先週、Facebookのタイムラインには、某百貨店が毎年暮れに開催するシャンパーニュのイベントが連日のようにアップされていた。来日した生産者とのツーショット写真で、やたら目立ったのがセドリック・ブシャール。シャンパーニュ南部、オーブ県のRMだが、えらい人気である。そんな画像を見ていたら、彼のシャンパーニュを久しぶりに飲みたくなった。
広尾のシャンパンバーでいただく夜
・・・ということで、今宵は恵比寿の「アレシア」へ。
私がセドリックの元を初めて訪ねたのは2007年のこと。その年のゴー・ミヨーのワインガイドで、シャンパーニュ地方のベスト生産者に選ばれた。0.9ヘクタールのブドウ畑を借り受けて、初めて醸造したのが2000年。02年に初リリースした本数はたったの3,600本にすぎない。「オレのシャンパーニュはオートクチュール」と吠えたセドリック。当時まだ31歳の若造が、なんたるビッグマウス(!)と思ったものだ。
カリスマが一目置く
単一品種の単一のリュー・ディ(lieux-dits=ある種の区画)から造られた単一年のシャンパーニュ。ガス圧は4気圧半と低く、ドザージュ・ゼロのそれは、シャンパーニュというよりむしろワインに近い。いや、セドリック自身、本当に造りたいのはワインなのだろう。無論、本格的にワインを造るには寒すぎるといった事情があるにしても、彼にとって気泡はお飾り程度にすぎないのだ。
そういえば3年ほど前に再訪した際には、こんなことを話していた。RMのカリスマとして知られるジャック・セロスは、自分のところを訪ねてくる愛好家に、セドリックのもとも訪ねるようすすめるという。お互い一度も面識がなく、シャンパーニュのスタイルは正反対であるにもかかわらず……である。巨匠がセドリックの力量を認めている証であろう。
初めて訪ねた時、いわゆるドメーヌものの「ローズ・ド・ジャンヌ」はピノ・ノワールのレ・ズュルスュルのみだったが、その後、シャルドネのラ・オート・ランブレとピノ・ブランのレ・ボロレが加わり、現在はさらに増えて、全部で7アイテムを造っているらしい。いずれも生産本数が少なく、リリース直後に消えてなくなる、まさに幻のシャンパーニュと化している。
アレシアのソムリエール、川本ちひろさんも、セドリック・ブシャールのシャンパーニュに惚れ込み、ランスやエペルネから遠く離れた辺鄙な村、セル・シュール・ウールスまで訪ねた口だ。カウンターに並ぶのはピノ・ブランのラ・ボロレと複数のピノ・ノワールのクローンが植わっているというプレル。いつでもあると思うなローズ・ド・ジャンヌ、急いで行かねばなるまい。
※柳忠之さんのスペシャルな記事『キンメリジャンがワインに何を与えるのか?~ワインマニアのためのテロワール講座その1~』はこちら
ALETHEIA (アレシア)
- 電話番号
- -
- 営業時間
- 19:00~翌L.O.1:30
- 定休日
- 定休日 月曜・第2&4火曜休
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。