いよいよ東京も桜が満開。この週末はお花見にくりだす人も多いに違いない。お花見といったら選ぶシャンパーニュは当然、ロゼ。今年はアイのRM、ガティノワのロゼ・ブリュットにしよう。
深みや奥行きが凡百のロゼとは違う
これを選んだのには理由がある。昨年、「ブルゴーニュのクリマ」とともにユネスコの世界遺産に登録された「シャンパーニュの丘陵、メゾンとカーヴ」。その運動の中心にいた人物がピエール・シュヴァルさん。ガティノワの前当主だ。
姓が違うことからもお察しのとおり、ピエールさんはお婿さんで、それまでの職業は裁判官。1980年に奥さんの実家を継ぎ、ブドウ栽培とシャンパーニュ造りの世界に飛び込んだ。アイ村の助役を歴任し、ランス大学傘下にあるヴィラ・ビサンジェ校で教鞭もとる知識人。その経験を買われて世界遺産登録の申請書をまとめる「シャンパーニュ景観協会」の会長に任命され、見事、世界遺産登録を成し遂げたのであった。だがしかし……。
まだ正月ぼけも解消されずにいた1月15日、ピエールさんの訃報が飛び込んだ。突然の心臓発作で息を引き取ったという。昨年秋の取材では、あれほど熱心に世界遺産登録の話を語り、ブドウ畑に行けば、うっかり摘み残されていたブドウをもぎ取り、その場でむしゃむしゃ食べていたというのに……。
だから、ピエールさんへの哀悼の意を込めて、ガティノワのロゼ・ブリュット。ピノ・ノワールの聖地、アイのRMゆえにロゼの品質はとくに素晴らしい。
ピノ・ノワール80パーセント、シャルドネ20パーセントの白ワインに、12.5パーセントのコトー・シャンプノワ、アイ・ルージュがアッサンブラージュされる。30パーセントの比率で使われるリザーヴワインは、注ぎ足し注ぎ足しのソレラシステム。深みや奥行きが凡百のロゼ・シャンパーニュとは明らかに違う。さらに付け加えると、デゴルジュマンも一本一本、ア・ラ・ヴォレと呼ばれる手作業である。
薔薇色の騎士団?
そんなガティノワのロゼ・ブリュットが飲めるのは、桜の名所、新宿御苑のすぐそばにある『オステリア・イル・バッティクオーレ』。
イタリア人シェフ、フランコ・カンツォニエーレが本格的ローマ料理を提供する正統なイタリア料理店だが、花見の時期だけ、特別にシャンパーニュを置く。じつはシェフの奥さんで、普段はイタリアワイン命というディレクターの美佐さんも、シャンパーニュだけは例外的に好きだから。ちなみにこの方、ロゼワインの普及に努める「薔薇色の騎士団」の幹部だ。
満開の桜を眺めたついでに、ガティノワのロゼ・ブリュット。世界遺産登録を実現させた男の、熱い想いがワインの色に表れている。
<価格>
ボトル16,000円(税込)
※柳忠之さんのスペシャルな記事『キンメリジャンがワインに何を与えるのか?~ワインマニアのためのテロワール講座その1~』はこちら
osteria Il Batticuore(オステリアイルバッティクオーレ)
- 営業時間
- 11:30~L.O.14:00、17:30~L.O.22:00
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