2016年のカレートレンドは「スリランカカレー」
2016年、日本カレー界にスリランカの風が吹いている。兆しが見え始めたのは2013年ごろ。大阪を起点にじわりと火が付き、2015年以降は東京でも月1~2店のペースでスリランカカレーを出す店が増えている。(詳しい記事はこちら)
そんなトレンドのスリランカカレー入門編としてうってつけなのが、澤田夫妻が営む『Curry&Spice 青い鳥』。
渋谷区幡ヶ谷の商店街の中ほど。象の置物やシルク製品といった雑貨で“らしさ”を演出する店が多い中、アンティーク家具に差し色のブルーを効かせた空間で勝負する『Curry&Spice 青い鳥』。店名には「幸せは自分の中にある」という穏やかな思いを込めた。店でも提供するインド産ビール「Kingfisher(キングフィッシャー)」が天色の鳥、カワセミを指すというのもなかなか洒落ている。
スリランカカレーとは?
ところでスリランカカレーとは、平たく言えば「ライスを囲むようにカレーや副菜を盛りつけたワンプレート式」を基本とするスリランカ料理である。混同されやすいインドカレーと比べ、仏教国であるがゆえ使える食材の幅は広く、また鰹に近い味わいの魚「モルディブフィッシュ」のだしやスリランカ独自のスパイスを使うなど異なる点が多い。ほか、ココナッツやカレー粉を用いる点や粘性が少なくさらっとした質感も特長だ。
漢方スタイリストなど健康に関する数々の資格を持つ妻・千絵さんが作るカレーは、とかく色彩偏差値が高い。初めて目にすると、慣れ親しんだカレーと一線を画すポップな彩りに心奪われることだろう。店名への繋がりを思わせる青磁色のプレートには、ライスを囲むように赤銅色のチキンカレーと山吹茶の豆カレー、さらに水菜のサラダやビーツのポルサンボル(ココナッツのふりかけ)、野菜のスパイス炒めなど鮮彩な付け合わせ3種が美しく盛られる。冬瓜ココナッツカレーは別皿で提供。
これらの具材を、バスマティと胚芽米をブレンドして土鍋で香り高く炊き上げたライスと豪快に混ぜ、味の変化を楽しむのがスリランカ流だ。混ぜて、混ぜて、混ぜつくした先にはこの上なく甘美な世界が待ち受ける。辛み、甘み、酸味……幾重にも重ねられた旨みとスパイス、ときおり野菜の食感が心地いい句読点を生むのもまたオツ。今食べたひと口と次食べるひと口は似て非なり、一期一会ならぬ“一期一食“がそこにある。
そして、すべてのカレーに共通する「重ね煮」というマクロビオティックの手法こそ、同店の代名詞といえる。これはシメジ、人参、タマネギの順に重ねて蒸した、いわゆるブイヨン・ド・レギュームのこと。野菜の旨みが凝縮したブイヨンを軸に、日本人の舌にも受け入れやすいモルディブフィッシュのだしやスリランカから輸入するスパイスなどを巧みに使い、各カレーや副菜に個性を授ける。
同店ではスリランカカレーと南インド風カレーが週替わりで登場する。ほか、ココナッツカレー稲庭つけうどんや豆せんべい、カレーチキン炒飯などオリジナルのアラカルトメニューも充実していて、夜はカレーをつまみにインドビールで一杯、という客も。昨年末オープンと若い店ながら、南アジアのエッセンスを取り入れた料理と気取りのない夫妻の接客で早くも客の心を掴みつつある。
カレーといえば「茶×白」。長らくこのツートーンが定番であった料理が今、色彩を得つつある。セピアからカラフルへ――華々しく、豊富な野菜でよりヘルシーなスリランカカレーを新規出店のみならず、既存店でメニュー化する動きは加速中だ。愛好家ならずとも穏やかに、しかし確実に熱を帯びつつあるトレンドを見逃す手はあるまい。
(文・取材/井上こん)
<メニュー>
日替わりカレープレート(1種1,000円、2種1,200円、3種1,400円)
重ね煮ココナッツカレー稲庭つけうどん(チキン1,100円、エビ1,300円)
豆せんべい 150円
すなぎも重ね煮マサラ炒め 600円
ビール、ワイン各種 500円~
※価格はすべて税込
Curry&Spice 青い鳥
- 電話番号
- 03-6276-0082
- 営業時間
- 火~土11:30~14:30(L.O.14:15)/17:30~22:00(L.O.21:45)、日11:30~15:30(L.O.15:15)
- 定休日
- 定休日 月
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。