第九夜:「Yorgo(ヨルゴ)」オーナーシェフ 川瀬 一馬さん
今回のはしご酒案内人は、福岡・警固で人気ビストロ『Yorgo』(第二夜に登場)のオーナーシェフを務める川瀬一馬さん。関東で生まれ育った川瀬さんは、東京やフランスで経験を積み、2014年6月、奥様のご実家がある福岡に店を構えた。
オリジナリティ溢れる料理や自然派ワインなどを楽しむ一方、カウンターと厨房の調理台の間に段差やパーテーションがないこともあり、川瀬さんとの会話を楽しみに訪れるファンも多数。そんな川瀬さんの休日は、福岡に暮らし始めて仲良くなった店主のお店や、お客様から話を聞き、気になるお店をめぐることも多いという。今回は貴重な休日のはしご酒にお供させてもらった。
京都から福岡へ移転し一躍人気に火がついた話題の店へ
1軒目に訪れたのは、dressingではオープン時に紹介した、地下鉄藤崎駅から歩いて10分足らずの場所にある『捏(つくね)製作所』だ。川瀬さんにとって、休日は家族と過ごせる貴重な時間。この日は奥様の奈緒美さんと娘の凛ちゃんも一緒に食事を楽しむことに。
▲(左下)なめこと鬼おろし 480円、(右下)直伝酒呑の為の冷やしトマト 500円
「店主の菅原さんとはワインの試飲会で知り合って、この店がオープンしてすぐに行かせていただいたのが最初です。自宅からも近いですし、子どもがOKというのもありがたいですね」と話す川瀬さん。
時間は16時が過ぎた頃。外はまだ明るいが、さっそくおすすめの日本酒をいただくことにした。
▲(上段)酒器は京都時代から親交のある『今宵堂』のものから好みで選べる
▲(下段)「おまかせつくね五種」(1人前850円)。この日は、筍とわかめ、モッツァレラと木の芽、イタリアンパセリとレモン、海老とパクチー、あさりとセリの5種
品書きには「本日のつくね」が10種類ほど書かれている。店主・菅原さんは、近くの商店街で食材を買うとき、野菜や魚を手に取りながら、つくねの内容を考えているそうだ。
「つくね専門店という他にないスタイルを追求しているのも素晴らしいし、蒸したものが中心で、焼いたつくねがない徹底したアウトロー感も好き(笑)。食材の組み合わせなど全てにセンスを感じるし、自分自身の発想の源になっていると感じますね」と、川瀬さんは賞賛する。
外に出ると、まだ明るい。次の店に向かう私たちを、店主夫婦が笑顔でお見送りしてくれた。
捏製作所 (ツクネセイサクショ)
- 電話番号
- 092-833-5666
- 営業時間
- 16:00~L.O.22:30
- 定休日
- 定休日 木曜及び月1回不定休
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
人気店が新たに業態を変えた3号店をオープン!
続いて訪れたのは、大手門の『焼とり鳥次』『橙』の店主・小林龍治さんが4月15日にオープンさせたばかりの『mon an ethnic(モンアン・エスニック)』。地下鉄赤坂駅を降りて徒歩10分ほどの場所にある。
「小林さんは福岡の兄貴的存在。お互いに仕事が終わった後に一緒に飲みに行ったり、家族ぐるみで遊びにいったり。考え方が似ていることも多いなと感じるし、刺激になることもたくさんあります。そんな小林さんの新店だから、オープンしてすぐの休日の今日、うちのスタッフと一緒に来たかったんです」
店に入ると『Yorgo』スタッフや家族が勢ぞろい。
最初に登場したのは、ハーブやナッツなどをエゴマの葉に包んでいただく「ミャンカム」(1個300円)。タイでは定番の前菜とか。口に含んだ瞬間、いろんな食感と風味が交錯してなんとも面白い。
▲(左)この日は『鳥次』が休みだったので小林さんの姿も
▲(右)福岡・大濠公園の老舗フランス料理店『花の木』でスーシェフを務めた水田正大さんが厨房に立つ
かつて東京のエスニック料理店にも在籍していたという経歴を持つ小林さん。エスニック&自然派ワインという新しいアプローチで、福岡の酒呑みたちを楽しませる。なかでも面白いのが、ワインをカラフェで提供していること。
黒板メニューには、常時約10種の銘柄が書かれており、カラフェ(300cc)が1,500円 or 1,800円で選べる。大人数の時は一度に3~4種類のカラフェワインを飲む比べるのも楽しい。
▲(右上)存在感抜群の「ガイヤーン&パクチーポテト」(1,600円)。ガイヤーンは特製タレに漬け込んでジューシーに焼き上げている
▲(左下)白身魚のすり身揚げ(750円)、(右下)トムヤムクン(850円)
「小林さんらしい安定感のあるお店。さすがですね」と、川瀬さんは感心しきり。
mon an ethnic(モンアン・エスニック)
- 電話番号
- 092-722-6860
- 営業時間
- 18:00~24:00
- 定休日
- 定休日 日曜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
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センス抜群な大人の隠れ家バーへ
1軒目、2軒目としっかり食べて飲んだので、3軒目は薬院の路地裏に佇む、しっとりとした雰囲気の「Bar文月」へ。家族やスタッフとは別れ、ここからは川瀬さんひとりだ。
「最初に連れてってくれたのは、福岡に来て初めてできた友人で、『Yorgo』をオープンする前にお手伝いしていたロジウラ古民家ワインバー『Libre』オーナーの大林さん。この隠れ家っぽい佇まいと、店主・文平さんの飄々とした感じが気に入ってます」と川瀬さん。
▲川瀬さんが飲むのはスコッチ。締めに訪れることも多いという
ちょっとした迷路のような通路を抜け、ほんのりと灯りがともる店内へ。
店主・阿南文平さんは無類の読書好き。店内には本棚があり、趣味に合わせておすすめの本をセレクトしてくれるのも楽しい。
Bar文月(フミツキ)
- 電話番号
- 090-9386-7930
- 営業時間
- 20:00~翌4:00
- 定休日
- 定休日 日曜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
福岡最高峰の締めメニューとは?
いつもは『Bar文月』で締めることが多い川瀬さんが、「ここのスペシャル丼は絶対食べた方がいい」と言って連れて行ってくれたのが、『Yorgo』からもほど近い和食の店『信(のぶ)』。午前3時まで営業しているため、仕事が終わった後に訪れることも多いという。
▲締めといいながら、まずはハイボールで乾杯! お酒のアテも充実している
川瀬さんイチオシの「スペシャル海鮮丼」(2,300円)を待つ間、気の利いたアテをつまみながら、スペシャル丼の素晴らしさを5分以上も語ってくれた。
「まず、誰が見ても美しいと感じる盛り付けが素晴らしい。で、何が凄いかといったら、この魚介の下にとろろが忍ばせてあるところ。ご飯との間にとろろを薄く挟むことで、それがつなぎとなって滑らかな食感となり、するすると食べることができます。さらに感動したのは、この浅い器。ご飯ととろろと魚介のバランスを取る上で、この器が絶対大事になるんです。表面積を広げるということは、魚介を増やさないといけません。ちょっとずる賢い経営者だったら、小さくて深い器にして魚介を減らすはず。けれど、この店にはその姿勢が全く感じられないんです。それが何かといえば、バランスをすごく大事にされているからであって、だからこそのこの器! これまで、いろんなところで、たくさんの海鮮丼を食べてきたけれど、このアプローチの仕方は初めて。3、4人でシェアすると思ったら、2,300円という価格のコスパも凄いですよ。福岡最高峰の一品と言っても過言ではないでしょう」
それほどまでに川瀬さんが惚れ込む「スペシャル海鮮丼」がこちら。
『信』の店主・波多江信宏さんは、今なお福岡の飲食業界に大きな影響を与え続けている『たらふくまんま』で修業時代を過ごした。「たらふく食べてお腹いっぱいになってほしい」という「たらふくまんま」店主、故・菊池俊徳さんの意志を受け継ぎ、このメニューを出されているのではないだろうか。
▲和食店での修業経験もある川瀬さんと店主・波多江さんの会話も弾む
「東京は広いので、次々と何軒もはしごすることは珍しいことでした。当時、はしご酒をしていたのは北千住くらい(笑)。福岡は狭い街だから次々にはしごできるし、約束していないにもかかわらず、必ずといっていいほどどこかで誰かに会うんですよね。SNSがなくてもリアルに繋がっていられる距離感が楽しくて、福岡のことが日に日に好きになっています」
福岡で暮らし始めて3年とは思えないほど、福岡のはしご酒を満喫している川瀬さん。様々なお店や店主からインスピレーションを得て、川瀬さん流の店づくりが進化していく。
信(ノブ)
- 電話番号
- 092-713-8100
- 営業時間
- 18:00〜翌3:00、日・祝17:00〜24:00
- 定休日
- 定休日 火曜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。