尊敬すべき名ソムリエのひとり、阿部誠さんが新店をオープンした。なんでもシャンパーニュとのカップリングを徹底追及した日本料理店だという。それで阿部さんに一押しのアイテムをうかがえば、ドゥラモットのブラン・ド・ブラン・ミレジメ。「現行は2007年ですが、2000年をご用意してますよ」とおっしゃるではないか!
ドゥラモットは個人的に大好きなメゾンのひとつである。記憶が正しければ日本に導入されたのは93年頃。当時、私は某ワイン専門誌の編集部に在籍しており、ある日、取材から帰るとクーラーに見慣れぬラベルのシャンパーニュが冷やされていた。喉も渇いていたので、さっそくグラスに注ぎ試飲するとえらく旨い。複雑味があるのに新鮮である。打ち合わせから戻ってきた副編集長のE女史に、「知らない銘柄ですけど、何ですかこれ?」と聞くと、ドゥラモットというサロンの姉妹ブランドとの答えが返ってきた。
「サロンのセカンドラベル的存在」という文言はあまりにもマーケティング的で、最近は使うのをなるべく控えるようにしているが、それはそれで事実なのだから致し方なし。両ブランドともメニル・シュール・オジェの同じ場所に本拠を構えている。サロンが造られない年、そのブドウがドゥラモットに使われるという話もまた事実である。
ただし、サロンはメニル・シュール・オジェのシャルドネのみだが、ドゥラモットはアヴィーズ、クラマン、オジェ、メニル・シュール・オジェと、コート・デ・ブランの4つのグラン・クリュのシャルドネがアッサンブラージュされる。元来飲み頃を推し量るのが難しいサロン(現行の2004年は飲みやすくてびっくりしたけど)に対し、ドゥラモットのミレジメはいくぶん寛容でリリース直後から美味しく飲める。
とはいえ、ドゥラモットもさらに追熟することで、パン・デピスやシャンピニヨンのような複雑なフレーバーが醸成され、一段の高みに登ることは、阿部さんも含めたシャンパーニュ通のソムリエさんたちとのヴァーティカル・テイスティングで証明済み。じつは2年前に試飲した際、2000年はサナギの状態にありやや閉じ気味だったが、今年になってふたたび羽化したようだ。
阿部さんが4月、銀座にオープンした日本料理店「奏」。用意されたシャンパーニュの数はじつに150銘柄にもおよぶ。シャンパーニュとの相性のみひたすら考え抜いた末に完成させた八寸には、普通ならシャンパーニュには禁忌とされる魚卵の子持ち昆布も。一足先にこれを試した家内の話では、シャンパーニュを気持ち高めの温度でサービスすれば、数の子特有のえぐみが感じられず、プチプチとした食感が楽しめるという。ドゥラモット・ブラン・ド・ブラン・ミレジメも、12〜13度がスウィートスポットの模様。
グラス2,800円、ボトル19,000円
※柳忠之さんのスペシャルな記事『キンメリジャンがワインに何を与えるのか?~ワインマニアのためのテロワール講座その1~』はこちら
銀座 奏(ギンザカナデ)
- 電話番号
- 03-6264-5595
- 営業時間
- 18:00~翌2:00 (21:00以降はバータイム)、土曜18:00~23:00
- 定休日
- 定休日 日・祝
- 公式サイト
- http://ginza-kanade.com/
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