昨年のシャンパーニュ取材で、念願の訪問を果たせたのがマルイユ・シュール・アイのフィリポナ。このメゾンの金看板、「クロ・デ・ゴワス」が見たかった。なぜならば、マルヌ川に面した急勾配で知られる単一畑が45度なのか45%なのかこの目で確認したかったからだ。
急斜面による天の恵み
斜面の傾斜を示す単位には度と%がある。たびたび混同している人を見かけるのだが、45度と45%は違う。45度はまさしく直角90度の半分の傾斜。一方45%は、直線にして100メートル前方に進んだ場合、標高が45メートル上ったり、下ったりした場合の傾斜である。したがって「%」を日本人にはより馴染みの深い「度」に直すと、45%は約24度でしかない。とはいってもスキー大回転の斜度が15〜20度なのだから、これでも十分すごい傾斜だ。 で、実際にクロ・デ・ゴワスに立ってみると、45%(24度)ではなく正真正銘45度だった。もしも足をすべらせたらそのままゴロゴロ転がり、マルヌ川へドボンと落ちそうなくらいの急傾斜(実際には畑と川の間には道路があるので、車に轢かれる可能性のほうが高いけど)。しかしながら、この真南を向いた急斜面のおかげでブドウは十分に太陽の光を浴び、マルヌ川の輻射熱も利用して完熟する。クロ・デ・ゴワスの特徴は、前回紹介したサロンに代表される、メニル・シュール・オジェのブラン・ド・ブランとは対極のリッチネスだと思う。
玄人好みのシャンパーニュ
もっともピノ・ノワール65%、シャルドネ35%という絶妙な比率のおかげでフレッシュネスが保たれ、重々しさは微塵もない。これには乳酸発酵をブロックし、シャープなリンゴ酸をそのまま残す醸造も寄与しているだろう。さらには全体の半分をオーク樽で醸造。風味に複雑性がもたらされ、ストラクチャーもしっかりとし、熟成のポテンシャルも上がる。
クロ・デ・ゴワスはドン・ペリニヨンやクリスタルと並ぶキュヴェ・プレスティージュにもかかわらず、知名度の高さではこれらに遠く及ばない。それでもこの玄人好みのシャンパーニュが楽しめる店はないものかと探してみれば、ありましたよ、ありました。銀座の「エスキス」。さすが、若林英司支配人兼シェフソムリエ。しかもバックヴィンテージの2000年。リオネル・ベカ料理長のクリエーティヴな料理とどのようなハーモニーを奏でるのか、ぜひ試してみたいものだ。
クロ・デ・ゴワス2000は35,000円
※柳忠之さんのスペシャルな記事『キンメリジャンがワインに何を与えるのか?~ワインマニアのためのテロワール講座その1~』はこちら
ESqUISSE (エスキス)
- 電話番号
- 03-5537-5580
- 営業時間
- 12:00~L.O.13:00、18:00~L.O.20:30
- 定休日
- 定休日 日曜のディナー
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