希少な「むなかた牛」をはじめ、あらゆる肉を塊で!
今回、はしご酒に連れてってくれたのは、金澤正人さん。福岡・北天神にある須崎公園の前に佇む活版印刷スタジオ「CULTA(カルタ)」の主である。
大学を卒業後、約6年の福岡での福岡生活を経て、勤めていた大手印刷機メーカーの東京本社へ。仕事を通じて出会った活版印刷職人の中野卓也氏に出会い、活版印刷の技術と芸術性に感銘を受けたことがきっかけで、この世界に入ったという。2011年、福岡に戻り、2012年に活版印刷スタジオ「CULTA」をオープンさせた。
名刺やショップカードの印刷を行うだけでなく、企画やデザインなども手掛ける金澤さん。彼のもとには、高感度な飲食店からの依頼も多い。
今回、1軒目に訪れたのも、金澤さん自身がロゴデザインやショップの印刷物を手掛けた「Griglia Di Gaetano(グリリア ディ ガエターノ)」だ。
西鉄薬院駅のすぐそばにある「Gaetano(ガエターノ)」といえば、イタリア・ナポリ湾に浮かぶイスキア島の名店「PIZZERIA DA GAETANO」の屋号を継承することを、世界で唯一許された舌間智英(通称トミー)さんが営む超人気店。「真のナポリピッツァ協会」の技術指導員を務めるガエターノ・ファツィオ氏のもとで6年間修業したトミーさんが焼くピッツァを求めて、全国から訪れるファンも多い。
その2号店として2014年9月にオープンしたこの店のメインは、グリル料理とワインだ。
店に入り、少し落ち着いた頃、店主の高松謙太郎さんが木のボードにのった肉の塊を持ってきてくれた。
ボードに盛られたお肉は、どれも美味しそう。「当店で使用している牛肉は地元・福岡産の「むなかた牛」です」と高松さん。ほかにもシャラン鴨や福岡やよい豚など、牛肉以外のアイテムも豊富に揃えている。
“むなかた”(宗像)とは、福岡市から車で東に30分ほどのベッドタウン。この店で扱う「むなかた牛」は、全て「すすき牧場」で育てたもの。出荷頭数が少なく、福岡でもあまり味わうことのできない稀少ブランドだ。自家生産のお米を使った飼料で育てられるこの肉は、味のある柔らかい赤身、あっさりした脂が特長で、旨味が凝縮したブランド牛である。
「パワーを注入したいときは、ここに来て肉を食べます」と、金澤さん。この日は、入荷数が少ないため、あればラッキーと言われている「Tボーン」(600g12,800円)をオーダー。焼き上がりまでは、ワインをいただくことにした。
この日のワインは、同じビルの2階にあり、イタリアの自然派食材やワインの販売・卸を手掛ける「ROBABUONA(ロバ・ヴォーナ)」のもの。実は「ROBABUONA」の印刷物なども金澤さんが手掛けたそうだ。
「“世界のいいもの”をテーマに、音楽も店内のポスターも、全部、自分が好きなものを集めました」と高松さん。今回は、ガッツリお肉を楽しんだが、カウンターで一品料理とワインを楽しむだけでもOKという。
「お肉を求めて来られるお客様も多いですが、もっと自由に利用していただいて構いません。たとえば、女性2名で訪れたとき、『ボトル1本は無理かもな〜。でもあワイン飲みたいな〜』となったとします。そんなとき、私はボトルを開けて、飲まれた量で計算するんです。お肉にしても、ほかのメニューにしても、気軽に要望を言って欲しいですね」と、高松さん。
そうこうしているうちに、オーダーしたむなかた牛のTボーンステーキが登場。旨味が凝縮した極上の肉は、するすると胃に収まっていった。
Grilia di GAETANO(グリリア ディ ガエターノ)
- 電話番号
- 092-713-5077
- 営業時間
- 18:00〜翌2:00(L.O.24:00)
- 定休日
- 定休日 日曜、第1月曜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
■福岡における自然派ワイン先駆け
歩くこと10分弱。「炭とワイン イル・フェ・ソワフ」に到着。
2007年9月にオープンしたこの店は、福岡における自然派ワインの先駆け的存在。“ワインはわからない”という想いを変えたいと、店主の大熊雅也さんがセレクトする“飲んでおいしい”ワインを揃えている。
店主の大熊さんは、このシリーズの「第二夜」に登場した黄(こう)ちゃんが働く「とどろき酒店」の店主・轟木渡さんの同級生。福岡近郊の糸島という土地で、大熊さん自ら育てた野菜や、朝曳きにこだわった鶏を備長炭で焼きながら、ワインを注ぎ、おしゃべりもする。
「ワインのセレクトも、料理も、人も。全てにおいて、バランスが取れているんですよね」と金澤さん。炭火焼は1本からオーダーできるので、2軒目などでも気軽に楽しむことができる。
▲売り切れ必至! 新鮮なものを軽く炙っていただく「レバー(タレ)」(216円)
炭とワイン il fait soif (スミトワイン イルフェソワフ)
- 電話番号
- 092-713-4550
- 営業時間
- 18:00~L.O.23:00
- 定休日
- 定休日 日曜、祝日の月曜日
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
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ワインにする? コーヒーにする?
「達ちゃんに会いに行こう」。そう言って金澤さんは次なる店へ向かった。
達ちゃんとは、3坪弱の狭小空間で、地球と人に優しいヴァンナチュールと、風味際立つスペシャルティコーヒーを提供する「ECRU.(エクリュ)」の店主・原田達也さんのこと。営業時間は昼12時から深夜0時。お昼からワインを飲むも、飲み会の帰りにコーヒーを飲むも自由だ。
まずは、金澤さん自身が好んで飲むワインからいただくことにする。
「自然派ワインのさらに先を行くワインバー。達ちゃんは、個性的で旨いワインを飲ませてくれる。1軒目から2軒目、2軒目から3軒目など、はしご酒の合間に来ることが多いですね」
「今日のおすすめは、大好きな造り手であり、現在は佐渡島に暮らすジャンマルク・ブリニョ氏が醸造したもの。凄く美味しいですよ」と原田さん。店内はスタンディング。軽く1杯飲んだところで、「またね」と店を後にした。
▲単一農園、単一品種にこだわったスペシャルティコーヒー
ECRU.(エクリュ)
- 電話番号
- 092-791-6833
- 営業時間
- 12:00~24:00
- 定休日
- 定休日 日曜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
世界中からシングルモルト好きが訪れる店
いつもなら、3軒でお開きとなるこのシリーズだけど、今宵はもう一軒。金澤さんが「生涯最後に行きたい店」と語る「Bar kitchen(バーキッチン)」へ。
今から10数年前、ディスコやクラブが建ち並び、マリアストリートと呼ばれた細い路地。今はひっそりとした雰囲気の場所に、この店はある。
物腰のやわらかい店主・岡智行(おか ともゆき)さんは、スコッチ文化研究所福岡支部の世話人を務める人物。
「私財を投げ打って酒を買うマスターのもと、素晴らしい物語とともに、1600本のウイスキーの中から好みと予算に合わせてセレクトしてくれるところが、気に入っています」
実は、この店、2104年9月に久留米から福岡へ移転してきたばかり。
「この9.5mのカウンターが入る空間を探していたら、ここだったんです」と、岡さん。
オーセンティックでありながら、敷居の高さを感じないのも、岡さんの人柄あってこそ。
「実はこの店、街場の酒屋で買えるウイスキーは置いていません。限定モノやビンテージなど、レアものばかり。世界中から岡さんを訪ねてくるのに、福岡での知名度はまだまだ低いんですよね」と金澤さん。
カウンターには、女性一人客の姿もあり、一人でも気軽に訪れられるのもいい。
「福岡は同じ価値観を持った人が、自然と寄り添う街。その距離感、サイズ感が、ちょうどいいですね」
福岡のポテンシャルの高さを改めて感じさせられる個性派4軒。出逢えたことに感謝したい。
写真/近藤さくら
Bar kitchen(バーキッチン)
- 電話番号
- 092-791-5189
- 営業時間
- 18:00〜翌3:00
- 定休日
- 定休日 なし
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