12月16日一軒目「山田宏巳シェフ渾身の鰻料理」
カリリッ。香ばしい皮に歯を立てる。
むりむりむりっ。歯は、凛々しい肉体に吸い込まれる。
豊かな脂の甘さが、舌の上に流れ込む。
今まで食べた、どの鰻料理にもない感覚だった。
半身に開いた鰻には、品の中に豊穣を求める味である。
しかし丸のままの鰻には、丸のまま魚にかぶりつく、命を食らう瞬間があって、気分を上気させる。
「食らってるぜ」と叫びたくなる、コーフンがある。
ガルムと蜂蜜と白ビネガーを混ぜた、甘酸っぱいタレや、実山椒のアクセントも心憎い。
いやそれよりも、天然鰻の骨をだましだまし丁寧に、長時間かけて抜き取って生まれたコーフンに感謝したい。
イタリア料理 リストランテ・ヒロソフィー 銀座
- 電話番号
- 03-5537-5855
- 営業時間
- 火18:00~L.O.21:00、 水~土12:00~L.O.14:00、ディナー18:00~L.O.21:00、 日12:00~L.O.15:00
- 定休日
- 定休日 月曜
- 公式サイト
- http://www.hirosofi.com/
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※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
12月16日二軒目「非売品の肉まん」
その肉まんはさりげない。
形もどうだっという大きさではなく、普通である。
だが口をあんぐりと開けて噛んだ瞬間に、皮の香ばしさに気づいてニンマリする。
といって、その後に、肉のアンがうまさを主張してくるわけではない。
アンのうまさの品が、皮との一体感を生み出していて、あれ?もう食べてしまったんだと思うほど、するりと食べ終えてしまう。
つまり素直な美味しさである。
皮の厚さを均一にし、皮の香りを邪魔しない旨みのあるアンを作り、皮とアンの量の均整をとりながら空洞は作らない、素直な味である。
でも今の時代、この素直さをきちんと出せる人はいない。
だから食べ終えて、もう一個食べたくなってくるのだ。
浅草「龍圓」の肉まん
どうやら非売品らしいが。
龍圓
- 電話番号
- 050-5486-7883
(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
- 営業時間
- 火~日・祝前日・祝日
ランチ 12:00~13:30
※ラスト入店が13:30です。
火~日・祝前日
ディナー 18:00~20:30
※ラスト入店が20:30です。
- 定休日
- 月曜日
第1火曜日
※月曜日が祝日の場合は営業
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12月18日「仕事ということ」
それを舌に乗せると、てれんと舌に横たわり同化するように消えていく。
脂が豊かなのにきれいで、醤油のうま味と丸くなじんで、心を濡らす。
鮪カマの脂のヅケである。
さらには鴨川のカワハギを固めたカワハギの肝で挟んで〆、その肝を裏ごしてまぶす。
そこにはふつうの肝和えとは違う、陶然たるなにかがあって、体の力が抜いてしまう。
さらには、鱈から取り出した白子を直ちに漉して、練り、昆布だしとウニの汁に横たえる。
一口食べると、白子は純粋を極め、旨みの余韻だけを残して体に溶け込んでいく。
その刹那、ふと親の味が、鱈のみずみずしさや優しさが、舌をかすめる。
炙った鯖は、どこまでも凛々しく、皮ぎしの脂が口に流れ込むが、これまたさらりと消えてしまう。
きれいな脂というものは、切ないのだな。
こんなにも鮟肝とは、甘かったのか! と叫ばせるほど、余市の鮟肝は甘いのだが、その甘みは自然で、微塵もこれ見よがしではない。
甘さからすべての不純物を取り去った澄んだ甘みに、心が痛い。
淡路の黒い海草を食べて育ったために、本来は赤ウニながら「黒ウニ」と呼ばれる希少なウニは、赤ウニより濃密で、熟した危険な色香がある。
もうやめて。と言いながら堕落していく自分が、なんとも愛おしい。
鮨 三谷 (スシ ミタニ)
- 電話番号
- 03-5366-0132
- 営業時間
- 17:00~20:30、土・日 17:00~18:30
- 定休日
- 定休日 月・第3火曜
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12月19日「腐乳とからし菜」
したたかな腐乳が、からし菜に問いかける。
練れた旨みといやらしい香りをからめながら、もっと一緒に高みの登りたいと、問いかける。
シャキッと凛々しい音を立て、からし菜は答える。
みずみずしい青々しさとかすかな辛味を忍ばせながら、腐乳を受け止めて、自らの強さを鼓舞する。
これはもう酒ではない、ご飯を呼べ。
この二人の抱擁を、白き熱々ご飯で受け止めろ。
銀座「赤坂璃宮」腐乳炒芥菜。
赤坂璃宮
- 電話番号
- 050-3491-0761
- 営業時間
- 月~土 ランチ:11:30~15:00(L.O.15:00) 日・祝日 11:30~16:00(L.O.16:00) 月~土 ディナー:17:30~22:00(L.O.22:00) 日・祝日 16:00~20:30(L.O.20:30)
- 定休日
- 年中無休 ※(年末年始を除く)
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12月20日「良き客と良き店主」
「二度手間ですいません。レモンもください」。とツレが気を利かしたら
「お客さんなんだから、わがままどんどん言ってくださいねぇ」と、やっちゃんが渋い声で答える。
「最近お客さん物忘れのひどい人が多くて、さっきなんか『ほらあの場所どこだっけ、ほら品川の先、先よ。ああ八百屋!』っていうから
「え?」って聞き返したら
『だから八百屋よ』。って、堂々という。
『それって青物横丁?』って聞いたら
『そうそれ!』ってんだからわらっちゃうよ」。
いい肴があって、いい酒があってというのが、良き酒亭の条件だけど、それより大事なのは、良き客と良き店主。
愛され愛して夜は更け、酔いに酔われて癒される。
ちくわ磯辺揚げ、ハムカツ、ソイとスズキ、カンパチ刺身、マカロニとポテサラ相盛り、ほうれん草胡麻和え、ナマコ、あん肝、オムレツ。「丸千葉」のオールスター
分厚いちくわが歯に食い込む。
青海苔と油の香りが鼻に抜けて、胃袋を鷲づかむ。
ちくわのちくわたるほの甘みが追いかけて口を満たす。
笑う笑う。
すぐまさビール。くいっといけばまたちくわに箸が伸びる。
口を大きく開けて頬張る感がたまらない。
エメラルドのごとく青海苔が輝き、ちくわ磯辺揚げにありがちな、貧相感が微塵もない。
「丸千葉」のちくわ磯辺揚げは、下手な食べ物ながら、尊厳がある。
丸千葉 (マルチバ)
- 電話番号
- 03-3872-4216
- 営業時間
- 14:00~21:00
- 定休日
- 定休日 水曜・年末年始.
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