している。
洋食が比較的多いのは、シェフの渡辺大さんが日本ではナポリピザで人気があったイタリアンのシェフだったことに起因する。日本で渡辺さんの料理のファンだった音楽関係のお客さんたちが投資家となって、レストランオープンにつながった。
一方、金山さんはファッション工科大学を卒業し、いったんファッション業界で就職したものの、ルームメートだった渡辺さんに誘われて、23歳でCEOに抜擢された。金山さんはレストラン経営の経験はなかったが、ニューヨークのレストラン業界の友人は多く、そうした友人たちから得た情報と自分で組み立てたビジネスプランが投資家たちに気に入られたのである。
NYタイムズが注目した店
しかし実はこの1年、知られざる苦労もあった。オープンして1週間後、電力会社の点検が入り、設備に問題が発覚したとして、ガスの供給を止められたのである。そしてなんと、「ガスなし状態」は11ヶ月にも及んだ。私もそんなことはつゆ知らず食べていたが、11ヶ月も卓上コンロ2台と電気式フライヤー2台で営業し続けたというから驚いてしまう。そんな中、開店3ヵ月後にニューヨークタイムズに紹介された居酒屋。記者は、ガスなしでつくられた料理だったことは知らない。これで、渡辺さんが自信を深めたのも当然だろう。
ガスも復活し、メニューはますます増えるが、寒くなる季節に向けてのお勧めはドリアという。ドリアは渡辺さんの真骨頂で、いくつかバリエーションが出てきそうだ。
ちなみにお酒は、「話すことが好きなので、背景のストーリーが面白いものを選んでいます」と金山さん。蔵元がニューヨークに来たときにイベントをすることもあり、そうしたイベントもお客さんたちに喜ばれている。
IZAKAYA
- 電話番号
- +1 917-475-1284
- 営業時間
- 18:00~0:00、金-土18:00~1:00
- 定休日
- 定休日 日曜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。