時間に追われているとつい見落としがちだが、東京駅・丸の内南口の改札を出て見上げると、優しい黄色に白で縁取られた意匠も美しい駅舎ドームが出迎えてくれる。おとぎ話のお姫様になったような気分で歴史深い建物に入ると、モダンで上質な空間の中に東京ステーションホテルのバー&カフェ「カメリア」が。憧れの場所に少し背筋を伸ばして踏み入れると、「控えめな優しさ、女性らしさ」という店名の花言葉通りの、洗練された空間がそこには広がっている。
【1】しっとり落ち着いた雰囲気が、オトナ女子会や両親とのお食事にもぴったり!
「カメリア」は、ホテル再開業の1951年から夜のみ利用可能なバーとして営業していたが、2012年のホテルリニューアルオープンから、お昼も利用できるようにとバー&カフェとして生まれ変わった。ランチには、カレー、ドリア、ビーフシチューと女性にも人気の高いメニューが約7種類。
シックで大人な雰囲気を味わえるテーブル席、景色を眺めながら開放感にひたれる店外のパサージュ席がある。しっとりとお酒を嗜みたいときにはカウンター席もいい。それぞれのシーンで雰囲気を変えられるのも、カメリアの魅力である。
【2】開業から100年間愛されてきた特製「ビーフシチュー」がリニューアル!
開業当初から人気があった名物料理を、総料理長の石原雅弘さんが「肉を食べるビーフシチュー」と称して現代風にアレンジ。
「日本が貧しく栄養重視だった時代と変わり、今はカロリーが高いものは敬遠されて、健康でヘルシーなものを好む傾向が高い。脂身の少ない肩バラ肉を使い、デミソースにはつなぎを一切使わずにカロリーを減らしました」と石原シェフ。黒毛和牛の塊肉が贅沢にもゴロゴロとはいっていて、食べ応えも抜群。上品に食事を楽しみつつも、胃袋は大満足!というさりげないガッツリ感も人気の秘密である。
サラダやつけ合わせの野菜は、石川県西田農園の完全無農薬野菜や有機野菜も取り入れている。ここでも身体に優しいものを提供したいというシェフの気持ちが伝わってくる。みずみずしく新鮮なサラダは、ドレッシングがいらないほど甘み旨みがしっかりしている。
これに季節のスープとパン、デザート、飲み物がついて3,200円は、かなりお得。まるで、フルコースを食べているかのような満足感だ。
【3】クラシックホテル同士で名物レシピを交換!? ドリアの誕生秘話
ビーフシチューと同じく人気が高いのが「シーフードドリア」。その誕生秘話もまたおもしろい。
2012年の東京ステーションホテル再開業後、横浜の「ホテル ニューグランド」との間で、ある企画が立ち上がった。
それは未だかつてない「クラシックホテル同士で名物料理を交換する」というおもいきった内容。その「ホテル ニューグランド」の名物こそ「シーフードドリア」だった。その試みをきっかけに、「東京ステーションホテル」でも、ドリアが提供されることになったのだ。
琥珀色のベシャメルソースは、シーフードのだしがたっぷりでコクがある。もともとのオリジナルレシピの具はエビだけのシンプルなものだったが、ホタテやアワビもふんだんに入れてより香りや旨みがリッチな仕上がりにした。
「パエリアや炊き込みご飯もそうですが、米に味があると美味しいですから」という石原シェフの言葉どおり、バターライスもエビのだしで炊きあげるひと工夫を加えている。シーフードドリアを一口頬張ると、存在感のある魚介の具と伝統のソースが合わさって、贅沢で奥深い味わいの中に、どこか懐かしさを感じ、温かい気持ちになる。
【4】開業100周年記念カクテル「1915」は、お客様が選んだ一杯
ホテルのオーセンティックなバー空間とは違って、ここ「カメリア」はランチタイムから女子でも気軽に、しかも本格的なカクテルを楽しめる。中でもイチオシは、100周年記念カクテル「1915」。ちょっと珍しい日本酒がベースのカクテルだ。
JR東日本とタイアップした朝日酒造の純米大吟醸「大人の休日」を使い、ココナッツリキュールを加えることでお米の甘さにほんのりと華やかさを添えている。ブルーキュラソー、スミレのリキュールで東京ステーションのロゴカラーである「濃藍色(こいあいいろ)」を表現して、サファイヤのように幻想的に輝く一杯だ。
実際にカクテルを飲んだお客様の投票による、カクテルコンペティションで選ばれたカクテルだという。「長い歴史を支えてくださったお客様と一緒に、記念になるようなメニューを作りたい」というホテルスタッフから生まれた提案だった。そんなところからも、ホテルに対するスタッフたちの熱い想いを感じることができる。
【5】懐かしさを感じる「カメリアプリン」を食べながら、まったりとトークを楽しんで♪
幼いころから料理を作るのが好きだったという石原シェフ。
ランチタイムを最後までゆっくりと楽しんでほしいという気持ちが伝わるのがデザートの「カメリアプリン」。
パティシエと共に試行錯誤の末、ぎりぎり崩れない限界までクリーミーに仕上げられている。カラメルソースをすくうと、底からたっぷりバニラビーンズが現れる。使っているのはもちろん、高級品として知られるタヒチ産。口に入れると、その妖艶な香りが広がって、ただただ幸せな気分に浸る。
プリンの横には、シェフの想いと一緒に小菓子が添えられていた。
「このあたりは忙しくランチを済ませる人たちばかり。久々に再会した友とゆっくり過ごしたくても、せかせかとしたプレッシャーを感じてしまいますよね。ここでは時間を期にせずのんびりお過ごしくださいね、という気持ちを込めて小菓子をお付けしています」。
シェフの温かな心遣いが最後まで感じられる、実に優雅な一時だった。
ラグジュアリーなホテルの空間は緊張するかと思いきや、カメリアは不思議と落ち着く。100年前に作られた歴史ある建築物がそんな気持ちにさせるのかもしれない。しかし、ただ伝統を継承するだけではこの居心地の良さは生まれないはず。
そこにはスタッフの努力が隠されていた。「お客様に幸せを感じてほしい」ただただその想いで、スタッフ全員がこのホテルを支えている。2012年のリニューアルの際には、ホテルの食器のデザインやインテリア、ロゴとスタッフ一同で考えて作り上げたという。
高級なクラシックホテルも、意外に手作り。スタッフの工夫と熱い想いがあるからこそ、ゲストは幸せを感じることができる。
伝統とホスピタリティーに支えられたホテルで、大切な人との時間を存分に楽しんでもらいたい。
【今回ご紹介したランチメニューはこちら】
1.「東京ステーションホテル特製 黒毛和牛のビーフシチューランチセット」
スープ・パン・サラダ・自家製プリン・コーヒーまたは紅茶付き
3,200円(消費税込、サービス料別)
2.「シーフードドリアセット」
スープ、パン、サラダ、デザート、コーヒーまたは紅茶
2,980円(消費税込、サービス料別)
※各メニューアラカルトもあり
Bar&Café Camellia(バー&カフェ カメリア)
- 電話番号
- 03-5220-1951
- 営業時間
- 11:30~24:00(23:30 L.O.)、ランチタイム11:30~14:00L.O.※土・日曜、祝は、~15:00L.O.
- 定休日
- 定休日:無休
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。