Tiberi La Torre rosso IGT2014
イタリアは不思議な国だ。スローフード運動をはじめた国でもある反面、化学的なアプローチでのモノ作りも好きだし、ワインだってそれまでのルールを破って「スーパー・タスカン」なんてものも生まれたし、今度はそれをDOCにしたり、と適当なのかなんなのか、日本人の感覚では理解しづらい面もあるが、それだけ面白い国ではある。
ただ、ワイン造りにおいては、イタリアは気候に恵まれているだけに、特に深く考えずに造っていたら実はナチュラルだったということも少なくない。
今回紹介する1本もまた、そんな感覚で造られたものだといえるだろう。
六本木でも長い歴史を持つワインバーであり、いまやパリの名店「セヴェロ」仕込のステーキを目当てに訪れる人たちが殺到し、予約困難なビストロでもある「祥瑞」の柴山健矢さんにその魅力を語っていただいた。
<柴山さん>
このワインには、試飲会でたまたま出逢ったんですが、いま一番オススメしている、みなさんに飲んでもらいたい一本ですね。
ヴァンナチュールの世界って、まだまだ生産者数、ワインの本数が少ないということもあって(一説には、世界のワイン生産量の数%)、業界の人たちが共通で知っているスター的な生産者のワインをインポーターからみんなが振り分けてもらっているという状況だと思います。そういう中で、まったく事前情報なしで出逢えたのがこのTiberiなんです。
味は、イタリアワインでありながら、僕らが扱うフランスのワインに似たニュアンスがあります。イタリアワインってざっくりいうと、果実味が強いんですが、これはちゃんと酸もあって、イタリアとフランスの中間的な印象があるんです。
僕はヴァンナチュールについていうと、フランスのワインは農家的な印象が強くて「Tシャツ」というイメージ。それに対して、イタリアのワインはどこか貴族的というのか「ワイシャツ」というイメージを持っています。このTiberiのワインは、どっちも併せ持っているポロシャツですね。
どうしてそんな印象があるのかと思ってセパージュを見たら、カナイオーロ、チリエジョーロとともにガメイ トラジメーノという名前が書いてあったので、これだと思ったんです。イタリアでガメイを造るとこんな感じで、フランスのナチュールのようなダシっぽい旨みがでるのかと、、、
でも、調べたら関係なかったです。
ガメイ トラジメーノというのは、このワインが造られるウンブリアでのグルナッシュの別名。つまり、アリカンテ、カンノナウ、トカイ・ロッソと同じものみたいです。紛らわしいですね。
ちなみに、このTiberiはウンブリアの州都ペルージャから南西に15kmのモンテペトロイオという人口200人ほどの小さな農村で150年前から6代に渡り、小麦を中心とした農業を営んでいるそうです。6代目のフェデリコのお爺さんが自家消費用にワインを造っていたのですが、それがとてもナチュラル。
農薬や化学肥料も使わず、他の植物の種も撒かなければ、銅や硫黄も極力使わないという、ほぼ自然栽培と呼べるような畑。収穫後も7日間のマセラシオンを行い、天然酵母で2~3週間の発酵。添加物は一切使わず、ノンフィルター、亜硫酸塩も無添加という、徹底的にナチュラルなワインなんです。
ワインは頭で飲むものじゃない、知識よりも感覚で美味しいと思ったものを提供するといったぼくらのサーヴィスの原点を気づかせてくれたワインかも。
<祥瑞での価格>
ボトル6,000円
祥瑞 (ションズイ)
- 電話番号
- 03-3405-7478
- 営業時間
- 18:30~21:30
- 定休日
- 定休日 日曜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。