噂ではその焼肉屋へ行くことを「登山する」と呼ぶらしい。吉祥寺の肉の総本山とされる『肉山』、そしておなじく吉祥寺の人気ホルモン店『わ』のスピリットを受け継ぐ新たな店『赤身とホルモン焼 のんき』が、4月に焼肉の名店が並ぶ街・四谷にオープンした。
「あえて焼肉の激戦区に挑戦したんです」と語るのは、同店スタッフの忍足保宏(おしたりやすひろ)さん。彼は『肉山』に派遣され、修業までしてきたという。
「オーナーが、肉の有名店『肉山』と『わ』をそれはもう強くリスペクトしていて。その思いが通じて2店舗のコラボの結果という形をもって、この店は生まれました。2つの店のイズムを受け継いだお店なんです」と語る忍足さん。店内にはその影を随所に感じる。
たとえばオリジナルの赤ワイン「29赤(にくあか)」、スパークリング「29泡(にくあわ)」は吉祥寺『肉山』と『わ』と共通のもの。グラスまで同じだ。
奥に見えるポスターは、有名な漫画家たちの肉への愛が込められたイラスト。こちらも『肉山』にあるものと同じものというこだわりぶりだ。
「まずはこれを」と最初に見せてくださったのは、まさに「肉塊」。それもそのはず、メニューの名前は赤身「塊(かたまり)」。重量感たっぷりの肉を目の前に、思わずこちらも「登山する」気持ちにさせられる。
期待を膨らませて待っていると、炭火の心地よい香りが店いっぱいに広がる。ジューという音が聞こえてくるたびに、思わず厨房を覗きたくなってしまう。我慢、我慢と待つこと数分。
あらわれたのは、美しい黒毛和牛のイチボ。新鮮さを重視し、その度に仕入先が変わるというこちらの肉は、今回は長野産。
千葉県の農家、サントクファームの「まことの卵」は濃厚な黄身が特徴。そんな黄身を甘辛い醤油と合わせた黄身醤油を絡めていただくのがおすすめなんだそう。
噛むと、そんな甘辛い濃厚な味付けに負けず劣らず主張してくる、肉の強い旨み。噛みしめるほどに、ぎゅっ、ぎゅっと肉本来の味が強まってくる。赤身肉でさっぱりとしながらも、口の中には強く肉の後味が残り続ける。
また、同じ卵を使用している箸休め、ポテトサラダも隠れた人気者だという。
一見、普通のポテトサラダだが、実はたっぷりと豚挽き肉が入っているのがポイント。こちらも黄身を割って、とろりと絡めていただく。
豚ひき肉が入っているおかげで、食感もジューシーで抜群の食べごたえ。肉の脂がほんのりとポテト側にも染み込み、卵黄がまろやかに仕上げる、旨みの強い新感覚のポテトサラダだ。
「肉だけでなく、野菜にも強いこだわりがあるんです」と語る忍足さんのおすすめは、フルティカトマト。
千葉のわたなべ農園から直送されるというこのトマトは、とにかくみずみずしい。
一口食べると、フレッシュな甘さが広がる。お肉のようなジューシーさ、とでも言うのだろうか。甘くて弾力の強いトマトだ。またこちらの店のスタッフは、定期的に千葉県まで収穫に行き、自ら採ったものを店舗で出すことがあることからも、そのこだわりの強さが伺える。
箸休めも、そろそろ終わりにしよう。最後は、これぞメインのホルモン9種盛り。
ズラリと並んだ肉は、どれもこれもツヤが美しい。手前左から、大腸、レバー、上ミノ。真ん中左から、小腸、牛タン、リードボー(仔牛の胸腺)。奥左から、ハラミ、ウルテ(牛ののど軟骨)、ギアラ(牛の第4胃)。そのおいしさをシンプルに味わってほしいとの思いから、すべてオリーブオイルと塩のみのシンプルな味付けとなっている。
どれもおいしそうだが、まずはさっぱりと上ミノからいただこう。用意された七輪に並べれば、ジューという音が広がり、たちまちおいしそうな香りが追って広がる。
広島県産の藻塩か、大阪の焼肉激戦区である鶴橋からおろしているというこだわりの一味をつけていただく。
噛んだ瞬間、コリコリとした食感の中で、シャキシャキと強い繊維質を感じる。肉のくさみや脂っこさはまったくなく、さっぱりとしていて、いくらでも食べていられるおいしさだ。
肉厚な牛タンは、そのピンク色がすでにおいしさを物語っていた。丁寧に包丁がいれられており、火がすぐに通る。
噛んだ瞬間、タンの濃厚な味。こちらに合わせたいのは、この店の名物のひとつ、氷結レモンサワーだ。
その名の通り、レモンをそのまんま氷結したものをなんと氷代わりにサワーに入れているという、見た目にもインパクトのある一品。だんだんと溶けていくレモンから染み出す果汁を楽しめ、サワーだけのお代わりも可能となっている。
炭火焼の濃い味の肉を食らい、ガツンと爽やかなレモンサワーで流し込む。最高の組み合わせだ、と思わずつぶやいてしまう。
旨みなら、ハラミも見逃せない。とにかくやわらかく、ジューシーなハラミも味は強め。シンプルに味付けされているはずなのに、肉本来の味が強いおかげで濃いものになっている。
ホルモンといえばこれでしょう、という思いで七輪にのせたのは、大腸。
たっぷりの脂が滴り落ち、火の勢いが増す。これぞホルモン、といった脂のおいしさが口いっぱいに広がる。ふわっふわ、ぷりっぷり。口の中でも、噛めば噛むほどに甘い脂が滴り続ける。しかし意外にも食べ終わると、脂はさっぱりと口から去るのが特徴だ。
忍足さんいわく、男女比は半々で、平日は場所柄からサラリーマンの利用が多いものの、カップル、女子会の利用も多いそうだ。週末には家族連れもいるとのこと。店の壁にはすでに有名人のサインも目立つ。「敷居の高い店ではなく、リーズナブルに最高のお肉を食べられる。そんな親しみやすい店になりたいですね」と語った。
『肉山』と『わ』という名店のこだわりも感じつつ、おいしい赤身肉とホルモンを堪能できる『赤身とホルモン焼き のんき』。四谷・曙橋エリアにオープンしたこの店も、新たな名店となりそうだ。
(文・写真/雨宮美奈子)
(メニュー)
29泡 グラス500円(ボトル3,500円)
29赤 グラス500円(ボトル3,500円)
赤身「塊」イチボ 2,900円
ポテトサラダ 500円
フルティカトマト 500円
ホルモン9種盛り 2,000円から
氷結レモンサワー 500円
※価格全て税別
赤身とホルモン焼 のんき
- 電話番号
- 050-5485-8295
(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
- 営業時間
- 土・日
12:00~23:00
月~金
15:00~23:00
- 定休日
- 不定休日あり
年末年始(2024年12月31日~2025年1月4日)
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
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