もしかしたら日本人よりイタリア人客のほうが多いのではないかという日もあるほど現地感の高い、目黒の「トラットリア・デッラ・ランテルナ・マジカ」の2号店としてカジュアルなスタイルで楽しめた「アンティカ・ヴィネリア・ジュリアーノ」がスタイルを一新。
昨年末までイタリアで12年間にわたり、ミシュラン1つ星、2つ星の各店で活躍した近藤正之さんをシェフに迎え「リストランテ センソ」として生まれ変わったわけである。
気になる料理だが、9皿からなるコースが基本となっており、そこにソムリエがセレクトしたワインとのバイザグラスなどで料理が楽しめる。
オープン初日の料理の流れは以下の通り。
Apperitivo
お食事の前に軽いスナック…赤ピーマンとツナというイタリアンらしい素材だがスタイルを変え、お菓子のような見た目になっていたり、マカロンなのにウサギ肉を挟んでいたりと、スタートから手の込んだスナックが。さらに、サフランを練り込んだお米のパンやリグーリアスタイルのフォッカッチャ、フジッリを揚げたものなど。
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Pannacotta di Mozzarella, Olio Basilico e Spuma di Pomodoro
モッツァレラチーズのパンナコッタ バジリコオイルとトマトのエスプーマ…食べると口の中でカプレーゼになる。まさに再構築と言える料理。
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“Verde”
緑色の野菜たち、卵黄とリコッタチーズ…イタリア時代は”Midori”という名前で提供していたというシェフの得意メニュー。バニラ味のケールやカリカリのホウレンソウほか、一つ一つに非常に手間をかけ、かつ優しい味わい。
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Seppie Scottato, Crema di Cavolo Fiore al Nero di Seppie, Yusu e Sansyou
スミイカ カリフラワーとイカスミのクリーム 柚子と山椒…イカを非常に柔らかく仕上げているのが印象的。火入れも、フランス語ではいわゆるミ・キュイと呼ばれる中身がレアになっているもの。柚子のマヨネーズの酸も皿全体のバランスを取ってくれる。
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Gamberi, Funghi e Burrata
車海老 いろいろキノコとブッラータチーズ…優しい火入れで甘みを存分に引き出した車海老。ブッラータチーズをソースのようにしていただくのは新鮮。
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Ravioli all’Amatriciana, Brodo di Guanciale e Schima di Pecorino
アマトリチャーナを詰めたラヴィオリ グアンチャーレのスープとペコリーノの泡…アマトリチャーナなのにラヴィオリの中に詰められているという不思議な一品。ひと口のなかに旨みが凝縮している。日本のイタリアンではよく使われるパンチェッタよりもさらに濃厚なコクと風味を持つグアンチャーレの味わいが強く感じられる温かいスープはテーブルに運ばれてきてから皿のなかに注がれる。
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Tagliolini alla Nocciola, Coniglio e Castelmagno di Beppino Occelli
ヘーゼルナッツを練り込んだタリオリーニ うさぎとベッピーノ・オッチェリさんのカルテルマーニョ…非常に印象深い一品。まず、皿からパスタを持ち上げた時に感じるヘーゼルナッツの香りが空間を支配する。さらに二種類の調理を施したウサギもしっとりとした仕上がり。香り、食感、旨みのすべてが高い次元で融合したパスタ。名人ベッピーノ・オッチェリさんによるピエモンテのチーズ、カステルマーニョもアクセントに。思わずおかわりしたくなる。
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Scamone di Akaushi, Salsa Brasato e Radici
あか牛のランプ 赤ワイン煮込みソースと根菜…阿蘇のあか牛のなかでも旨みのしっかりしたランプをジューシーに火入れした一品。見た目はシンプルで、火入れの技術だけのように見えてしまうが、実は赤ワイン煮込みソースの仕上がりが素晴らしい。
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Torta di Frutta
フルーツタルト…フルーツタルトを分解。タルトは二種類の生地を砕いていて食感や香りも異なる。口の中で2種類のタルトを食べている感じになる。
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Yougurt
ヨーグルト…ヨーグルトをスープ状、アイスクリーム、泡、メレンゲという4種類のスタイルに仕上げたもの。甘み、酸味、脂肪分と温度、テクスチャーがすべて違うというシンプルなヨーグルトを複雑な味わいに昇華させている。驚くべき一品。
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Piccola pasticeria
小さいお菓子…最後の小菓子まで手を抜かない。メレンゲのように見えるものは、胃腸を整えてくれるものらしく、実際に食後感は非常にすっきりしたものとなった。
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近藤シェフの料理の美点は、料理の見た目の美しさや手間をかけた素材の一つ一つに感じる旨みであることは否定しない。けれど、最大の美点は、何を食べたのかが記憶に残る料理ばかりであるということ。そして、これだけの皿数をいただいたのにもかかわらず、食後感が非常に軽快。食べ疲れしないということでもある。また、ワインのマリアージュもよく練られており、トータルすると1本近い量を飲んでいるにもかかわらず、体が重く感じることがない。
しっかりとした印象を残しつつ優しさも併せ持つ料理の数々。
約3時間かけていただくコースではあるが、中だるみも無ければ、長く感じることもない。
軽快でリズミカルなひとときが楽しめることだろう。
<価格>
9皿コース9,600円、6皿コース7,200円、ワインペアリング6杯5,400円、3杯3,000円
(税・サ・コペルト込み)
リストランテ センソ
- 電話番号
- 050-3373-5595
- 営業時間
- 土 ランチ:12:00~15:00(L.O.14:00) 月~土 ディナー:18:00~24:00(L.O.21:30)
- 定休日
- 毎週日曜日 第2月曜日
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
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