香港肉料理とワインを立ち飲みという裏ワザで、飲みにゆきます。

【連載】小石原はるかの「いま、飲みにゆきます」 三軒目  トレンドに詳しく、「東京最高のレストラン」から「東京カレンダー」などに至るまで、引っ張りだこの小石原さん。そんないろんな店を知り尽くした彼女が愛している店とは?ホントの、いい店うまいい店に飲みに行っていただく。

2015年10月27日
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香港肉料理とワインを立ち飲みという裏ワザで、飲みにゆきます。
Summary
・一軒家で香港スタイルの焼き物とナチュラルなワイン
・超人気ビストロ「祥瑞」の姉妹店
・ライヴな特別席

これからのシーズン、つい飲み過ぎてしまいます。

“ピンクの小粒”こと「コーラック」(大正製薬)が滞りやすい人(何が滞りやすいか、は各自お調べ下さい)の味方なら、“オレンジの標準的サイズの粒”であるところの「ミラグレーン錠」(日邦薬品工業)が酒飲みの守り神なことはつとに知られていますが、このところAmazonの在庫が切れているのは、まさか流行りの爆買いの波がここにも!? 

“ナチュラルワイン角打ち”

というようなことを心配しながら今宵訪れますのは、外苑前の「ワタリウム美術館」至近にあります、『楽記(らっき)』。一見すると個人宅のような一軒家なので、入り口の扉の上に光る“g g Lucky”というネオン管がちょっとした目印になるかと。でもって、お店とはまったく関係ないのだけれど、このネオン管を見るたびに私は必ず『GOLDEN LUCKY』(©榎本俊二)を思い出す。不条理マンガ全盛期に咲いた一輪の珍花。とにかくひたすら「Don't think. FEEL!」(©ブルース・リー)な世界。21世紀になってから太田出版から出た完全版は装丁も美しいからみんな読むといいと思うんだ。

銀座のフレンチから青山の香港料理に

閑話休題。『楽記』のネオン管の“g g”は、店主の勝山晋作さんがかつて東銀座の三原小路で営んでいた『Grape Gumbo』に因んだもの。『Grape Gumbo』の料理は“肉も野菜も骨格がっしりのフレンチ(中心のおいしいもの)”だったのに対し、『楽記』は“焼烤(焼物)をメインとした広東料理”だけれど、合わせる飲み物がヴァン・ナチュールであることは共通。ご存じの方も多いでしょうが、なんといっても勝山さんは現在のヴァン・ナチュール興隆の祖ですもの! そんな “Monsieurヴァン・ナチュール”を、11/29(日)に開催される自然なワインのフェスティバル「FESTIVIN」の準備にお忙しい時期と重々承知しつつ、飲み相手として招集。

本来のダイニングスペースは建物の2階と地下1階にあるのですが、実は1階の厨房前に丸テーブルが1卓あり、ここで立ち飲みが可能に。勝山さんの表現を借りると「ワイン角打ちだね」。ちなみに2組以上になると自動的にレジ部分へも拡張されるそうで、この夜もレジ前でグラスを傾ける美女の姿を目撃。

腸詰めにロゼ!

つまみには、メニューの主軸である焼き物ヴァリエーションのなかから、勝山さんのおすすめを伺いつつ、自家製腸詰、皮付き豚バラ肉のクリスピー、炭火釜焼きアヒル、炭火釜焼きチャーシューをチョイス。“お肉もいいけど野菜もね”な気持ちでアスパラガスの上湯がけと、「これはうまいよ!」という鶴の一声で即決した海老の香味揚げも。ワインももちろん、勝山さんに進められるまま注がれるまま。

豚バラ肉の皮は常に安定してカリカリだし、アヒルやチャーシューのしっとりした焼き上がりにもうっとり。自然な甘味の腸詰はロゼとの相性もすこぶる宜しく、そして件の海老は五香粉風味で好みにジャストミート(©福澤朗)! 合間に上湯のクリアな旨味でひと休みひと休み(©一休さん)。

二日酔いはしないけど確実に飲み過ぎる店

テーブルについて食するのももちろん素敵。が、ここでガラスの向こうの厨房の活気を眺めつつ、行き交うスタッフと言葉をかわしつつ、焼いた肉をつまんでワインを飲んで、というゆるゆる加減が、実に心地良く、楽しい。そういえば飲んでいる最中、勝山さんに「勝山さんがお店を開く理由って何ですか?」と尋ねたら「なによりもまず、楽しいから」という答えがあったっけ。飲食店を経営する上でなにかしらの厳しさ、辛さはあることは百も承知だけれど、営んでいる人達の気持ちの土台に「楽しい」があるお店は、きっと訪れる私達も、きっとたいてい「楽しい」んだなあ……。

なーんて殊勝なことを珍しく考えたにもかかわらず、今ひとつ記憶の色彩やら輪郭やらがうっすらしているのは、稀代の駄洒落マスターでもある勝山さんの代表作「何を1.5リットル!(※野暮と承知で註釈入れますと「何を言ってん(だ!)」にかかっているんですねコレ)」を、浴びせられるくらいに飲んじゃったからです。嗚呼、「Don't think. FEEL!」(既出)を地で行く飲みっぷり。けれど “ヴァン・ナチュールあるある”で、翌日の各種二日酔い症状はゼロ。「ミラグレーン錠」節約できてよかった!

<メニュー>
焼き物盛り合わせ1,000円前後〜、アスパラガスの上湯がけ1,500円,海老の香味揚げ1,800円

写真/岡本 寿

楽記

住所
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前3-7-4
電話番号
03-3470-0289
営業時間
18:00〜L.O.22:00、木・金〜L.O.22:30、土曜17:00〜L.O.21:30
定休日
定休日 日曜、祝日不定休 
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/1n9e3g8d0000/

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
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