この世に生を受けて50数年経ちますが、そこそこ刺激的な人生であったなと思うのです。その中で最初の方の刺激で覚えているのが初めてコーラを飲んだ時の事であります。その衝撃を受けたのは、東京都内で開業医をしていた母方の伯父の家でした。当時としては最先端のテレビやステレオのあったハイソな家で、遊びに行くのが非常に嬉しかったのを覚えています。ステレオのチューナー部分が緑色に光っているのが特にお気に入りで、水の入ったグラスをかざして緑色を透かしてみたり、手を緑色にして怪獣(正確にはケロニアかワイアール星人)ごっこをしてみたりして遊んでいました。診察室の方にあった人体模型や標本なども楽しく、飽きる事は全くありません。大人たちの会話に背伸びして混じったりするのも好きでした。
それまでの人生で経験したことのないスパイスの刺激
その時に大人たちが飲んでいたコーラを飲んでみたいと云ったのだと思います。ひと口飲んでみてその衝撃たるや。炭酸の強さと苦くて甘い独特な味に頭の中を引っかき回されたような気がして、その場から全速力で走って逃げたのです。大人たちの大笑いが聞こえていました。応接間を出てステレオのあるリビングを通り抜け、診察室の方へ走っていくと、薄暗い廊下の冷やっとした空気がコーラを飲んでパニックになっていた私を少し落ち着かせてくれたのですが、同時にちょっと怖い気持ちにもなって大人たちのいる応接室にまた全速力で駆け戻ったのも覚えています。
1990年代、私は横浜市の南部に住んでおりました。その時に良く行っていたお店が相鉄線・緑園都市駅の近くにありましたインド料理店『ガネーシュ』でした。横浜の中心部からかなり離れた新興住宅地でしたが非常に本格的なインド料理が食べられると云う事で連日賑わっていたお店です。店主は東京・九段下(※編集部注:現在は麹町に移転)にあった『アジャンタ』で修業をされた方で、緑園都市で1992年に開業。耳慣れない名前のメニューがずらっと並んでいて、そのどれもが容赦なくスパイシー。それまでの人生で全く経験したことのないカラフルで豊かなスパイスの刺激で頭の中を引っかき回されました。辛いものはバッチリと辛くて、大胆で繊細で、食べながら大汗をかくのですが、それがまた爽快で痛快であったのです。何度も何度もお邪魔してそのスパイスシャワーに病みつきになっておりました。ですが、その緑園都市のお店は2007年に店主の逝去で突然の閉店となりました。
そして店主の奥様がその味を引き継いで、横浜市金沢区、京浜急行線・能見台駅からほど近い場所に新たなる『ガネーシュ』を開店したのが2008年。ちょっとしたご縁もありまして一昨年に能見台のお店に訪問が叶いまして、それ以来何度かお邪魔しております。
豆と野菜料理が南インドらしさ
インド料理と云ってもこちらのお店で出すのは南インド料理。日本でポピュラーなのは北インド料理。お馴染みのナンもタンドリーチキンもバターチキンカレーも北インド料理なのだそうです。南インドは豆や野菜料理が発達していて油脂も植物性のものを使うため、あっさりすっきり爽快系。主食は米なのでカレーも米に合うさらさらタイプ。特筆すべきはやはりスパイスの鮮烈さ。ホールスパイスを使用しているのでスパイスの魅力を余すことなくキャッチ出来ます。あらゆる色彩があらゆる方向に破裂するようで、味覚嗅覚の隅々にまでその愉悦感が到達します。
ランチのミールスや単品カレーメニューでもその魅力を存分に味わえますが、1日1組限定要予約のガネーシュ・ミールス。
サプライズ溢れる前菜から牡蠣とスパイスのマリアージュの魅力を存分に味わえるオイスター・マサラ(季節が変わると内容は変わると思います)まで堪能に次ぐ堪能で満足至極。ウマウマウー。
スパイスの強風が吹き荒れた後の爽やかな平穏感は春の草原のイメージ。南インドには行った事がないので日本の草原ですけどね。またゆっくりと伺いたいと思います。美味しかったです! 御馳走様でした!
南インド料理レストラン GANESH(ガネーシュ)
- 電話番号
- 045-306-7796
- 営業時間
- 11:30~14:30 (L.O.14:00)、17:00~21:00(L.O.20:30 L.O.)
- 定休日
- 定休日 水曜 ※不定休あり
- 公式サイト
- http://www.ganesh.gr.jp/
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。