幼いころの、あの純粋なトキメキを憶えている?
初めての絵本を手に取り、ページをめくる度にわくわくした、あのトキメキを。
中目黒の桜並木沿いにあるフレンチレストラン「CRAFTALE(クラフタル)」。シェフは東京の名だたるグランメゾン、そしてフランスでの修業を経て、初台「レストラン アニス」の立ち上げからスーシェフとして従事した、若き大土橋真也さんだ。そんな新進気鋭の彼の世界観が、トキメキという純粋で無邪気な気持ちを思い出させてくれた。
クラフタルとは、CRAFT(技術)とTALE(物語)という2つの言葉からなる造語で、料理人の技術によって料理という物語を生み出す、という一見当たり前のように思える方程式が、明確な意図をもって具現されている稀有なレストランだ。物語の軸となる料理は、おまかせ7,000円のコース。全8皿の料理と、オリジナルのパン(形状はパンとは限らない)を合わせるパンペアリングという独自のスタイルで物語を展開する。
大土橋シェフが描く物語には、かけがえのない大きなテーマがある。それは、同じ色合の食材で描く「カラーグラデーション」だ。中でも、このジビエの季節に心を奪われるのは「フランス産鳩のロースト」。紫のプレートに、鳩胸肉のロースト、ブーダンノワールのガナッシュ、ベリーのソース、そしてパンペアリングとしてアメリカンドッグに扮した鳩腿肉。すべて紫色の食材で構成され、それでいて鮮やかなカラーグラデーション。一羽の鳩の様々な部位が、様々な調理法を経て、そしてまた、統一感をもって一つの皿の上に再構築されているのだ。絶妙なバランス感覚をもって。
視覚的な美しさはもちろん、味わいの口福感が与えられるのは、技術に裏打ちされたシェフの信念によるものが強い。素材の一つ一つが明確な存在意義をもち、それらが皿の上でそれぞれの役割を果たし切ることで、料理という一つの物語が構築されるということだ。前菜の「帆立のチップス」は、まさにこのシェフの哲学を象徴する一皿だ。木の板の上に、同じく木目状に見立てた帆立のチップスと、薄くスライスしたフォワグラ、マッシュルーム、そして木くずに模したマッシュルームのパウダーで、木の世界を一皿の上に見事に表現している。そっとチップスを手にとり、パリッと口内へ運ぶと、食材個々の食感・香り・味わいが調和し、まるで晴れた日に森林浴をしているかのような、そんな世界へとタイムスリップさせてくれる。さらに散りばめられた小さなハーブを合わせれば、これまで枯れた葉っぱのようだった木々の味わいに僅かな潤いが与えられ、雨上がりの森の中を散策しているような心地になる。一皿の料理が異なる表情を見せ、一皿の上で料理の物語が展開していくのだ。食べ進めながら、こんなにもわくわくしてトキメク料理にはなかなか出逢えない。
視覚から与えられる喜び、味覚に与えられる口福感、そして、その一口がさらにはどんな世界へ連れて行ってくれるのだろうかという期待に満ちたトキメキは、長い修業時代を経て地に深く根をはった、シェフの技術の賜物と言えよう。若きシェフの豊かな感性に魅了され、伸びやかな表現力に惑わされる。
クラフタル
- 電話番号
- 050-5486-5729
(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
- 営業時間
- 月・火・木~日
ディナー 17:00~22:30
(L.O.21:00)
※緊急事態宣言に伴う時短営業にて、当面の間、最終入店時間を平日18:00・土日は17:30とし、20:00に閉店とさせていただきます。恐れ入りますが、何卒ご承知ください。
土・日
ランチ 11:30~14:00
(L.O.13:00)
- 定休日
- 火曜日・水曜日
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。