1.コロッケ「旨みのかたまり」
「なんじゃこれは!」一口食べた途端、誰かが松田優作のような雄叫びをあげる。
小さな小さなコロッケをかじって、一同みな叫ぶ。
断面を見れば、茶色いペシャメルが、香ばしい香りを立ち上げている。
これは小さな爆弾である。濃縮したうま味だけが詰まった爆弾である。
なんというアミノ酸量だろう。
うま味が次々と津波のごとく襲ってくる。
これは、干し松茸を牛乳で戻し、その牛乳でベシャメルソース作り、戻した松茸と、松茸をソテーしてさらに加えたコロッケである。
こんな恐ろしい爆弾を考えながら、「一道」の関シェフは、爽やかな笑顔で飄々としているのであった。
<予算>
〜20,000円
祗園 一道 (ギオンイチドウ)
- 電話番号
- 075-561-1949
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
2.「完成された焼きそば」
これを「磐石」というのだろう。
小麦粉と卵の揚げ麺は、カリッと香ばしく弾み、その間を縫って細もやしはシャキシャキ音を立て、玉ねぎはシャクっと歯ごたえを見せる。
カリッ、シャキッ、シャクッと、口の中で生まれた痛快なポリリズムが、心を踊らせる。
さらに韮や椎茸が香り、脂はうま味を滑り込ませる。
しかし誰も、出過ぎない。
黄金比率で定めたかのように、火の通しと量がピタリと決まり、互いを引き立てながら、自らの役目を果たしている。
味の機能美と言う言葉があれば、それは「鳳泉」の炒麺のことである。
<価格>
炒麺(焼きそば)755円
鳳泉(ホウセン)
- 電話番号
- 075-241-6288
- 営業時間
- 火~金11:30~14:30、17:00~20:00、土・日 11:00~20:00
- 定休日
- 定休日 月曜
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3.「オムレツにキスするサンドイッチ」
この子は絶対タテである。
普通サンドイッチは横にして、つまりパンを上下にして食べる主義だが、これはパンを左右に配置して食べるべきである。
なにしろ玉子サンドではない。オムレツサンドなのである。
紡錘形の美しいオムレツを、温めたパンの間にそっと挟んである。
だから上下にしてつかみ、これ以上の圧力をかけてはいけない。
横にして食べると、まず唇に、ふんわりとオムレツがキスをする。
そしてむむむむっと、舌の上に玉子の甘みが広がって、バターの香りが抜けていく。
そのあたりで少しパンの味が顔を出す。
パンにバターも塗っていなければ、もちろんケチャップもなし。
この上なくオムレツに肩入れしたサンドイッチなのである。
僕は後半、ちょっとだけ塩をかけてみた。すると甘みが膨らんで、玉子が笑うのだった。
喫茶YOU (キッサユー)
- 電話番号
- 03-6226-0482
- 営業時間
- 10:00~20:30(L.O.)、ランチは11:30~15:00(L.O.)、ディナーは15:00~
- 定休日
- 不定休(年末年始休)
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4.おじや「名物の企業秘密」
「素早く回すだけです」。
どうやって作るのかと聞くと、「企業秘密です」と言いながらも、長崎「一二三亭」の板前さんは、優しく教えてくれた。
なにしろここの雑炊は、卵がふわふわになりながら、ムラがない。
米一粒一粒と抱き合いながら、その甘みをゆっくり舌の上で膨らます。
わずかに入ったごま油のアクセントが効いていて、卵と米の優しさにたくましさを投げかける。
そしてなによりお米の具合が素晴らしい。
だしというぬるま湯に長く浸かって、心身ともにほぐれましたというくつろぎ方をしている。
わずかに米粒の存在感を残しながら、だしを吸って膨らんで、柔らかい。
その加熱具合こそが、この店の名物となった魅力なのだ。
<価格>
おじや(※文中では「雑炊」ですが、メニュー名はおじやです)650円
一二三亭 (ヒフミテイ)
- 電話番号
- 095-825-0831
- 営業時間
- 月~日 ランチ 11:30~14:00 ディナー 17:30~23:00
- 定休日
- 不定休日あり
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5.「二軒の人気店の小さな餃子を食べ比べる」
長崎には「雲龍亭」と「宝雲亭」がある。餃子の話である。
「雲龍亭」が創業60年、「宝雲亭」創業54年。ともに小さい餃子で人々を惹きつけ続けて、市内に何店舗かある。
どうやら親戚筋らしいのだが、真相はわからない。
博多にも「宝雲亭」があり、こちらは創業60年。三軒のメニューは、ほぼ同じで「雲龍亭」と「宝雲亭」が同時多発したのか、長崎「宝雲亭」が「雲龍亭」からの流れなのかは、調べたがわからなかった。
どなたか知っている人がいたら教えて欲しい。
さてどちらがおいしいかという問題だが、これは長崎市民でも意見の分かれるところで、ハシゴして食べ比べてみた。
「雲龍亭」の餃子(10個400円)は、頼むとすぐ登場する。
小さくカリカリとして、いくらでも食べることの可能な焼餃子である。
アンは野菜感が強く、あっさりとしている点も、するする入ってしまう要素である。
「宝雲亭」の餃子(10個380円)は、作り置き冷凍されている「雲龍亭」とは違い、営業時間中は常に皮から作り続けている。
そのため、薄く小さいながら、皮にかすかなモチっとした存在感がある。
アンは、肉感が強く、皮とのバランスがいい。サイズも「雲龍亭」の1.5倍ほどある。
餃子好きなら悩むところだろう。通なら、そりゃあ作りたての皮の方がうまいよということになろうが、「雲龍亭」の存在感が弱い点も、いじらしい。
つまりハシゴするしかないのである。
ちなみに名物ニラトジ(「雲龍亭」300円「宝雲亭」380円)も食べ比べてみた。うむこちらの方は、玉子の閉じ方に妙がある「宝雲亭」だな。
ちなみに写真は、「雲龍亭」→「宝雲亭」の順
長崎一口餃子の雲龍亭浜んまち
- 電話番号
- 095-822-4621
- 営業時間
- 火曜日~土曜日 14:00~00:00 (ラストオーダー:23:30) 、 日・祝日 13:00~22:00 (ラストオーダー:21:30)
- 定休日
- 定休日 月曜(祝日の場合、翌火曜日が定休)
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思案橋 宝雲亭
- 電話番号
- 095-821-9333
- 定休日
- 定休日 月曜
- 公式サイト
- https://www.facebook.com/%E6%80%9D%E6%A1%88%E6%A9%8B-%E5%AE%9D%E9%9B%B2%E4%BA%AD-710452552327310/
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6.塩サバおにぎり「長崎の〆」
長崎の夜を締めくくるのは、誰がなんといってもラーメンではなく「かにや」である。
おにぎりは30種類。注文すると木枠に米を置き、ネタを包み、軽く握る、東京で言う所の“ぼんご”方式である。
おにぎりを待つ間に、当然ながらおでんを頼み、調子に乗ってウィンナー串焼きなる下品を頼んで、ビールを飲みながら待つ。
今宵のおにぎりは、天かすやしそわかめ、王道のたらこに鮭、チョーコー醤油とまぶしたおかか、葉唐辛子や紅ショウガ、岩海苔やしその実と悩んだが、やはり「塩サバ」にした。
頬張れば、ひのひかりの甘みが広がり、有明海苔の香りが広がり、塩サバの旨みが追いかける。
後は味噌汁と貝汁を頼み、麦味噌の甘みにむせび泣く。
<価格>
おでん各種130円、ウインナー串焼き130円、味噌汁270円、貝汁400円
おにぎり:てんかす160円、しそわかめ160円、たらこ160円、さけ160円、かつお節160円、はとうがらし160円、べにしょうが160円、岩のり160円、しその実160円、塩さば160円
かにや本店
- 電話番号
- 095-823-4232
- 営業時間
- 月~土 18:00~翌3:00
- 定休日
- 定休日 日曜・祭日不定休
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