『あじわい回転寿司 禅』へのアクセスは、決して良いとは言えない。JR小田原駅からの交通手段はタクシー(少し遠いがバスでも可能)。都内から車で向かう場合は、東名高速に乗り、海沿いを走る西湘バイパスを通って小田原ICまでドライブしなくてはならない。しかし、たとえ片道2時間かけても、確かめたいことがある。
『あじわい回転寿司 禅』は、回転寿司と店名に冠しているのにも拘らず、フレンチが味わえるとのウワサなのだ。あまりにもかけ離れたジャンル同士であるため、にわかには信じがたい話である。
回転寿司店の中に、どんどん人が吸い込まれていく!
今回訪問したのは、ランチタイムを過ぎた14時ごろ。しかし、店内にはどんどん客が入っていく。
外観はごく普通の回転寿司店だ。
店の中央には回転寿司の代名詞とも言えるチェーンのコンベアが鎮座。
黒板には手書きでオススメのメニューが書かれており、アットホームな印象だ。ただし、このメニュー表の様子がおかしい。「ホホ肉ビール煮」「モッツァレラチーズ」「ハモン・イベリコ・デ・ベジョータ+48」?
なるほど、どうやらウワサは本当のようだ。ただ、こんなにメニューが豊富では、何から手をつけていいかさっぱりである。
余すところなく『あじわい回転寿司 禅』を味わいつくしたい!
もちろん『あじわい回転寿司 禅』も他の回転寿司店と同じく、好きな寿司ネタをどんなタイミングで食べてかまわない。しかし、せっかく2時間もかけて来店したのだから、できる限りのメニューを味わいたい。そこで、食事を始める前に、オーナーシェフ西尾明さんにおすすめの食べ進め方を聞いてみた。
「実は、店内奥の左側の黒板に前菜、右側の黒板にメインの料理を記載しています。左から右へと料理を注文されてから、最後の〆としてお寿司をいくつかつまんでいただくのがおすすめの食べ方です。お酒が入ると、〆にお米を食べたくなるでしょう?」と、にこやかに応えてくれた西尾さん。
その食べ方、確かにスマート…! ここは素直に言われた通りの順番で、フレンチと寿司を堪能し尽くしたいと思う。
前菜の生ハムやモッツァレラのクオリティが、まさに本格イタリアン顔負け!
西尾さんがテーブルの目の前でカットしてくれるのは最高級の生ハム! そもそも生ハムもモッツアレラチーズも、普通の回転寿司店には置いていないのだが・・・。
訪れた人誰もが感嘆する「ハモン・イベリコ・デ・ベジョータ+48」。通常は24ヵ月熟成のハムを、倍の48ヵ月間熟成させたもの。口に入れた瞬間、ミルクのような甘い香りと共に生ハムがとろける。このレベルの生ハムが回転寿司で食べられるとは!
週1回空輸しているというモッツァレラチーズ。ナイフでカットすると、ミルクがじわじわっとあふれる。それでいてしっかりとした弾力! 西尾さんが「これ以上のモッツァレラはない」と太鼓判を押すほどの逸品。
定期的に内容が変わるという前菜の盛り合わせ。この日はジャパニーズスタイルで。和食の職人がひとつひとつ丁寧に作り上げたもの。稚鮎吉野煮に沢蟹、姫さざえが初夏を感じさせる。
まだまだ! 西尾シェフによる味わい深いフレンチの数々
いよいよメイン料理のお出ましだ。オーナーでもあり、フレンチのレシピを担当する西尾さん。そもそも、なぜ回転寿司店でフレンチを? 「最初に修業した飲食店が、カナダにある寿司店だったんです。でも厨房にはフレンチのコックがいて、そこで技法を学びました。現在では、フレンチの技法にイタリアやスペイン風も取り入れています。食文化を知れば、相手が分かる。美味しい食事に国境はないと思っています」
これぞ、まさに国境を超えた料理! 看板メニューのひとつ「マグロテールステーキ」は、Tボーンステーキから発想したそう。スパイスをしっかり効かせ、バターやワイン、マデラ酒で調理。柔らかな口当たり、口中に広がるスパイスとバターなど織り成す上品な甘さ。まさに、まぐろの新境地だ。1組1皿限定というのもうなずける。
「ホホ肉のビール煮」は3時間炒めたタマネギと、トマト・ギネスビールで味付け。口の中でほろほろと肉がほどけていく。さあ、そろそろ〆の寿司を握ってもらいましょう!
ネタはもちろん、鮨飯も醤油も並々ならぬこだわり!
前菜もメイン料理も楽しんだあとに「寿司まで食べられるのか?」という心配をしながら寿司をオーダー。小田原や沼津で揚った新鮮な魚介を使った寿司は、ネタがピカピカと光っている。
左上から時計回りに、きんめ、中トロ、オマール海老、シマアジ。「オマール海老って寿司にしていいんだ?」と疑問が浮かぶが、口に入れた瞬間、濃厚な海老の旨みと共にすべて忘れるので問題ない!
おっと、忘れてはならないのが「メタボ巻き」。イクラ、フォワグラ、ウニを巻いて、とびっこをまぶしたというありがたい巻物。
ネタの豪華さに目が行きがちだが、鮨飯へのこだわりもすごい。というか、西尾シェフにはこだわってない部分がない! 山形の農家と契約して「どまんなか」という品種の米を使い、赤酢をブレンドした酢は季節によって配合を変えるのだとか。
寿司で〆ると言っておきながら、デザートまで堪能。フィリップ・ウラカという、フランスの国家最高職人であるパティシエ監修のケーキ。エスプレッソが染みたスポンジとマスカルポーネのバランスの見事さたるや! コーヒーと一緒にぜひ。
オーナーシェフの西尾さんは食べること、楽しませることに関しての情熱がハンパではない。もしかしたら国境のない回転寿司、『あじわい回転寿司 禅』から、世界平和って始まるのかも・・・。思わずそんな気にさせてくれるほどの食体験であった。
<メニュー>
前菜盛り合わせ9品 2,000円
モッツァレラチーズ サラダ仕立て 1,600円
ホホ肉ビール煮 1,600円
まぐろテールステーキ 600円
ハモン・イベリコ・デ・ベジョータ+48 1,800円
ティラミスブラン 650円
メタボ巻き寿司 1,800円
オマールにぎり 950円
シマアジ 500円
きんめ 500円
中トロ 700円
※価格すべて税抜
あじわい回転寿司 禅
- 電話番号
- 0465-32-7001
- 営業時間
- 11:00~22:00
- 定休日
- 定休日 無休
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。