5年ぶりに訪れたローヌ地方は発見だらけ。こんな逸材のワインが日本のバイヤーの眼を逃れ、まだ輸入されずにいたのかと驚かされた。シャンパーニュのRMも同様。時おり、見たことも聞いたこともない銘柄に心を奪われることがある。アヴィーズのRM、ピエール・カロの「クロ・ジャカン」もそんな驚きの1本だった。
度肝を抜かれた
今から10年近く前、グランメゾン”以外”のプレステージ・キュヴェをブラインドテイスティングするという某雑誌の企画をとり仕切り、バックヤードでブショネのチェックにあたっていた時のことである。ガツンと脳天から打ちのめされたのはアラン・ロベールのメニル・トラディシオンであったが、それに勝るとも劣らぬ素晴らしさで度肝を抜いたシャンパーニュがピエール・カロのクロ・ジャカン。「ピエール・カロって誰?」と、ブラインドの蓋を開けた後、テイスターのみんなが首を傾げた。
アヴィーズの蔵を訪ねたのは、それから5年ほど後のこと。当主のティエリー・カロは、同郷のアンセルム・セロスのようにギラギラとしたところのない、朴訥とした風貌の人物。クロ・ジャカンとはアヴィーズの丘の上、墓地の脇にある小さな区画の名前で、カロ家はここに1000平米の畑を有する。このちっぽけな区画のシャルドネのみから造られたシャンパーニュがクロ・ジャカン。生産本数たった800本のレアものである。
その風味からオークを使っていることは明らかだが、実際にその樽……というか容器を見て目を丸くした。クロ・ジャカンに使われるそれは、小樽でも大樽でもなく、直方体のタンク。つまり、通常使用しているステンレス製のタンクをそのままオーク材でこさえた特注品。発酵後、この木製タンクに1年間、シュール・リー状態で熟成させてから瓶詰めする。
深いゴールデンイエローの色調にキメ細かな気泡。ドライフルーツ、ヘーゼルナッツ、蜂蜜にブリオッシュと、上質なシャンパーニュに期待されるさまざまなフレーバーが複雑に絡み合う。自己主張は強いものの押しつけがましくはなく、慎み深ささえ感じられるのは、造り手の性格ゆえだろうか。
そんなレアな1本をオンリストしているのが、銀座の老舗ワインバー「グット・ドール」だ。成瀬徳郎&岩澤正子のカップルが、円熟のサービスでもてなしてくれる。おすすめは広島産カキのカダイフ巻き。カキのヨード感とカダイフの香ばしい風味が、クロ・ジャカンと絶妙なハーモニーを生み出してくれるだろう。
<「グット・ドール」での価格>
ボトル24,000円
※柳忠之さんのスペシャルな記事『キンメリジャンがワインに何を与えるのか?~ワインマニアのためのテロワール講座その1~』はこちら
ワインバー グットドール
- 電話番号
- 03-3564-7218
- 営業時間
- 18:00〜0:00(料理のL.O.23:00)
- 定休日
- 定休日 日・祝日
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