東京都心の本日の最低気温は摂氏3度。週前半の温かさはどこへやら。寒さが身にしみる今宵は、温かなおでんを突っつきながら、美味しいシャンパーニュを一杯。そういえば、シャルトーニュ・タイエの新アイテムが入荷したとか言ってたっけ?
ジャック・セロスに有望と言わしめた若手
シャルトーニュ・タイエはランスの北西メルフィ村にあるレコルタン・マニピュラン。2006年以降、現在32歳になるアレクサンドルがシャンパーニュ造りに励んでいる。
彼の名前を初めて聞いたのは、ジャック・セロスのアンセルムから。「うちで研修してるのにアレクサンドルってのがいるんだけど、こいつはジェローム・プレヴォやオリヴィエ・コラン並みに有望だね」。
それから5年後にメルフィの蔵を訪ねてみると、そやつは情熱の塊のような男だった。挨拶もそこそこ、こちらの取材の趣旨も聞かぬうちに、自然農法の大家、福岡正信著「自然に還る」のフランス語版を見せて語り出す。続いて自分が畑をもつメルフィの土壌について。格付け84パーセントの「その他のクリュ」だが、17世紀から19世紀の文献を調べると、メルフィのブドウは高値で取り引きされていたことがわかり、格付けが低いのは戦争で畑が荒廃したせいだという。
実家に戻るやいなや、彼がまず行ったのは除草剤の使用を止めること。さらに土壌研究の権威、クロード・ブルギニヨン教授に依頼して、所有畑の土壌を分析してもらった。すると区画ごとに土壌が異なることがわかり、単一区画、単一品種、単一年という、セドリック・ブシャールを彷彿させるキュヴェを造り始めた。
蔵の中に入ると、ステンレスタンクやオークの樽に混じって、卵型のコンクリートタンクまであるではないか! オーク樽の並び方にいたっては、「東西方向より南北に並べたほうがいいんだよね」などと語る。おぬし風水まで研究してるのか?
まあ、当時は20代後半という若さ。なにごとにも貪欲にチャレンジするエネルギーに満ち溢れていた。
じつはシャルトーニュ・タイエというRM、親父さんの時代からシャンパーニュの出来は素晴らしく、とりわけ「フィアークル」という名のキュヴェはその洗練さと奥行きにおいて、大手のキュヴェ・プレスティージュにも見劣りしないものだった。また一方、アレクサンドルが造り始めた「オリゾー」や「ウルトビーズ」といった単一区画ものは、当然ながらピュアさが際立ち、その精緻な味わいにも多いに魅かれるものがある。
さて、新アイテムというのはピノ・ムニエ100パーセントの「レットル・ド・モン・ムニエ」。アルフォンス・ドーデの短編集「レットル・ド・モン・ムーラン(邦題「風車小屋だより」)」に引っかけているらしい。ちなみにムーラン(風車小屋)で粉ひきする人をムニエという。温もりのあるムニエ100パーセントのシャンパーニュとおでん、なんともよさげな組み合わせではないか。
「dressingのコラムを読んだ」と言えば今だけ!紹介制の隠れ家にてシャンパーニュを
お店は麻布十番/六本木エリアにひっそり佇む「Champagne Bar HACHI」。この時期は不定期ながらおでんがメニューに登場。
シャルトーニュ・タイエは「レットル・ド・モン・ムニエ」のほか、単一区画ものの「オリゾー」や「ウルトビーズ」もラインナップ。クリスマスイヴならロマンティックなロゼもよろしかろう。
おっと、ひとつ言っておかねばならないのは、ここが原則紹介制のお店ということ。ただし今回はdressingの読者に限り、本日12月18日(金)から26日(土)までの期間限定ながら、紹介者なしでも入店が可能に。電話予約の際、「dressingのコラム読みました」と告げるべし。
シャルトーニュ・タイエの単一区画ものを賞味できる店などそう多くはない。
予算6,000円~
※柳忠之さんのスペシャルな記事『キンメリジャンがワインに何を与えるのか?~ワインマニアのためのテロワール講座その1~』はこちら
Champagne Bar HACHI
- 住所
- 住所非公開
- 電話番号
- 03-6447-4964
- 営業時間
- 19:00~24:00(土曜17:00~22:00)
- 定休日
- 定休日 日曜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。