シャンパーニュのメゾンはそれぞれ独自のスタイルをもっている。たとえばボランジェは高い比率のピノ・ノワールと樽発酵がもたらす力強さであり、シャルドネハウスを自称するテタンジェは、白ブドウ主体のデリケートさやエレガントさ。そしてランソンのスタイルといえば、マロラクティック発酵をしないことによる、キレのよさと新鮮味であろう。
キーワードはマロラクティック?
のっけからドン引きの醸造ネタで申し訳ないのだが、ランソンについて語るのに、これを避けて通ることはできない。マロラクティック発酵とは、乳酸菌の働きによりワイン中のリンゴ酸が乳酸に変わる反応。正確には酵母が介在していないので発酵というのは誤りなれど、慣例に従ってそのままにする。わかりやすくいえば、リンゴを齧った時のシャープな酸味がヨーグルトのようなまろやかな酸味に変わる。じつのところ、ずばり減酸である。
冷涼なシャンパーニュ地方のワインはただでさえ酸が強いので、ほとんどのメゾンがマロラクティック発酵を行い酸味を和らげる。しかしながら、ランソンは一貫してノン・マロラクティック。マロラクティック発酵はバターのようなフレーバーを生むことがあり、ランソンはこの風味を好まない。新鮮な果実の風味を生かしたいのだという。
またその一方、酸の高さは、長期熟成の点で有利に働く。それで1760年創業の同社が250周年を迎えた2010年、初めてリリースしたのが「エクストラ・エイジ」。2000年、02年、04年をアッサンブラージュしたマルチヴィンテージもので、05年に瓶詰めされ、10年に澱抜きされたので5年の熟成だ。ブラックラベルNVより2年以上長く寝かせている。
どうやらこのロットが今なお売られているらしく、澱抜き後もさらに6年の熟成。それでも新鮮味を損なわずにいるのはノンマロラクティックならではだろう。グラスに注がれたエクストラ・エイジを空気に触れさせてあげると、徐々に香りが開き、ドライのイチジクやグレープフルーツのピールなど、さまざまなフレーバーが現れる。アタックはシャープでタイトなボディだが、重層的なフレーバーと奥行きのある味わいのおかげで厳しさは感じられない。日本での代理店がころころ変わり、最近、あまり見かけなくなったブランドだが、もっと注目されてよいはずだ。
さて、このエクストラ・エイジが飲めるのは、昨年9月にオープンした南青山の「I・K・U青山」。ヘルシーさがテーマのフレンチイタリアンである。エグゼクティヴソムリエの森上久生さんが一押しのシャンパーニュがまさにこれ。新鮮味に溢れ、バランスに秀でたエクストラ・エイジなら、コースを通して楽しめるに違いない。
<価格>
ランソン・エクストラ・エイジ 15,800円
※柳忠之さんのスペシャルな記事『キンメリジャンがワインに何を与えるのか?~ワインマニアのためのテロワール講座その1~』はこちら
I・K・U青山(イクアオヤマ)
- 電話番号
- 03-6805-1199
- 営業時間
- 17:00〜23:00
- 定休日
- 定休日 日曜・祝日(不定休)
- 公式サイト
- http://iku-aoyama.com/
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