前回の記事では恵比寿エリアにバル文化が根付いた背景を紹介したが、ここではよりバル文化を楽しむために知っておきたい、バルの本場であるスペイン流のスタイルをご紹介。スペインバルシーンを牽引する恵比寿の人気店「バル・ペピート」の太田 聡シェフにお話を伺った。
板前出身のシェフが魅了された、バル料理のトラディショナルとは
競争激しい恵比寿のバル密集エリアにあって、「バル・ペピート」が常にその起点となる理由は、「トラディショナルであり続けるから」という太田シェフ。10年前、和食の板前出身という異色の経歴をもつシェフがスペイン料理に惹かれたのは、“トラディショナル=伝統”という和食にも通ずる部分だった。
そんな伝統へのこだわりはメニューにも表れる。入り口の頭上高くに掲げられた黒板メニューは、このお店の前身である「ティオ・ダンジョウ」時代からほぼ10年変わってないものが多いという。逆に「ちょっと変えてみようかな」と試行しようものなら、常連さんから「あれないの?」と言われてしまったりして、変えられない。あえて季節のメニューなどはカウンターサイドの黒板に……と、伝統という枠の内側で、守り抜く部分とオリジナルのすみ分けを施していた。
また、オープン前からずらりとカウンターに並ぶピンチョスは、スペインでも美食エリアとして名高いバスク地方・サンセバスチャンのバルに倣ったスタイル。入り口の外からでも、どういった料理かがわかるのも魅力のひとつだ。1個300円という料金設定も本場に近い。
「バル・ペピート」ではサンセバスチャンの伝統料理「チストラ」と呼ばれるソーセージ料理を店の看板メニューとしている(800円)。一般的なチョリソーとは異なり、皮がカリカリのベーコンのような食感に仕立てられた羊の腸詰めは、伝統的な調理法と聞けど、とても新鮮。パプリカとニンニクで臭みは消され、クセになるうまみだけが詰まっている。こちらはセットで提供されるパンとともに自家製というこだわりようだ。ちなみにスペインでは12月21日は「サント・トマス」と呼ばれる祭礼があり、サンセバスチャンではこのチストラを食べるのが慣わしだそう。
また、「バスク地方ではリンゴの収穫の時期になると、リンゴを発酵させて作った、できたてのスパークリングワイン『シードル』にチストラを合わせます」と太田シェフ。これまた伝統的なマリアージュを紹介してくれる。より通を気取るなら、「シドラ(シードルのスペイン語読み、シードルはフランス語)」とオーダーをしてみてはいかがだろうか。
写真/海保竜平
※「バル・ペピート」では2015年12月21~26日の5日間、「サント・トマス」にちなんでチストラとパンのピンチョスを無料で振舞ってくれるイベントを実施予定。この機会にぜひ!
カンタラナス バル・ペピート
- 電話番号
- 03-6277-4114
- 営業時間
- 月~金17:00~24:00(L.O.23:00)、土14:00~24:00(L.O.23:00)
- 定休日
- 定休日 日・祝
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。